いよいよ秋も深まってきましたが、皆さん如何お過ごしでしょうか。秋のリリースラッシュの時期も終盤に入ったので、これから続々と日本にも新作が入荷してくると思われます。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Ligabue / Miss
Mondo (1999) WEA, 3984288882. (全14曲)
Ligabue の最新アルバム。Ligabue とは Luciano Ligabue
その人のことですが、バックバンドのメンバーを含めた1つのバンドと言ってもいいくらいのバンドサウンドを聴かせてくれます。私はイタリアに行った際に何度かテレビで彼を見たことがあるのですが、アルバムをまともに聴くのは今回が初めてです。改めて聴いてみると彼の低音のヴォーカルと渋めのロックサウンドが一体となって実に魅力的なアーティストであることが実感できます。全曲彼自身の作詞・作曲となっており、ヴォーカリストとしてのみならずソングライティングの面でもその才能を遺憾なく発揮しています。1曲目の
"Si viene e si va"
は印象的なギターのリフで始まるオープニングにふさわしい疾走感のあるロックナンバーで、続く
"Uno dei tanti"
では少ししゃがれた彼のヴォーカルが魅力的な渋めの落ち着いた曲となっています。ベースによるイントロで始まる
"E"
はミドルテンポの骨太のロックサウンドで彼の低音のヴォーカルが堪能できます。全体的にイタリア色はそれほど強くはないものの、メロディの端々に時折イタリアらしい展開が見られ、単なる英米のロックの追随ではない強いオリジナリティを感じることができます。ライブを見てみたいと思わせるアーティストです。
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Filippa Giordano /
Filippa Giordano (1999) Erato, 3984-29694-2.
(全12曲)
今年のサンレモ音楽祭の新人部門で2位に入賞した女性ヴォーカリストの2枚目のアルバム。そのサンレモ入賞曲は前作
"Passioni" に収録されていますが、今作では "Passioni"
と2/3ほど収録曲がダブっています(サンレモ入賞曲は含まれていません)。彼女は
Sugar レーベルの所属なのですが、Andorea Bocelli
の成功に気を良くしたのか2匹目のドジョウを狙ったようで、追加収録の曲の大半はオペラのからの曲になっています。また、前作のジャケットではわりと化粧っ気がなくボーイッシュな感じだったのが、今作ではばっちりメイクしてドレスアップしているのも印象的です(ほとんど別人)。本作はジャンルとしてはクラシック扱いのようで(レーベルも
Erato
だし)、彼女にとってワールドデビュー盤になるようです。彼女自身、元々クラシックの声楽家を目指していたようでオペラ唱法の基礎がしっかりできています。オペラからの曲は「ノルマ」「サムソンとデリラ」「トスカ」「カルメン」など日本でもおなじみのものが取り上げられ、定番の
"Ave Maria"
など声楽家としての技量が遺憾なく発揮されています。国内盤は2000年1月に発売予定だそうなので、詳しい解説や対訳が欲しい人はそれを待つ方がいいでしょう。実に魅力的な美声を持っており、ワーナーミュージックも力を入れて売り出すようです。(キャッチコピー:
イタリアが生んだ、今世紀最後の奇跡。)
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Lucio Dalla /
Ciao (1999) Pressing, 74321 69636 2. (全11曲)
ローマ派カンタウトーレのベテラン Lucio Dalla
の最新アルバム。前作 "Canzoni"
からほぼ3年ぶりの新作になります。Dalla
は以前ジャズ奏者だったこともあるためか、非常に独特のリズム感があり、それが彼の音楽を特徴づけています。彼自身がキーボードとクラリネットを演奏しています。"Non
vergognarsi mai"
は独特の間のある曲になっており、彼の力の抜けたヴォーカルと相まって無意識のうちに彼の作り出す一種特有な音世界に引きずり込まれてしまいます。"Io
tra un'ora sono li'"
では彼の紡ぎ出す独特のリズム感のある曲調が非常に心地よい音空間に連れて行ってくれます。"Hotel"
では盟友の1人である Ron
がギターで参加しており、彼の渋いヴォーカルを見事にサポートしています。ラストの
"Born to be alone"
は一度終了するかに見せてその後2分半ほど曲が続きます(シークレットトラックの可能性あり)。彼の作品はその独特のリズムや音の揺れ具合が微妙に作用して、ある種病みつきのようになる要素があるように感じられます。現代のイタリアを代表する大物アーティストなので、未聴の方はこの機会に聴いてみてはいかがでしょうか。
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Nada / dove sei
sei (1999) Mercury, 538 819-2. (全11曲)
かつてアイドルだった Nada
の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む最新アルバム。今作ではプロデュースに
Mauro Pagani
を迎え、非常にアグレッシブな音作りをしています。10曲目の
"Piccoli fiumi" が Gianmaria Testa
の作品である以外はすべて彼女の作詞・作曲で、これらの曲には
Mauro Pagani が演奏でも参加しています。1曲目の "Inganno"
から彼女の奔放なヴォーカルが全開で、Pagani
の弾くヴァイオリンとともにジプシー的な要素を感じることができます。続く
"Guardami negli occhi"
ではルーズなヴォーカルによって曲の気だるい感じをうまく出しています。"Correre"
は低音域で張りのある彼女の声質が生かされた、迫力あるヴォーカルが聞き物のスローな曲になっています。アルバムタイトル曲の
"Dove sei sei"
は落ち着きのあるロックサウンドに仕上がっており、アーティストとしての余裕を感じさせます。10曲目の
"Piccoli fiumi" はGianmaria Testa
の曲らしくアコースティックギターをバックに囁くように歌うシャンソンタイプの曲で、アルバム中では異色の作品になっています。低音域に重点を置かれたヴォーカルは日本では今一つ受けが良くないかも知れませんが、カンタウトリーチェとして成長した彼女の姿を確認できるいい作品だと思います。
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DFA / Duty Free
Area (1999) Mellow Records, MMP 373. (全6曲)
新進プログレバンド DFA のセカンドアルバム。編成は key, ds
& per, b, g の4人で、ヴォーカルは key と ds
の2人が兼任しています。彼らは基本的には Gentle Giant, PFM
タイプの緻密な曲構成と変拍子を得意とするバンドのようです。Gentle
Giant
タイプの場合には本家を越えることはほぼ不可能なのでいかにオリジナリティを打ち出すかにかかっていますが、彼らの場合にはジャズロック色を強く押し出すことでうまくオリジナリティを表現しています。ファーストアルバムでは高い演奏力と曲構成の巧みさは感じられたものの、曲自体の魅力に乏しかったので今一つの出来でしたが、本作では飛躍的に曲が魅力的になり大きく成長のあとが認められます。1曲目の
"Escher"
は10分を越えるインストナンバーで、切り返しが多く切れのある演奏を堪能できる曲になっています。ゲストヴォーカルで
"Esperanto" には Deus Ex Machina の Alberto Piras
が、"Malia" には Giorgia Gallo が参加しています。
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