今回で当サイトも一周年を迎えることができました。Musicadentro
も増刊号・特集号を含め、20号を数えることとなりました。これからも更新を続けていきますので、今後ともよろしくお願いします。今回はオッサンばかりになってしまいましたが、イタリアでは日本と違って若造よりオヤジ世代の方がパワーがあるように感じます。また、今回は自分で楽器を演奏するアーティストが多いので、歌とともに演奏も十分楽しめると思います。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Juri Camisasca /
arcano enigma (1999) Mercury, 546 082-2. (全10曲)
ベテランなのに非常に寡作なカンタウトーレ Juri Camisasca
の最新アルバム。ミニアルバムを含めてもこれでたぶん4作目です。前作の
"Il carmelo di Echt"
からも8年ぶりとなる久々のニューリリースとなっています。Camisasca
自身がキーボードを担当し、3ピースバンドの Bluvertigo
がバックを務めています。Battiato
一派らしいクールな音作りが特徴の彼ですが、より実験的な要素が強いです。1曲目の
"Zodiaco"
はエレクトリック色の強いアバンギャルド・ポップになっていて、アップテンポで勢いのある曲です。続く
"L'evidenza di un amore"
は彼のクールなヴォーカルを堪能できるミドルテンポの曲で、Battiato
よりも癖のない落ち着いた歌声が魅力的です。ラストのタイトル曲
"Arcano enigma"
はキーボードオーケストレーションの上を静かなヴォーカルがかぶさる荘厳な曲で、まるでミサ曲のようです。いかにもイタリアらしい熱いヴォーカルを聞かせるタイプではないのですが、クールな中にもそこはかとない叙情性を醸し出している作風は'80年代に
Battiato
一派が築き上げたターゲット・ミュージックの系譜を引き継いだものとなっています。一般受けするタイプではないものの、イタリアのポップミュージックのある一面を如実に表していると思います。
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Amedeo Minghi /
decenni (1998) EMI, 7243 4 95074 0 1. (全10曲)
すでにベテランの域に達しているカンタウトーレ Amedeo
Minghi
のニューアルバム。彼自身がピアノとキーボードを担当しています。本作はキーボードオーケストレーションを全面に押し出した非常に叙情的な作品に仕上がっており、最近の彼の作品ではベストの出来ではないでしょうか。1曲目のタイトル曲
"Decenni"
から哀愁を帯びた彼のヴォーカルを堪能できます。"Teledipendenti
indifferenti" では落ち着きのある彼のヴォーカルを Arcum
によるコーラスが盛り上げています。"S.O.S (sulle piste)"
はアップテンポでポップなナンバーで長年培われてきた彼のポップセンスを再確認できる曲です。"L'incanto
dei nostri vent'anni"
では青春時代を懐古するかのようなノスタルジックな雰囲気が醸し出され、魅力的な曲に仕上がっています。"Un
uomo venuto da lontano"
はヨハネ・パオロ2世に捧げられた曲で、混声コーラスを導入した叙情的な曲になっており、本アルバムのハイライトになっています(CD-ROM
トラックにビデオが収録されています)。エンハンスドCD仕様になっていてCD-ROMトラックが入っています。
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Nello Daniele / si
potrebbe amare (1998) RTI Music, RTI 13392.
(全12曲)
Pino Daniele の実弟である Nello Daniele
のニューアルバム。今まで聞いたことがなかったのでデビューアルバムかもしれません。Pino
同様、全編自身でギターを弾いています。声質は兄の Pino
に似ていますが Nello
の方が若々しく(当然か)癖がないので、一般受けするのではないかと思います。曲調は
Pino
ほどアメリカン・フュージョン色が強くないので、よりイタリア色が強く感じられます。全体的に'80年代のカンタウトーレタイプで、ポップな中にもそこはかとない哀愁が感じられる出来となっています。1曲目の
"Che ne sai" は Franco Serafini (かつて I Panda
に在籍し、'80年代にソロになったカンタウトーレ)
に通じるさわやかな曲で、彼のポップセンスを伺い知ることができます。"Io
di te"
は幾分ファンキーな曲で、彼の演奏するギターが全面にフィーチャーされており、彼の演奏水準の高さが確認できます。"Sogno
americano"
は彼のギターを全面に押し出したフュージョン色の強い曲で、演奏家としての
Nello を強調した出来になっています。"Voglia di averti"
ポップ色の強い曲で、さわやかなヴォーカルが魅力的です。今後が非常に楽しみなアーティストだと思います。
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Jovanotti / Capo
Horn (1999) Mercury, 546 170-2. (全14曲)
DJ 出身のミュージシャン Jovanotti
のニューアルバム。基本的に HIP HOP
スタイルですが、以前よりもメロディアスになっているらしいです。Jovanotti
はNHKのイタリア語会話で何度も取り上げられており、ミュージックビデオも放映されているので、その方面では結構知名度があります。本作からも1曲目の
"Per te" が取り上げられていました。その "Per te"
ですが、オーケストラをバックにわりとメロディアスな作りになっていて、比較的聞きやすい曲です。"Stella
cometa"
は彼のヴォーカルを全面に押し出した曲になっていて、アレンジも実にシンプルです。"Un
raggio di sole"
では軽快なポップスを聴かせており、作風の広がりを感じることができます。"Buon
anno"
では語りかけるようなヴォーカルを聴かせ、アルバムのラストを締めくくっています。その他の曲はいわゆる
HIP HOP
で、イタリア語が用いられているもののメロディは希薄で、イタリア色はほとんどありません。HIP
HOP
としての完成度は高い方だと思いますが。クラブ系の音が好きな人には満足のいく作品だと思います。
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Michele Zarrillo /
L'Elefante e la Farfalla (1996) RTI Music, RTI
1102-2. (全9曲)
中堅カンタウトーレ Michele Zarrillo
の1996年作。今のところオリジナルアルバムとしては最新作です。彼の場合は'70年代初期にヘビーシンフォニックロックバンド
Semiramis
でデビュー(当時16歳)しているのでベテランと言ってもいいでしょう。本作でも自身でクラシックギターとキーボードを演奏しています。彼の声質は
Claudio Baglioni
タイプのややしゃがれたものですが、時折ファルセットを用いるところが特徴になっています。1曲目のタイトル曲
"L'elefante e la farfalla"
は彼の哀愁帯びたヴォーカルが楽しめるバラードです。続く
"Occhi siciliani"
では彼の爪弾くクラシックギターが静かな曲を盛り上げています。"Non
arriveranno i nostri"
ではコーラスに乗せて朗々と歌い上げる明るめのポップスになっており、アルバムにアクセントを付けています。全体的にバラード系の曲が多く、多少地味な印象がありますが聞き込むほどに味わい深くなるタイプの作品だと思います。昨年の唐突な来日公演では元ギター少年らしくギター(アコースティック)を弾きまくっていたのが印象的でした。
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