アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Ron / adesso
(1999) CGD east west, 3984-27400-2. (全12曲)
初期には Rosalino Cellamare 名義で作品を発表していた Ron
の久々のニューアルバム。本作は彼の敬愛する James Taylor や
Jackson Brown
からの影響を感じさせるアダルトテイスト溢れる作品に仕上がっています。1曲目の
"Anna"
は中間部のギターソロが印象的な曲で、彼の少ししゃがれたヴォーカルが非常にいい味を出しています。続く
"My love"
はいい意味でウェストコースト・サウンドを継承した作りになっていて、彼の音楽的背景がよく分かる曲です。また、5曲目の
"Piccola valigia"
は彼の囁きかけるようなヴォーカルが魅力的な曲で、バックに流れるハーモニカが曲にアクセントを付けています。11曲目の
"Oggi è domenica"
は彼の弾くアコースティックギターの爪弾きと語りかけるようなヴォーカルがリラックスした雰囲気を醸し出す1品です。かつては顔が悪いなど音楽とは関係ない所で酷評されていた彼ですが、年齢を重ねるにつれて渋いアーティストに成長し、さすが
Lucio Dalla や Antonello Venditti
と並び称されるローマ派カンタウトーレの代表の面目躍如たる作品になっています。
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Renato Zero / amore
dopo amore (1998) Fonopoli, FON 489912 2.
(全13曲)
派手な化粧をやめ、髪も切った Renato Zero
の最新スタジオ作。彼の場合は以前のグラムロックと Kiss
を合体させたような奇抜なメイクから見た目で敬遠されることが多かったのですが、独特の声とドラマチックな作風がいかにもイタリアのアーティストらしく、聞かず嫌いの人が多いのが残念でした。そういった意味では今作は入門編にもぴったりの作品です。相変わらず大作主義のようで全13曲でトータル73分もあります。1曲目の
"L'italiana"
からマーチングドラムに乗せて徐々に盛り上がっていくドラマチックな構成を見せています。3曲目の
"Emergenza noia"
のようにリズミカルな曲にも彼の持ち味が生かされており、また7曲目の
"Erotica apparenza"
のようなアップテンポのナンバーもこなすなど、多才な所を見せています。ラストの
"Figaro"
は8分近い大作で、非常にドラマチックな曲に仕上がっており、アルバムを締めくくるのに最高の出来になっています。難を言えば収録時間が長い(かつてのLP時代には2枚組アルバムを連発していました)ことが挙げられますが、イタリアを代表するアーティストの1人なのでぜひ1枚は聞いてみてください。
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Enrico Ruggeri /
L'Isola dei Tesori (1999) PDU, PDU 1345 2.
(全14曲)
ロック色の強いカンタウトーレ Enrico Ruggeri
のセルフカバーアルバム。見た目はいつのまにかブルース・ウィリスのようになってしまいましたが、相変わらず力強い歌を聴かせてくれます。
1曲目の "Per amore dei tuoi occhi blu"
はピアノのイントロに乗せて静かに始まったと思うとすぐにハードなギターのフレーズが被さり、ドライブ感溢れるロックナンバーへと変化する曲です。エレクトロポップ調のイントロから始まる
"Anna e il freddo che ha" は Roberta Andrea Mirò
とのデュエットになっています。続く "Il natale dei ricordi"
は叙情的なピアノに乗せて彼のヴォーカルをじっくり聴かせるスローバラードです。ラストのボーナストラック
"La chanson de Mimie"
はフランス語で歌われており、ロック・シャンソンと言っていいような曲になっています。それほどイタリア色の強いアーティストではないのですが、最近の英米指向の若手に比べると歌い回しなどにイタリアらしさが感じられるので、ロック指向の強い人に特にお勧めの1枚です。
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Irene La Medica /
Soulista (1999) Soleluna, 538 284-2. (全18曲)
イタリア語によるR&Bを歌う女性ヴォーカリスト Irene La
Medica
の最新アルバム。個人的にはこの手の曲をイタリア語で歌う必然性を感じないのですが、日本でも宇多田ヒカルを筆頭に母国語で歌う女性R&Bがはやっているので、イタリアでも同じようなシーンがあるのでしょう。内容的にはいわゆるクラブ系の音そのもので、イタリア色は全くと言っていい程ありません。全18曲トータル64分も入っていますが、間に間奏曲のようなものが何曲もあるので、実際に曲として完結しているものは12曲くらいです。それでも作品としての出来は良く、Irene
の声質も魅力的でしかも美人です。タイトル曲の "Soulista"
は彼女の囁くようなヴォーカルが魅力的な曲です。また、このアルバムには多数ゲストが名を連ねており、"L'epicentro"
と "Ti tratto meglio" に Donjoevanni が "Ancora un po'" には
Tormemo が、さらに "Dimmi come fai" には Camilla と Jasmine
が参加しています。
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Angelo Branduardi /
Futuro Antico II (1999) EMI, 5 56881 2. (全9曲)
彼のルーツ音楽の1つである中世音楽を素に古楽アンサンブルバンド
Finisterrae
とともに作り上げた作品。タイトルにIIとあるようにIもあります。1曲目の
"Schiarazula marazula" から Branduardi
らしい典雅な雰囲気を再現しています。全9曲の内7曲が組曲となっていて、各曲は2〜4曲の小曲から構成されています。また、どの組曲にも必ず1曲はヴォーカル曲があり、彼独特の歌声も十分堪能できます。曲のほとんどは16世紀から17世紀の作品を取り上げており、当時の宮廷音楽の粋を集めたような典雅な作品に仕上がっています。唯一オリジナルとなる
"Suite La Parma" の中のヴォーカル曲 "Tema di Leonetta" は
Branduardi 夫妻のペンによるものです。Finisterrae
によるアコースティック・アンサンブルも非常に魅力的で、全体的にイギリスの
Gryphon
の初期作品のような雰囲気が出ています。これまで紹介してきた作品に比べ幾分アカデミック色が強い作品ですが、Branduardi
のルーツを伺い知るのには打って付けの作品となっています。
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