Musicadentro

第89号 (13/01/2008)

2008年初の更新となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今年もこれまで同様、よろしくお願いします。今回はベテラン・カンタウトーレ の新作を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Pelle

Antonello Venditti / Dalla pelle al cuore (2007) Heinz Music, 88697187362. (全9曲)

ローマ派カンタウトーレの重鎮 Antonello Venditti のライブ盤、ベスト・アルバムを挟み、オリジナル・アルバムとしては約4年振りとなるニュー・アルバム。プロデュースは Alessandro Colombini で、エンジニアとベースは元 Goblin の Fabio Pignatelli が担当しています。全曲作詞は本人のペンによるもので、曲も2曲ほど自作しています。オープニングのタイトル曲 "Dalla pele al cuore" はゆったりとしたリズムに乗せてスケールの大きい歌声を聴かせる彼らしい曲です。続く "Piove su Roma" は包み込むようなストリングスとリリカルなピアノの調べをバックに切々と訴えかけるように歌われる叙情的なバラードです。アップテンポな "Indimenticabile!" では軽快なギター・サウンドに乗せて渋い歌声による熱唱を聴かせてくれます。悲哀に満ちた音色を紡ぎ出すピアノのバッキングによる "Giuda" は哀愁漂うヴォーカルを聴かせるバラードになっています。明るい音色のギターによるリフが印象的な "La mia religione" では力強いリズムに乗せて高らかに歌い上げています。厳かな音色を湛えたオルガンと包み込むようなストリングスをバックに歌われる "Regali di Natale" ではシンプルなピアノの調べに乗せてしっとりとした歌声を聴かせてくれます。初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。

Superba

Antonella Ruggiero / Genova, la superba (2007) Libera, 0186882LIB. (全14曲) CD-Text

Matia Bazar の初代歌姫 Antonella Ruggiero が地元 Genova 出身のアーティストの曲を中心に取り上げたカバー・アルバム。Umberto Bindi, Fabrizio De André, Bruno Lauzzi, New Trolls, Gino Paolo, Luigi Tenco のレパートリーを取り上げています。オープニングは New Trolls の初期のヒット曲 "Ho venuto" で、原曲のサイケデリック色をアンビエント感覚に転化したようなアレンジで聴かせてくれます。Luigi Tenco の "Un giorno dopo l'altro" では包み込むようなストリングスとそよ風のような音色のオルガンをバックに叙情的な歌声を聴くことができます。Franco Battiato も取り上げた Fabrizio De André の "Canzone dell'amore perduto" ではしっとりとした歌声で染み入るような哀愁を感じさせてくれます。Umberto Bindi の "Luna nuova sul Fuji-yama" はタイトル通り富士山について歌った曲で、幾分エキゾチックなメロディをしなやかな歌声で聴かせてくれます。New Trolls の代表曲の一つ "Una miniera" ではVittorio の低音域と Nico の高音域を一人で見事に歌いこなし、ダイナミック・レンジの広いスケールの大きいヴォーカルを聴くことができます。Bruno Lauzzi の代表曲である "Ritornerai" ではアンビエント色の強いアレンジに乗せて消え入るような叙情を感じさせるしっとりとした歌声を聴かせてくれます。初回盤のパッケージはブックレットを封 入したデジパック仕様となっています。

LeftRight

Francesco De Gregori / Left & Right documenti dal vivo (2007) Caravan, 88697207052. (全12曲) CD-Text+DVD

ローマ派カンタウトーレの重鎮 Francesco De Gregori の最新ライブ・アルバム。バックのメンバーは Alessandro Arianti (key), Lucio Bardi (g), Paolo Giovenchi (g), Guido Guglielminetti (b, contrabass), Stefano Parenti (ds), Alessandro Valle (dobro, pedal steel-g) の6人で、彼自身もギターとハーモニカを演奏しています。CDは収録曲がパッケージにかかれている順番と異なり、8曲目に収録されていることになっている "Il bandito e il campione" が実際にはアルバム・ラストの12曲目に収録されていて、9〜12曲目が1曲ずつ繰り上がっています。オープニングの "Numeri da scaricare" ではブルースからの影響を感じさせるギターのリフに乗せてまくし立てるような語り口調のヴォーカルを聴かせるてくれます。アコースティック・ギターのコー ド・カッティングをバックに軽やかに歌われる "Compagni di viaggio" では中間部での幻想的なペダル・スティール・ギターとごつごつした音色のベースの響きが曲を盛り上げています。典型的なフォーク・ロック・スタイルの "Caldo e scuro" はギターのコード・カッティングをバックに語りかけるように歌われる佳曲です。ライブ盤としては収録曲が12曲と少なめですが、各曲ともライブ用アレンジ が施され、曲自体が長尺になっているものも多くボリューム感があります。ボーナスDVDの "Takes & Outtakes" はインタビューを曲中や曲間に挟んだツアー映像と "Vai in Africa Celestino!" の2005年版ビデオ・クリップ(録音風景)を収録しています。初回盤のパッケージは4面開きのデジパック仕様となっています。

Win

Paola & Chiara / Win the game (2007) Trepertre, TRE B72/CD 03. (全11+4曲)

美人姉妹デュオ Paola & Chiara の長年在籍した Columbia からのレーベル移籍を経て、オリジナル・アルバムとしては約3年振りの作品となった6thアルバム。前作ではかなりR&B寄りのサウンドでした が、今回はクラブ・ミュージックに接近したダンサブルな作風になっています。本編はイントロの "Win the game" とアウトロの "Game over" を配し、曲が繋がっていくトータルな構成をとっています。大部分が英語詞の曲のため以前ほどイタリア色はありませんが、2曲ほどイタリア語詞の曲もあり充 分イタリアン・ポップスとして楽しめます。エレポップを現代的にしたような躍動感溢れるリズムに乗せた "Vanity & pride" は2人のセクシーさを増したヴォーカルが絡み合う官能的な雰囲気を持った曲に仕上がっています。先行シングルにもなった "Second life" ではアッパーなリズムを持ったダンサブルな曲で、爽やかさを伴った軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。数少ないイタリア語詞の "Cambiare pagina" では一転して語りかけるようなヴォーカルで哀愁を感じさせるメロディを叙情的に歌い上げています。また、"Tu sei il futuro" では無機質なエレポップ風リズムに乗せて軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。ボーナストラックにはリミックスやスペイン語バージョンなどが収録されて います。

Rabbia

Roberto Vecchioni / Di rabbia e di stelle (2007) Universal Music, 1750654. (全13曲)

ベテラン・カンタウトーレ Roberto Vecchioni のオリジナル・アルバムとしては約3年半振りとなるニュー・アルバム。プロデュースと大部分のアレンジは Lucio Fabbri が担当しています。スペイン語詞の "Mond lader (mondo ladro)" を除くほぼ全曲が彼自身の作詞作曲になっています。オープニングの "La ragazza col filo d'argento" では力強いリズムに乗せてまくし立てるような早口なヴォーカルを聴かせてくれます。艶やかなストリングスを従えた "Non lasciarmi andare via" では一転して叙情的なメロディを囁きかけるように歌い上げています。明るい音色のギターが軽快なリズムを刻む "Neanche se piangi in cinese" では軽やかで楽しげな歌声が印象的です。"Amico mio" ではピアノとコントラバスによるシンプルな伴奏に乗せて語りかけるように歌い上げており、叙情派ヴォーカリストとしての実力を見せつけています。物悲しい 音色を奏でるピアノの調べをバックに歌われる "Il cielo di Austerlitz" では切々と訴えかけるようなヴォーカルが哀愁を感じさせます。バイオリンとアコーディオンが活躍するトラッド色を感じさせる軽快なリズムの "Il violinista sul tetto" ではナポリの歌姫 Teresa De Sio との息のあったデュエットを聴かせてくれます。収録曲が13曲と多めながら、全体的に曲のバリエーションも広くて飽きさせない構成になっています。

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