Musicadentro

第88号 (16/12/2007)

いよいよ寒さも深まって本格的に冬模様となってまいりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はこの晩秋にリリースされたベテランの新作を 中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

RonConcerto

Rosalino Cellamare (Ron) / Ron - In Concerto (2007) le foglie e il vento, 88697191692. (CD全14曲, DVD全15曲) CD+DVD

ベテラン・カンタウトーレ Ron が久しぶりに本名の Rosalino Cellamare 名義でリリースしたライブ・アルバム。L'Orchestra Toscanajazz との共演により、全編オーケストラ用にリアレンジされた彼の代表曲の数々をしっとりと歌い上げています。CDとDVDでは収録曲および曲順が異なってお り、DVDの方は当日の進行に従った曲順で収録され、CDはピアノの弾き語りの "Anima" と "Sei volta via" を終盤に配置してラストにスタジオ録音の新曲 "Canzone dell'acqua" を収録しています。ピアノとフルートに導かれたオープニングの "Al centro della musica" から艶やかなストリングスの音色に包まれてスケールの大きい歌を聴かせてくれます。囁きかけるように歌われる最初期のヒット曲 "Il gigante e la bambina" ではソプラノ・サックスによるオブリガートが曲に深みを与えています。オリジナルでは Tosca とのデュエットだった "Vorrei incontrarti fra cent'anni" では元 Dirotta Su Cuba のSimona Bencini が代役を務め、ソウルフルな歌声で息のあったデュエットを披露しています。観客の手拍子が聞こえるアップテンポの "Joe temerario" ではリズミカルなストリングスをバックにダイナミックな歌声を聴かせてくれます。ゆったりとしたテンポで歌われる "Non abbiam bisogno di parole" ではしなやかなメロディを緩急をつけた歌い回しで切々と歌い上げています。ライブ盤としてはややヴォリュームが少ないものの、彼の魅力を再認識できる充実 した内容となっているので入門編としてもお薦めです。

MaiDireMai

Anna Tatangelo / mai dire mai (2007) GGD Productions, 88697192872. (全11曲)

若手実力派ヴォーカリスト Anna Tatangelo の約2年半振りとなるニュー・アルバム。またもやレーベルを移籍して、これで1作毎に異なるレーベルからのアルバム・リリースということになっています。 今回も前作同様 Gigi D'Alessio と Adriano Pennino のプロデュースで、アレンジも Adriano Pennino が担当しており、前作と同じスタッフによる制作となっています。アコースティック・ギターの爪弾きで始まるオープニングの "Averti qui" では艶やかなストリングスに包まれた哀愁漂うメロディをスケールの大きい歌声でダイナミックに歌い上げています。"Lo so che finirà" はさざ波のようなピアノの調べに乗せてしっとりと歌われるバラードで、時折差し挟まれるアコーディオンのオブリガートがほのかな哀愁を漂わせています。軽 快なリズムに乗せた "Sorvolando" では軽やかなメロディを語りかけるようなヴォーカルで聴かせてくれます。"Sono quello che vuoi tu" ではこれまでにない中低音を生かしたアンニュイな歌声を披露して新境地を見せています。"Sei come me" はR&B色の強い曲で、エキゾチックな音色のバッキングと力強いコーラスによりセクシーさを増したヴォーカルを盛り上げています。ジャケットおよ びブックレット内の写真共にセクシー路線が進んでいて、清純派だったデビュー当初からすると隔世の感があります。

TrilogyLive

New Trolls / Concerto Grosso - Trilogy Live (2007) Aereostella, 0185688AER. (CD全28曲, DVD全25曲) 2CD+DVD

今年6月末に発売になった "Concerto Grosso - The Seven Seasons" (CG3) の発売を記念して8月5日に Trieste の Piazza Unita' d"Italia で行なわれたConcerto Grosso をコンプリートで演奏したライブの模様を収録した2CD&DVDのライブ・アルバム。今年の来日公演でもお馴染みの Stefano Cabrera の指揮による Orchestra San Marco Pordenone との共演により、Concerto Grosso 3部作を中心にした2時間半以上のパフォーマンスのうち Concerto Grosso 3部作が余すことなく収録されています。CDとDVDでは収録曲および曲順が異なっており、DVDの方は当日の進行に従った曲順で収録され、CDはオリジ ナル・アルバムの構成に合わせて曲順が入れ替えられています。Concerto Grosso の "Adagio (Shadows)" の終盤での "Fireworks" というタイトルが付けられた Andrea Maddalone (g) と第1バイオリンの Roberto Izzo との掛け合いバトルやCG3の "One magic night" でのソプラノ・ヴォイスの Barbara Vignudelli の客演など聴き所満載です。惜しむらくはアンコールで演奏された "Una miniera" と "Signore, Iosono Irish"、それに観客の大合唱で大団円を迎えたライブ最終曲 "Quellacarezza della sera" といった彼らのヒット曲がCDにもDVDにも収録されていないのが残念です。また、この路線のままで行くと Concerto Grosso のトリビュート・バンドになりかねない懸念があるので、次回作は是非とも歌心の溢れる曲中心でお願いしたいものです。なお、国内盤は2CD+DVDのデ ラックス版とDVDのみの通常版の2種が12月19日に発売になる予定だそうです。

Stonata

Giorgia / Stonata (2007) DDC Dischi di Cioccolata, 88697187272. (全15曲)

実力派中堅ヴォーカリスト Giorgia のニュー・アルバム。以前に較べると自作曲の割合がかなり高くなっているので、もはやカンタウトリーチェと言った方がいいかも知れません。オープニングの バラード "Parlo con te" から哀愁漂うメロディを高い歌唱力と巧みな表現力で切々と歌い上げています。Hip-Hop調の "Libera la mente" では Beppe Grillo のラップをフィーチャーしてダンサブルな曲を盛り上げています。Pino Daniele がギターで参加している "Anime sole" は軽やかなボサノヴァ調の曲で、Pino のハイトーン・ヴォーカルによるコーラスを伴った肩の力の抜けたリラックスしたヴォーカルを聴くことができます。大御所 Mina とのデュエットによる "Poche parole" ではブルース調のギターに導かれて中低音を生かしたしっとりとした大人のデュエットを聴かせてくれます。シンプルなピアノの響きで始まるアルバム・タイト ル曲 "Stonata" では囁きかけるようなヴォーカルでしっとりとしたメロディをムーディーに歌い上げています。R&B調の "Come sei" ではダンサブルなリズムに乗せて大人の色香漂うセクシーなヴォーカルを披露しています。リリカルなピアノに導かれたアルバム・ラストの "Adesso lo sai" では中性的な歌声の Emanuel Lo との絡み合うようなデュエットを聴かせてくれます。全体的にイタリア色はあまりないものの、幅広い音楽性と見事な歌唱力が楽しめる1枚となっています。

DieciGocce

Milagro / Dieci gocce di veleno (2007) Manhattan, 5099950598427. (全11曲)

Emilia Romagna 州出身のAntonio Capolupo (g, vo) と Francesco Cavazzuti (vo, g) によるフォーク・ロック・デュオ Milagro のデビュー・アルバム。同傾向の Zero Assoluto に較べるとよりアコースティック色が強く、生楽器の音色を生かしたシンプルながら豊穣な音空間を演出するフォーク・ロックを聴かせてくれます。アコース ティック・ギターの爪弾きに導かれたオープニングの "Le scelte importanti" はHip-Hop調のリズムに乗せてアコースティック色の強いフォーク・ロックを展開する珍しい曲で、囁くような優しいヴォーカルが印象的です。続くアル バム・タイトル曲の "Dieci gocce di veleno" は大きなノリのギター・ストロークに乗せて2人のヴォーカルが絡み合う典型的なギター・デュオ・スタイルの曲で、爽やかな歌声を楽しむことができます。囁 くようなヴォーカルで始まる "Identità" では印象的な音色のロング・トーンのギターによるバッキングによりノスタルジックな雰囲気が感じられます。ピアノとトランペットによるイントロで始まる "Qualunque cosa sia" では語りかけるようなヴォーカルと物悲しげな音色で奏でるトランペットによるオブリガートが染み入るような哀愁を感じさせます。アルバム・ラストの "Dentro di me" はロック色の強いリズムに乗せてファルセットが印象的なヴォーカル・アンサンブルを聴かせる佳曲です。新人らしからぬ落ち着きを感じさせる爽やかなアルバ ムに仕上がっています。

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