Musicadentro

第87号 (09/11/2007)

約4ヶ月振りの本編更新となってしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はこの秋に発売された新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Orchestra

Nomadi & Omnia Symphony Orchestra / Live 2007 (2007) Atlantic, 5051442335026. (CD全34曲, DVD全32曲) 2CD+DVD

ベテラン・ロック・バンド Nomadi の最新ライブ・アルバムの2CD&DVDの限定盤。今年の4月6日と7日の2日間に Brescia で行なわれた Omnia Symphony Orchestra との共演ライブの模様を収録した2枚組CDと映像版のDVDをカップリングしたものです。CD版の方は各CDの冒頭にスタジオ録音の新曲を配し、ライブ本 編はCD&DVDともに32曲収録されていますが、CDとDVDでは曲目および曲順が若干異なっています。新曲の "Ci vuole un senso" は艶やかな音色のバイオリンが活躍する軽快な曲で、ポップで勢いのあるメロディが印象的です。また、ピアノの調べに導かれた "La mia terra" はギターや包み込むようなストリングスの音色をバックにしっとりとしたヴォーカルを聴かせる叙情的なバラードになっています。ライブ本編は2000年以降 の曲を中心に古くは'64年の "Auschwitz" や'72年の "Io vagabondo" などのライブ定番曲を多数含んだ彼らの歴史を俯瞰するような選曲になっていてボリュームがありすぎるものの入門用としてもお薦めです。もともとシンフォ ニックなキーボードや近作ではバイオリンがフィーチャーされている楽曲が多いためオーケストラとの相性がよく、大編成のオーケストラと5人の混声コーラス 隊を従えてスケールアップした楽曲を聴かせてくれます。また、"Corpo estraneo" ツアーのライブDVDがお蔵入りになってしまった同作収録の "Oriente" や "Confesso" などのライブ・バージョンがオーケストラ入りで聴ける点もポイントが高いです。この限定盤のパッケージは4面開きのスリット・イン・タイプのCDケース・ サイズの紙ジャケ仕様となっています。その他、3面開きのスリット・イン・タイプの紙ジャケ仕様の2CDとトールサイズのDVDがリリースされています。

FerroCartone

Francesco Renga / Ferro e cartone (2007) Mercury, 1745340. (全11+9曲)

今や元 Timoria という肩書きが必要もないほどの人気カンタウトーレとなった Francesco Renga の約3年振りの4作目となるニュー・アルバムのボーナス・ディスク付き限定盤。 大部分の曲を共作を含めて彼自身が作詞・作曲しており、前作同様 Luca Chiaravalli が作曲に大きく貢献しています。プロデュースは Corrado Rustici で、演奏面でもギターにプロムラミングにと活躍しています。オープニングの "Cambio direzione" はロック色の強い曲で、重たいリズムをバックに伸びのあるヴォーカルを聴くことができます。リリカルなピアノの調べをバックにした叙情的なバラード "Corali" ではしっとりとしたメロディを紡ぎ出す舞い上がるような歌声を堪能できます。ヘヴィーな音色のギターに導かれた "Come mi viene" では金属質のバックの音色と伸びやかなヴォーカルとの対比が印象的です。アルバム・タイトル曲の "Ferro e cartone" は切々と歌い上げるバラードで、ピアノを主体とした演奏をバックにしみじみとした叙情的なメロディを楽しむことができます。アルバム・ラストの "Dove finisce il mare" でもイタリアらしい哀愁漂うメロディに乗せたスケールの大きい舞い上がるようなヴォーカルを聴くことができます。ボーナス・ディスクにはピアノと歌のみの デモ・バージョン9曲が収録されています。この限定盤のパッケージは4面開きのデジパック仕様となっています。

Tre3

Il Mito New Trolls / TR3 (2007) BMA Music, BMA00073. (DVD全11曲, CD全17曲) DVD+CD

元々は Nico Di Palo を中心に結成された New Trolls の残党バンド Il Mito New Trolls の待望のファースト・アルバム "3" に Nico Di Palo 在籍時の2004年4月3日に La Spezia で行なわれた Concerto Grosso Live の音源を加えたCDと映像版のDVDをカップリングしたニュー・アルバム。DVDの方は去年秋に New Trolls 本体に合流してしまった Nico Di Palo (key, vo) を筆頭に Ricky Belloni (g, vo), Giorgio Usai (key, vo) の New Trolls OB組に加えて若手4人を配したラインアップで、地元の Orchestra Yaso との共演により "Concerto Grosso 1&2" とアンコールで演奏された "Una notte sul Monte Calvo" を収録しています。CDに収録されたファースト・アルバム "3" の方は Ricky Belloni (g, vo), Giorgio Usai (key, vo) に New Trolls のオリジナル・メンバーである Gianni Belleno (g, ds, vo) を迎えて、Concerto Grosso Live にも参加していた Andrea Cervetto (b, vo) と Alex "Polipo" Polifronte (ds, vo) を加えた5人編成で'70年代末の New Trolls を彷彿させる巧みなコーラスワークを中心としたポップでメロディアスな新曲を6曲収録しています。収録時間の関係で新曲が6曲のみとなっていますが、CD への Concerto Grosso Live の音源収録は蛇足だった気がします。また、"3" と Concerto Grosso Live 音源とでは軽快なポップスとクラシカル・ロックといったように音楽性が大きく隔たっている上に、出力レベルが異なっていてアルバムとしての整合性には欠け ています。パッケージはDVDトールサイズのデジパック仕様です。

TuttoMare

Daniele Battaglia / tutto il mare che vorrei (2007) Solomusicaitaliana, 0185072SIT. (全10曲)

Pooh の Dodi Battaglia の息子で Radio Italia TV のMCとして活躍している Daniele Battaglia のファースト・アルバム。曲作りに本人も全曲参加していますが、大部分の曲で父の Dodi が作曲に加わっており、演奏でもギターを担当するなど全面的にバックアップしています。オープニングの "Fresco" は今年の夏のヒット・シングル曲で、軽快なギター・サウンドに乗せて軽やかなヴォーカルを聴かせる佳曲です。続く "Tutte ma nessuna" でも Dodi が奏でるギターをバックに歌われるリズミカルなメロディが印象的です。リリカルなピアノの調べに導かれて始まる "Oltre il limite che c'è" ではしっとりとしたヴォーカルで叙情的なメロディを歌い上げています。きらびやかな音色のピアノをバックに切々と歌い上げる "Noi mai" では中間部の Dodi のギターが曲を盛り上げています。HIP/HOP 調の Corinne とのデュエット曲 "Tu, la superstar" では男女の歌声の対比が印象的です。アルバム・ラストはデビュー作となった Brenda とのユニットで発表された "Vorrei dirti che è facile" で、2人の息のあったヴォーカル・ハーモニーによる情熱的なバラードを聴かせてくれます。全体的に プロデュースを含め Dodi 色が出ているために完成度は高い反面、この先どのように父親から自立して Daniele 色を出して行くかが課題とも言えます。

1234

Matia Bazar / one1 two2 three3 four4 (2007) MBO Music, 3000058. (全15曲)

4代目女性ヴォーカリストを迎えて活動を続ける新生 Matia Bazar の約2年振りとなる新譜はオリジナル作品ではなく、'60年代末から現在までのイタリアのバンド作品のカバー・アルバムとなっています。メンバーは Piero Cassano (ac-g, key, vo) と Giancarlo Golzi (ds, vo) のオリジナル組と再編時に加入した Fabio Perversi (p, key, vo) に加え、前作から参加している4代目となる Roberta Faccani (vo) の4人編成となっています。この Roberta のソウルフルなヴォーカル・スタイルがゆえにマッチする曲調が限られているからか Piero Cassano がリードをとる曲が多くなっていて、そういう意味では初期のスタイルに近くなっています。'60年代の Equipe 84 や Dik Dik などのビート・バンドの曲はそれ自体英米のカバー曲なので原曲を知っている人にはアピール度が高いでしょう。'70年代からは Delirium, PFM, Pooh, Nomadi, Formura 3 の代表曲がピックアップされ、'80年代からはセルフカバーの "Ti sento" や Banco の "Moby Dick" が選曲されています。比較的最近の曲では Lunapop, 883 の曲が選ばれ、若手からは Negramaro と Zero Assoluto のヒット曲をカバーしています。元々は24曲2枚組の予定だったようで、すでに第2弾の企画も進んでいるようです。

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