Musicadentro

第83号 (22/04/2007)

しばらく寒い日が続いたものの、ようやく春らしい陽気が戻ってまいりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回は2月から3月にかけてリリースされた(サンレモ音楽祭参加アーティストを含む)新作を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

ParoleV

Stadio / parole nel vento (2007) EMI, 0946 388592 0 8. (全12曲)

ベテラン・ロックバンド Stadio の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む最新アルバム。メンバーは Gaetano Curreri (vo, cho), Giovanni Pezzoli (ds), Andrea Fornili (g, key), Roberto Drovandi (b) の不動の4人で、前作のライブ盤では久々にキーボードを弾いていた Gaetano は今回のスタジオ盤でもヴォーカルに専念しています。オープニングのサンレモ参加曲 "Guardami" ではゆったりとしたリズムに乗せて叙情的なメロディを幾分しゃがれた歌声で切々と歌い上げるしっとりとしたバラードを聴かせてくれます。哀しみを帯びたピアノの音色に導かれた "Lame affilate" は囁きかけるようなヴォーカルと哀愁漂うメロディとが一体となってこみ上げてくるような切なさを感じさせる曲となっています。リリカルな響きを湛えたピアノをバックに切々と歌われる "...E mi alzo sui pedali" では包み込むようなキーボード群が叙情的なメロディを浮き上がらせています。アルバム・タイトル曲 "Parole nel vento" はリリカルなピアノに導かれて語りかけるようなヴォーカルを聴かせてくれ、サビで一気に盛り上がりを見せる展開の大きな曲です。アルバムのラストを飾る "Più di tutto, più di me" は軽快なリズムに乗せて高度なテクニックに裏打ちされた安定した演奏と情熱的なヴォーカルが絡み合う極上のポップ・チューンです。全体的にバラードの比率が多いものの、曲調のバリエーションが多彩なため飽きのこない出来になっています。

Volare

Mariangela / ... preparati a volare (2007) Universo, 80278511752. (全15曲) CD-Text

今年のサンレモ音楽祭の新人部門に参加した 1984年 Piacenza 生まれの女性アーティスト Mariangela のファースト・アルバム。最近のイタリアでは珍しい、南米のラテン諸国によくあるセクシー系の女性シンガーとして貴重な存在です。また、歌だけではなく数曲で作詞や作曲もしていて、多才なところも示しています。オープニングのサンレモ参加曲 "Ninna nanna" では気怠さを感じさせるメロディをやや舌足らずな歌声で囁くように歌い、セクシーな歌い回しによる官能的なヴォーカルを聴かせてくれます。アコースティック・ギターの爪弾きに導かれた "M'ama o m'amerà" ではR&Bの影響を感じさせるノリのいいリズミカルなヴォーカルを聴くことができます。"Ricominciare da te" では艶やかなストリングスをバックに Hip-Hop 調の主旋律と美しいハーモニーを聴かせるコーラスとの対比が印象的な佳曲です。"A modo mia" はロック色の強い曲で、愛くるしい声質のヴォーカルでシャウトするさまが決まっています。しっとりとしたメロディが印象的なスケールの大きいバラード "Nei giorni sempre uguali" では Marco Armani との息のあったデュエットを聴かせてくれます。 曲調が非常にバラエティに富んでいて統一感はやや欠けるものの、可能性の提示という意味ではいい感じになっていると思います。

Appena

Zero Assoluto / appena prima di partire (2007) Baraonda, 80278511762. (全11曲)

Matteo Maffuci (vo, key) と Thomas De Gasperi (vo, key) の 2人からなるポップ・デュオ Zero Assoluto の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むセカンド・アルバム。実際には曲作りにも参加しギター/ベースも担当する Enrico Sognato と Danilo Pao の2人を加えたユニットの色合いが強いようです。オープニングの "Ora che ci sei" は穏やかなリズムをバックに囁くように Hip-Hop 調のメロディを歌い上げる曲です。アルバム・タイトル曲でもあるサンレモ参加曲 "Appena prima di partire" では春の陽だまりのようなほのぼのとしたメロディを持った曲で、2人のきれいなハーモニーを聴かせてくれます。昨年の夏のヒット曲 "Sei parte di me" はアコースティック色の強いバックの演奏に乗せて軽やかなハーモニーを聴かせる爽やかな初夏らしい曲です。"Certe cose non cambiano" では包み込むようなストリングスをバックにギターの爪弾きに乗せて語りかけるようなヴォーカルを聴かせてくれます。アルバムのラストを飾る "Semplicemente" は穏やかな Hip-Hop といった彼らの特徴が凝縮された曲で、ゆったりとしたリズムに乗せた囁くようなハーモニーが楽しめます。穏やかな曲が主体のためやや単調になりがちですが、曲順などの構成に工夫が見られるので聴き易いです。

Fondo

Le Mani / IN FONDO (2007) Black Out, 1724344. (全12曲)

若手ロックバンド Le Mani のファースト・アルバム。同名のかつて Trident レーベルからアルバムをリリースする予定だったプログレ・バンド (Claudio Fucci がメンバーだったやつ) とは全く別物です。メンバーは Luigi Scarangella (vo), Antonio Marcucci (g), Marco Pisanelli (ds), Angelo Perna (key), Francesco Stoia (b) の5人編成です。1曲目の "Stai bene come stai" から重低音を響かせるリズムセクションをバックにした切れのいい演奏に乗せて力強いヴォーカルを聴かせるノリのいいロック・ナンバーを披露しています。続く "L'ultima lettera" では哀愁を帯びたメロディを盛り立てるように切り込んでくるストリングスと重厚なリズムとの対比が印象的です。ヘビィなロック・ナンバーであるタイトル曲の "In fondo" ではスピード感のある演奏をバックにやや語尾がファルセット気味になる力強いヴォーカルを堪能できます。リリカルなピアノの調べに導かれた "Semplice distrazione" では切なさを感じさせるメロディをファルセットを多用したヴォーカルで切々と歌い上げています。アルバム・ラストの "Replay" は弾むようなベースを中心とした重厚なリズムに乗せて畳み掛けるような展開を聴かせる力強いロック・ナンバーとなっています。曲調のバリエーションに工夫が見られるので同傾向の他のバンド作品と較べて起伏のある構成になっていると思います。

Fianco

Mattia Donna / Sul fianco della strada (2007) EMI, 094638298922. (全10曲)

Emilia Romagna 州出身の若手カンタウトーレ Mattia Donna のファースト・アルバム。全体的なサウンドは後期の Fabrizdo De André に近く、ほのかにトラッドの香りの漂うアコースティック色の強いフォーク・ロックを聴かせてくれます。Bob Dylan のカバー曲を除く全曲を彼自身が作詞・作曲しており、演奏面でもアコースティック・ギターを担当しています。マンドリンとバイオリンの調べに導かれて始まるオープニングの "Ti spiegherò, se vorrai" では語りかけるような穏やかなヴォーカルとアコースティック楽器が紡ぎ出すトラディショナルな響きが溶け合った木漏れ日を感じさせるような音世界が印象的です。 "Le maschere bianche" はアコースティック・ギターを中心とした軽快なリズムをバックに語りかけるように歌い上げられる典型的なフォーク系ダンスチューンです。包み込むようなストリングスを従えた "La notte di Tavira" はアコースティック・ギターの爪弾きに乗せて囁きかけるようなヴォーカルを聴かせるしみじみとした曲です。彼の音楽的ルーツの一つである Bob Dylan の "One more cup of coffee (valley below)" のカバー曲である "Un'altra tazza di caffè" では艶やかなストリングスとアコースティック・ギターの響きをバックに力強い歌声を聴かせてくれます。地味な作風ではありますが、味わい深いいい作品に仕上がっていると思います。ちなみに、プロデュースとピアノなどのキーボード類を Vince Tempera が担当しています。

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