アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Marco Notari / oltre
lo specchio (2006) Artes, MES 004. (全10曲)
ロック系新人カンタウトーレ Marco Notari
のファースト・アルバム。全曲共作を含め彼自身の作詞・作曲しています。バックには
Ghego Zola (el-g, e-bow), Lorenzo Serra (el-g, e-bow),
Roberto Sburlati (b), Pax Caterisano (ds) の4人組のバンド
Madam
を従え、彼自身もコーラス/アコースティック・ギター/エレピを担当していて、実質的にはリード・ヴォーカリスト
Marco Notari
を擁する5人編成のバンド作品といった趣になっています。スピーディーなリズムに乗せてやや気だるいヴォーカルを聴かせるオープニングの
"Ninfee" では乗りのいいギター・サウンドを楽しめます。続く
"Speciale"
ではややエフェクトのかかったヴォーカルとハードエッジなギターとが絡み合ったオルタナ系の音を聴かせてくれます。ギターのコード・カッティングに導かれて切々と歌い上げる
"Vertigini"
では歪んだ音色のギターによる浮遊感のあるバッキングが印象的です。ゆったりとしたロック・バラードの
"Lamento d'inverno"
では複数のギターが絡み合って作り出す幻想的な雰囲気に包まれて、しっとりとしたメロディを歌い上げています。ラストのタイトル曲
"Oltre lo specchio"
では静謐な響きを湛えたピアノをバックに気だるいヴォーカルを聴かせてくれ、時折絡みつくトロンボーンの音色とともに幻想的な雰囲気を醸し出しています。ヴォーカルがあまり全面に出てこないミキシングとやや不明瞭な発音のヴォーカルにより好みが分かれるとは思いますが、ロック系のカンタウトーレ作品としては曲調の変化もあり聴き所の多い仕上がりになっています。
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Pier Cortese /
Contraddizioni (2006) Universal, 1700799.
(全12曲)
Roma 出身の若手カンタウトーレ Pier Cortese
のファースト・アルバム。1999年にシングルでデビューしているのでアルバム制作まで7年かかったことになります。詞が共作のデビュー・シングル曲
"Il Clown"
を除いて全曲彼自身の作詞・作曲で、自身でギターをはじめ各種撥弦楽器を担当しています。オープニングはデビュー曲
"Il Clown"
の新録(?)でサーカスを思わせるSEに導かれて始まり、アコーディオンやギターを中心としたアコースティクな演奏をバックにノスタルジックな雰囲気を持ったメロディを軽やかなヴォーカルで聴かせてくれます。続く
"Prima che cambierà"
では柔らかい音色のストリングスをバックにややユーモラスなメロディを爽やかな歌声で歌い上げています。ギターの爪弾きをバックに囁くように歌われる
"Non capirò mai"
では艶やかなバイオリンやティン・ホイッスルによるオブリガートが優しい歌声に華を添えています。タイトル曲の
"Contraddizioni"
ではのどかでややコミカルなメロディをマリンバなどが紡ぎ出すリズミカルなバッキングに乗せて囁くような軽やかなヴォーカルで聴かせてくれます。"Il
basilico"
はアコースティック・ギターの紡ぎ出す穏やかなリズムをバックに、爽やかな歌声で午後の日だまりのようなほのぼのとしたメロディを歌い上げています。呟くようなヴォーカルに導かれて始まる
"La canzone silenziosa"
ではギターの爪弾きによるシンプルなバッキングに乗せて呟きと囁くようなメロディが交互に表れるやや難解なイメージの曲です。曲調には幅があるものの、ほのぼのとした歌声とノスタルジックな雰囲気を持ったメロディにより全体的な印象は一貫しているという不思議な魅力を感じさせる作品になっています。
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Nello Daniele /
Aspettando... 'o soul (2006) Duck Record, DPCD 003.
(全11曲)
Pino Daniele の実弟であるカンタウトーレ Nello Daniele
の約5年振りとなるサード・アルバム。大部分の曲を共作を含め彼自身が作詞・作曲しており、これまで同様自身でギターも演奏しています。オープニングの
"Può farci male"
からファンキーなリズムに乗せて兄譲りのファルセットによる軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。Francesco
Baccini が作詞で協力している "Non ci sento"
はジャズ・テイスト溢れる曲で、Baccini
との息のあったデュエットを聴かせてくれます。ボサノヴァのリズムに乗せた
"Vedrai"
ではギターの爪弾きによるゆったりとしたバッキングの上をファルセットを多用したリラックスした歌声による哀愁のメロディを堪能できます。"Comme
vene vene"
ではレゲエのリズムを導入して南国風のメロディをソウルフルでリズミカルなヴォーカルで聴かせてくれます。Enzo
Gragnaniello 提供の "Si nun ce stesse 'a vita"
では南イタリアらしいエキゾチックで哀愁を帯びたメロディを情感たっぷりに歌い上げています。艶やかな響きを湛えたギターの爪弾きに導かれた
"Sotto il tetto"
では囁きかけるようなしっとりとした歌声を聴かせ、シンプルなバッキングと相まって染み入るような叙情を感じさせます。リズミカルなコーラスに導かれて始まる
"Passo dopo passo"
では背後に流れるオルガンによるバッキングの上を軽やかなヴォーカルが駆け抜けていくのが印象的です。ラテン・フュージョン色のある
"Stu suonno adda ferni"
ではテクニカルな演奏に乗せてソウルフルなヴォーカルを聴かせてくれます。全体的に以前のカンタウトーレ然とした作風と較べると兄
Pino Daniele の作風に近づいてきた感じがします。
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Ginevra Di Marco /
Stazioni Lunari prende terra a Puerto Libre (2006)
Radiofandango, 0175392RAF. (全11曲)
現在は活動を停止しているオルタナ系ロック・バンド CSI
(Consorzio Suonatori Indipendenti) の紅一点 Ginevra Di Marco
のソロ4作目となる最新アルバム。本作でもプロデュースやアレンジなどで活躍している
CSIの Francesco Magnelli が提唱して始まった一連のコンサート
Stazioni Lunari
シリーズの一環として行なわれたヨーロッパ各地の大衆音楽とトラッドを演奏したコンサートのライブ録音です。オープニングは
Domenico Modugno のカバー曲 "Amara terra mia"
で、民族楽器によるトレモロの響きに乗せてトラディショナルな香りの漂うヴォーカルを聴かせてくれます。ギリシャのトラッド曲
"Saranta palikaria"
では弦楽器の紡ぎ出すエキゾチックなリズムをバックにユニゾンのコーラスを伴ったギリシャ語のしなやかなヴォーカルを堪能できます。クラシック・ギターの爪弾きをバックに切々と歌い上げる
"Gracias a la vida"
ではスペイン語のヴォーカルを披露しています。同じくスペイン語の
"La martiniana"
ではリリカルなピアノの調べに乗せて中低音を生かしたトラッド色の強いヴォーカルを聴くことができます。Leo
Ferré のカバー曲 "Les tziganes"
でも原曲とは異なりかなりトラッド寄りのアレンジと歌い回しにより、フランス語の語感を生かしたトラッド・ロック風の仕上がりになっています。半数以上の曲がイタリア語ではないためにイタリアンポップスの文脈で語るのは問題はあるものの、トラッド寄りの良質な音楽作品としてお薦めです。
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Finley / Tutto è
possibile - special double disc (2006) Capitol, 00946
3 8067924. (CD全20曲)
CD+DVD
4人組の若手ロック・バンド Finley
のファースト・アルバムにボーナス・トラック3曲とビデオ・クリップ6曲やMTVでのライブ映像8曲などを収録したDVDを加えたスペシャル・エディション。メンバーは
Marco "Pedro" Pedretti (vo), Carmine "Ka" Ruggiero (g, vo),
Stefano "Ste" Mantegazza (b, vo), Danilo "Dani" Calvio (ds,
vo)
の4人で、全曲4人の共作ということになっています。スピード感のあるハード・ポップ・ナンバーである1曲目の
"Tutto è possibile"
からハードなギターと推進力のあるドラムを中心にパンキッシュな演奏を聴かせてくれます。爽やかなヴォーカルで始まる
"Sole di settembre"
でも畳み掛けるようなリズム・セクションが生み出す勢いに乗った演奏とメロディアスなヴォーカル・ラインの持つポップさの対比が印象的です。コードを刻むエレピに導かれた
"Fumo e cenere"
では一転して哀愁を帯びたメロディを歌い上げ、サビでのメンバー全員によるコーラスも決まっています。息のあったコーラスで始まる
"Per sempre"
ではノリのいいリズム・セクションの上をコーラスと多用したメロディアスなヴォーカルが駈け抜けていくさまが印象的です。ボーナス・トラックを含むアルバム終盤は英語バージョンのためにオリジナルと較べるとやや持ち前のノリが失速してもたつき感があるものの、全体としては若さに溢れた勢いを感じさせる小気味のいいロック・アルバムに仕上がっています。パッケージはコーティング紙製のスリップ・ケース入りとなっています。
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