Musicadentro

第80号 (25/12/2006)

いよいよ年の瀬も迫ってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回も10月後半からの怒濤のリリース群の中からカンタウトーレの作品を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Italy

Gigi D'Alessio / made in italy (2006) RCA, 88697018732. (全11曲)

Napoli 出身の中堅カンタウトーレ Gigi D'Alessio の約2年振りとなる最新アルバム。今回は Mogol が数曲で詞を提供しています。オープニングの "Brividi d'amore" ではリズムを強調したアレンジをバックに跳ねるようなヴォーカルを聴かせてくれます。アコースティク・ギターをバックに囁きかけるように歌われる "Primo appuntamento" ではサビでの伸びのある高音のヴォーカルが印象的です。"Una volta nella vita" では哀愁漂うメロディをいかにも南イタリアを感じさせる独特の歌い回しで切なく歌い上げています。フラメンコ・ギターが活躍するスパニッシュ風の "Un cuore malato" ではカナダ出身のフランスを代表する女性シンガー Lara Fabian との息のあったデュエットを聴かせてくれます。リリカルなピアノの調べに乗せて歌われる "Canterò di te" では青空を滑空するような特徴のあるヴォーカルが印象的です。ラテン・ポップスを想わせるリズミカルな "Besame" ではスペイン語詞を交えながら情熱的な歌声を聴かせてくれます。ラストの "La grande storia" では包み込むようなストリングスをバックに、叙情的なメロディをしっとりと歌い上げています。彼の場合、ある意味どれを聴いても同じように聞こえるくらいに個性が強くスタイルも確立されているのですが、南イタリアの陽光を感じさせる爽やかなナポリ・ポップスとしては一押しでしょう。

Immaginario

Rossana Casale / Circo immaginario (2006) Azzurra Music, DA2001. (CD全20曲 DVD全4曲) CD+DVD

ジャズとポップスの2つのフィールドで活躍するカンタウトリーチェ Rossana Casale のポップ・フィールドでは久々となるニュー・アルバム。Sara Cerri の同名小説にインスパイアされたオリジナルの音楽劇といった構成になっていて、Orchestra Sinfonica Radio TV Moldova を全面的にフィーチャーした一大音楽絵巻を繰り広げています。胸を締めつけるような切ない調べを奏でるオープニングのインスト曲 "La bella confusione (Ouverture)" で始まり、Ferrini などの古き良き時代のイタリア映画のサントラを想わせる哀愁漂う楽曲を間に挟みながら進行していく様は圧巻です。囁きかけるようなヴォーカルで始まる "Il battello di carta" は染み入りような哀愁を感じさせる曲で、いまだにかわいらしさのある彼女の歌声を堪能することができます。切れのあるタンゴのリズムに乗せた "Circo" では艶やかなストリングスをバックに哀愁のあるメロディを高らかに歌い上げています。ムーディーなジャズ・テイスト溢れる "Dentro gli occhi chiusi" では胸を締めつけるような哀愁漂う歌声で切々と歌い上げています。作品の性質上、純ポップス作品とは言い難い品格漂う作品となっていますが、シリアス路線に走ることもなく万人にお薦めできる楽しい作品に仕上がっています。DVDにはアルバムからの4曲の歌入れの映像とインタビューなどが収録されています。パッケージは紙製のスリップ・ケース入りとなっています。

Stanza26

Nek / nella stanza 26 (2006) Warner, 5051011813726. (全10曲)

人気中堅カンタウトーレ Nek のニュー・アルバム。今回も前作と同様に自作曲は半数くらいですが、大多数の曲で自身がアコースティックを中心にギターを弾いています。オープニングの "Notte di febbraio" からロック色の強いギターのコード・カッティングをバックに、ほのかに哀愁を感じさせるメロディを若々しい歌声で歌い上げています。艶のある音色のリフで始まる "Cri" では伸びのあるギターのフレーズと男性的なヴォーカルの絡みを楽しみことができます。先行シングルとなった "Instabile" はざっくりした音色のギターをバックに内省的なロック・サウンドを聴かせるいかにも彼らしい楽曲で、サビでの高音部の伸びが気持ちいいです。アコースティック・ギターの爪弾きで始まる "Attimi" では Bryan Adams を思わせる少しかすれた歌声でしっとりとしたメロディを歌い上げています。アルバム・タイトル曲の "Nella stanza 26" はスピード感のある曲で、力強いリズムをバックにロック色の強いヴォーカルを聴かせてくれます。しっとりとしたバラード "Sei" では哀愁漂うメロディを大空を羽ばたくようなスケールの大きなヴォーカルで歌い上げています。ラストの "Contro le mie ombre" は囁きかけるように始まり、サビに向かって一気に盛り上がっていくスケール感のある曲で、ギターを中心としたアレンジと彼の男らしいヴォーカルが醸し出すかすかな哀愁が相まってドラマティックな楽曲に仕上がっています。

Passo

Barbara Cavaleri / Ad Un Passo Dal Sogno (2006) Lagash, 0175382ERE. (全9曲)

Novara 出身の新人女性ヴォーカリスト Barbara Cavaleri のデビュー・アルバム。新人とは言ってもこれまでにミュージカルに主演したり、ジャズを歌ったりと音楽活動を続けていたので、デビュー作でありながらも若干23歳とは思えない落ち着いた仕上がりになっています。オープニングのタイトル曲 "ad un passo dal sogno" からアンビエントな響きを湛えた楽器の音色を生かしたアレンジをバックに囁きかけるような艶めかしい歌声を聴かせてくれます。先行シングル(ラジオ・オンエアのみ)となった "Perchè" ではボサノヴァのリズムに乗せて軽やかなヴォーカルを聴くことができます。囁くようなヴォーカルが印象的な "Invece tu" ではムーディーな演奏をバックに艶のある歌声を堪能できます。"Paradiso e inferno" ではラテン・ジャズの香り溢れるパーカッシブな演奏をバックに浮遊感あるヴォーカルを聴かせてくれます。南ヨーロッパのエキゾチックな雰囲気を感じさせる "Estate a Lisbona" ではジャージーなクラリネットを従えて哀愁のあるメロディを優しく歌い上げています。アンビエントな音色のピアノに導かれた "Nelle cose" では軽やかなヴォーカルがほのかにジャズの香り漂うボサノヴァ風のアレンジとマッチして洒落た雰囲気を醸し出しています。囁くようなヴォーカルを聴かせるラストの "Verso l'alba (Szomoru vasarnap)" では本名の Barbara D'Agostino 名義でイタリア語詞への訳詞にも挑戦しています。

Male

Enrico Nascimbeni / Male di amare (2006) MoltoPop, MPP005. (全12曲)

'70年代後半から活動を続ける Verona 出身のカンタウトーレ Enrico Nascimbeni の約2年振りのニュー・アルバム。とは言っても'80年代半ばから約20年間は他のアーティストへの楽曲提供などの裏方としての活動だったため、歌手活動としては復帰第3弾となります。1曲目の "Siamo storie dentro le canzoni" からポップで人懐こいメロディと優しげな歌声により爽やかなポップ・ワールドが展開されています。日溜まりを思わせるのどかな雰囲気を持った Ivan Graziani のカバー曲 "Lugano addio" では楽曲提供もしている友人の Francesco Baccini との息のあったデュエットを聴かせてくれます。北アフリカを想わせるストリングス・アレンジで始まる "Sono una piccola parte di te" では囁くような歌声とリリカルなピアノの調べが醸し出す消え入るような叙情が感じられます。疾走するオルガンによるバッキングが印象的な "Il cielo in un caffè" は軽快なリズムに乗せてポップ・センス溢れる軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。ピアノによるシンプルなバッキングで始まる叙情的な "Stigmate" ではコーラスでも参加している Mimma Foti との情感溢れるデュエットを聴くことができます。タイトル曲の "Male di amare" はスピード感のあるロック色の強い曲で、サビの途中のまくし立てるようなヴォーカルがアクセントになっています。ほのかな哀愁を感じさせるラストの "Il sarto di Barcellona" では語りに近いヴォーカルと高音部を生かした歌い回しとの対比が印象的です。パッケージはざらついた肌合いのデジパック仕様となっています。

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