Musicadentro

第78号 (05/11/2006)

秋もいよいよ深まってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はようやく発売になった昨年の Arti & Mestieri 来日公演のライブ盤をはじめ、この秋にリリースされた作品を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Migliore

Gianni Morandi / il Tempo Migliore (2006) Epic, 82876870772. (全12曲) CD-Text

イタリアを代表するベテラン二枚目シンガー Gianni Morandi の約2年振りとなる最新アルバム。オープニングのドラマティックなバラードであるタイトル曲 "Il tempo migliore" から年齢を感じさせない若々しい歌声でダイナミックに歌い上げています。Guido Morra と Maurizio Fabrizio の名コンビによる "Da qui all'eternità" では哀愁を感じさせるメロディを囁きかけるように切々と歌い上げています。同じコンビによる "Un miracolo" では一転して軽快なリズムに乗せたダイナミックでポップな歌声を聴かせてくれます。"Sei bella vita" はピアノに導かれて静かに盛り上がっていく佳曲で、サビに向かって一気に歌い込んでいく様が印象的です。語りかけるような歌声を聴かせる "Tanto è solo un gioco" ではギターの爪弾きをバックに肩の力の抜けたさり気ないヴォーカルを聴くことができます。リリカルなピアノの調べに導かれたバラード "Io sto bene con te" ではゆったりとしたリズムに乗せてスケールの大きいヴォーカルを聴かせてくれます。"Amor y cha cha cha" はタイトル通りラテンの軽快なリズムをバックに哀愁を帯びた歌声を聴かせる楽しげな曲です。 シンプルなピアノの伴奏をバックに切々と歌い上げる "Basta così" はしっとりとしたヴォーカルを聴かせる美しさに満ちた佳曲です。彼の歌声が与える印象もあるのでしょうが、とても還暦を過ぎているとは思えない若々しさに満ちた作品に仕上がっています。

L'abitudine

Antonella Ruggiero / L'abitudine della luce (2006) Linea d'ombra Libri e Libera, LDL CD02. (全14曲)

Matia Bazar の初代歌姫として知られる女性ヴォーカリスト Antonella Ruggiero のニュー・アルバム。作詞には Marco Goldin を迎え、バックは Arkè Strings Project と Ivan Ciccarelli (per) を従えてプロデュースと作曲も兼ねる Roberto Colombo による電子楽器を加えた繊細でクラシカルなアレンジが施されています。ソロ・ヴォーカリストの作品にもかかわらず、Arkè Strings Project のメンバーのペンによるインストゥルメンタル曲を間に挟みながら進行していくトータルなアルバム構成になっています。艶やかなストリングスに導かれて始まるオープニングの "Notte di luna" からクラシカルなアレンジが紡ぎ出す静謐な音世界をバックに Antonella の美声が舞うように歌われる様が印象的です。チェロによる通奏低音とピチカートをアクセントとした "Figlie" は賛美歌を思わせる荘厳な響きを湛えた美しいヴォーカル曲です。チェロとパーカッションによるシンプルなバッキングを中心とした"Un lungo tratto di strade" では囁きかけるような導入部からドラマティックに盛り上がっていくスケールの大きな歌声を堪能できます。いわゆるポップスとは一線を画した天上の音楽といった趣がある儚い美しさに満ちた作品となっています。

First

Arti & Mestieri / First Live in Japan (2006) Prog Citta' Records, PCCD-1001. (全18曲)

昨年奇蹟の来日公演を行なったシンフォニック・ジャズ・ロック・バンド Arti & Mestieri のその来日公演の模様を収録したライブCDがようやく発売されました。メンバーはオリジナルの Beppe Crovella (key) と Furio Chirico (ds, per) に加えて、エフェクティヴなプレイが光る凄腕ベーシストの Roberto Cassetta (b), 堅実なプレイが印象的な Marco Doagna (g), 若き天才ヴァイオリニスト Lautaro Acosta (vln), イタリア語会話でお馴染みのDario Ponissi の実兄でベテラン・ジャズ・ミュージシャンの Alfredo Ponissi (sax), Beppe Crovella が主催する Electromantic Music に所属する Cantina Sociale のメンバーでもある Iano Nicolo' (vo) の7人編成となっています。本作は昨年の6/11, 6/12に Club Citta' 川崎で行なわれた公演のうち6/12のパフォーマンスを収録しています。代表作である "Tilt" "Giro di valzer per domani" の全曲演奏をはじめとして、復帰作の "Murales" からの "Alba mediterranea" や "2000" などの楽曲を手数が多く迫力満点でありながらもメロディアスで流れるような Furio のドラミングと多彩な音色を駆使した Beppe によるカラフルなキーボードを中心とした緻密なアンサンブルを聴かせるテクニカルな演奏が繰り広げられています。昨年のライブを観に行った人だけでなく、残念ながら行けなかった人にも是非とも聴いていただきたい迫力満点のライブ盤です。

Innocente

Luvi De André / Io non sono innocente (2006) Universal, 9856533. (全12曲)

イタリアを代表する偉大なカンタウトーレである故 Fabrizio De André を父に、かつての人気歌手 Dori Gezzi を母に持つ女性ヴォーカリスト Luvi De André のソロ・デビュー・アルバム。父 Fabrizio のツアーや Ivano Fossati のアルバムに参加したりと長年ミュージシャンとしてのキャリアを積んでいるために、デビュー作とは思えない完成度を誇ります。曲はプロデューサーも兼ねる Pietro Cantarelli (p, key) と Claudio Fossati (ds) に Yo Yo Mundi の Fabrizio Barale (g) を加えた3人によるもので、Luvi はヴォーカリストに専念しています。オープニングのロック色の強いドラマティックな楽曲 "Oggi domani" では中低音を生かした迫力のあるヴォーカルを披露しています。続くギターのコードカッティングに導かれた "Fiore femmina" はゆったりとしたリズムに乗せたフォーク・ロック調の曲で、力の入ったダイナミックなヴォーカルを聴かせてくれます。アルバム・タイトル曲の "Io non sono innocente" では内省的なロック・サウンドをバックに力強く歌い込んでいく様が印象的です。ピアノとギターに導かれて始まるバラードの "Lentamente" では囁きかけるように静かに盛り上がっていき、サビではダイナミックな歌唱を聴かせてくれます。ラストは端正なピアノの調べに導かれた "Giocando in equilibrio" で、語りかけるようなヴォーカルでしっとりと幕を閉じます。声質の堅さと中低音を生かしたヴォーカルにより思った以上にロック色の強いサウンドに仕上がっています。

Quadri

Seba / Quadri d'autore (2006) New Music International, 0175322NMU. (全10曲)

若手カンタウトーレ Seba こと Sebastiano Barbagallo のファースト・アルバム。全曲の作詞・作曲はもちろんエレキ・ギターとプログラミングで演奏面でも活躍しています。1曲目の "Domenica d'estate" から躍動的なバイオリンの調べに導かれた弾けるようなポップ感覚に満ちた楽曲を優しげな歌声で軽快に歌い上げています。鳥のさえずりなどの効果音を伴った "Vento d'Africa" では北アフリカを想わせるリズムに乗せて、幾分エスニックなメロディを哀愁を帯びたヴォーカルで聴かせます。トランペットに導かれたトロピカルな楽曲 "C'è qualcosa nelle donne" では軽快なリズムに乗せて力の抜けたコーラスと楽しげな歌声を聴くことができます。ゆったりとしたリズムに乗せて囁きかけるように歌われる "Mentre piove" ではサビの部分でのファルセットが印象的です。バイオリンとバンジョーによるカントリー風の演奏に乗せた "Minigonna blu" では早口による楽しげでリズミカルなヴォーカルを聴くことができます。ヨーロッパらしい染み入るような哀愁を感じさせる "Racconti d'estate" では流れるようなメロディを憂いを帯びた歌声で聴かせてくれます。ラストはピアノとコントラバスによるバッキングが印象的なバラード "Indifesa" で幕を閉じます。若手カンタウトーレでは貴重なポップ系のアーティストなので今後の活躍に期待したいです。

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