Musicadentro

第73号 (05/02/2006)

今年の冬は思いがけないほど寒さが厳しいですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回は昨年の秋から年末にかけてリリースされた新作を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Amore&Guerra

Enrico Ruggeri / _amore e guerra (2005) Anyway, 8287623882. (CD全12曲 DVD全4曲) CD+DVD

ロック色の強いベテラン・カンタウトーレ Enrico Ruggeri の最新アルバムのDVD付きの限定バージョン。若干の共作を含め全曲彼自身の作品で占められています。軽快なギターのリフに導かれてロック色の強い渋味のあるヴォーカルを聴かせる "Eroi solitari" で幕を開け、端正なピアノをバックに切々と歌い上げる "Perduto amore" へと続く流れはベテランならではの円熟を感じさせます。"L'americano medio" ではトラッド風のアコーディオンによるバッキングと力強いコーラスとエレクトロニクス色のある効果音と対比が印象的です。"Il romantico aviatore" ではピアノとアコーディオンの絡みと語りかけるようなヴォーカルがラテン風味を強く押し出しています。コミカルな曲調の "Paisa" や ビート・ポップ風の "La prima volta"、しっとりとしたロック・バラードの "Il concerto" など曲調も多様で、それでいて彼のヴォーカルと中心とした統一感のある作品に仕上がっています。DVDの方は収録曲数は少ないものの貴重なライブ映像が収録されています。パッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。

Ritratti

Francesco Guccini / Ritratti (2004) EMI, 5987802. (全9曲) CCCD

すでに40年近く活動しているフォーク系ベテラン・カンタウトーレ Francesco Guccini のスタジオ盤としての最新作。Vince Tempera (p, key), Antonio Marangolo (sax, per), Ares Tavolazzi (b) といった腕利きミュージシャンをバックに従えて制作されています。初期の Bob Dylan に影響を受けているため基本的に語りに近いヴォーカルにより詞を聴かせるタイプなのですが、メロディに起伏が多いために同タイプのカンタウトーレに較べるとかなり聴きやすいです。オープニングの "Odysseus" から燻し銀のような歌声によるまくし立てるようなヴォーカルとトラディショナルな響きを湛えた演奏のコラボレーションによって一気にノスタルジックな作品の世界に引き込まれてしまいます。続く "Una canzone" ではトラディショナルな管楽器による導入部から端正なピアノをバックに切々と歌い上げるサビへ向かう展開がベテランらしい円熟味を感じさせます。ピアノとギターの爪弾きによるシンプルなバッキングの "Canzone per il che" では語りかけるようなヴォーカルによる説得力のある歌を聴くことができます。"Cristoforo Colombo" ではFabrizio De Andre' を思わせる地中海トラッド風味のフォーク・ロックを聴かせてくれます。コピーコントロールCDであるという一点を除けば最高の作品であると断言できます。

L'incoscienza

Custodie Cautelari / L'incoscienza (2005) Duck Record, DPCD 001. (全14曲) CD-Extra

1993年に結成されたロック・バンド Custodie Cautelari の2年振りのサード・アルバム。アルバム・デビューは1997年ですが、コンサート会場のみの発売だったようで実質的には2枚目と言っていいでしょう。メンバーは大部分の曲を手掛ける Ettore Diliberto (vo) を中心に Francesco Luppi (key, cho), Mauro Isetti (b, cho), Max Muller (ds), Paolo Zanetti (g, cho) の5人編成となっています。オープニングはアルバム・ラストにシングル・バージョンが収録されている軽快なロック・ナンバー "Questa sera" の Irene Grandi とのデュエット・バージョンで、作詞も彼女が共作しています。続く "Per che e' solo al mondo" は Neffa とのデュエット曲で、ミドルテンポに乗せた Ettore と Neffa のヴォーカルの掛合いが印象的です。端正なピアノをバックにした "Che cosa m'insegna la vita" では息のあったコーラスとEttore のヴォーカルとの対比を聴かせてくれます。タイトル曲の "L'incoscienza" はベテラン Eugenio Finardi とのデュエット曲で、ジャズ・テイストをふんだんに取り入れたロック・サウンドをバックに2人の声質の大きく異なるヴォーカルが絡み合っていきます。ボーナスとして "Questa Sera" の Irene Grandi とのデュエット・バージョンのビデオ・クリップが収録されています。

Jaz

Dirotta Su Cuba / Jaz (2005) Jazzet, MM3. (全10曲)

看板ヴォーカリスト Simona Bencini が独立のため脱退してから活動休止状態が続いていた Dirotta Su Cuba の3年振りのニュー・アルバム。新加入のヴォーカリスト Marquica と Rossano Gentili (p, key, cho) のユニットとして復活しました。全体的に今までのファンク/ソウル色は大幅に後退し、ラテン・ジャズ色が全面に押し出されています。オープニングの "Fantom beat" は Marquica はコーラスのみのジャズ・バンドによるインスト・ナンバーです。続く "L'igana" はホーンセクションが活躍するジャズ・ヴォーカル色が強い曲で、中間部でのオルガン・ソロが聴き物です。"Genio della lampada" はエキゾチックなフレーズを持った曲で、ラテンテイストの強い演奏とイスラム色の融合が印象的です。今までのサウンドを期待すると肩すかしを食うと思いますが、新加入の Marquica のヴォーカルが適度に艶っぽさを持っているためにこのラテン・ジャズ路線で行くなら結構いい線行くのではないかと思います。レコード盤を模したCDデザインに、パッケージは厚紙によるリング綴じノートタイプの歌詞カードが封入された、ジュエルケースサイズの特殊紙製ジャケットとなっています。

Mentre

Negramaro / mentre tutto scorre - special limited edition (2005) Sugar, 3004380. (CD全12曲 DVD全7曲) CD+DVD

Sugar レーベル代表の Caterina Caselli のお気に入りの若手バンド Negramaro の昨年のサンレモ音楽祭後に発売されたセカンド・アルバムに Bologna で行なわれた MTV Day でのライブDVDを追加した限定盤。メンバーは全作詞・作曲を手掛ける Giuliano Sangiorgi (vo, g, p) を中心とした Emanuele Spedicato (g), Ermanno Carlà (b), Andrea Mariano (p, org, synth), Danilo Tasco (ds), Andrea "Pupillo" De Rocco (samp, organetto) の6人編成です。本作ではプロデュースに元 Cervello の Conrrado Rustici を迎え、数曲で演奏にも参加しています。ヘビィなギターのリフに導かれて始まるオープニングの "Nella mia stanza" から適度な湿り気を帯びたヴォーカルを中心とした哀愁漂う歌を聴かせてくれます。続くサンレモ音楽祭参加曲の "Mentre tutto scorre" は粘りけのある歌い回しによるブリティッシュ・ロック色からの影響を感じさせるロック・ナンバーです。ギターの爪弾きに導かれる "Solo 3 min" ではピアノを中心としたバッキングにファルセットを多用して切々と歌い上げる叙情的な曲です。子供達のコーラスが印象的な "I miei robot" ではコミカルなパートとハードな演奏との対比が印象的です。ライブDVDには前出の Corrado Rustici が演奏に参加している "'Solo per te" も収録されているので、彼のファンも必見です。

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