第70号
(30/10/2005)
すっかり秋も深まってまいりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はこの秋のベテラン勢の新譜を中心にお送りします。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Ligabue / nome e
cognome (2005) Warner Music Italia, 5051011030222.
(全11曲)
イタリアを代表するロックン・ローラー Ligabue こと Luciano
Ligabue
のニュー・アルバム。前作がアコースティック・ライブ盤だったため、オリジナルとしては3年振りの新譜となりました。今回も全曲彼自身の作詞・作曲で、演奏でもアコースティック・ギターを担当し、さらに共同プロデュースとしても名を連ねています。虫の音に導かれた
"Intro" で幕を開け、疾走感のある "Il giorno dei giorni"
へと続いていく導入部からダイナミックなロック・サウンドに乗せた低音を生かした渋めのヴォーカルを堪能させてくれます。囁きかけるように始まる
"L'amore conta"
は訴えかけるような歌声が印象的なロック・バラードとなっています。乗りのいいロック・ナンバーの
"Le donne lo sanno"
は弾けるようなベースのフレーズに乗せて男性的なヴォーカルが炸裂する佳曲です。口笛に導かれて始まる
"Vivere a orecchio"
でもハードなギターを中心とした畳み掛けるような演奏に乗せて力強い歌声を堪能できます。ラストはしっとりとした歌を聴かせるロック・バラード
"Sono qui per l'amore"
で締めくくっています。全体的に男気溢れる骨太のロック・サウンドに仕上がっており、ライブを意識したダイナミックな音作りが印象的です。
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Premiata Forneria
Marconi (PFM) / Dracula - Opera Rock (2005) MusizA,
82876723062. (全11曲)
CD-Text
イタリアン・ロックのベテラン・バンド PFM こと Premiata
Forneria Marconi
のオリジナルとしては5年振りとなるニュー・アルバム。前2作が共にライブ盤だったために本当に久しぶりのオリジナル・アルバムですが、本作は来年ローマで上演される予定のロック・オペラのサウンド・トラックとなっています。とは言ってもロック・オペラのため
Vincenzo Incenzo
のペンによるオリジナル・ストーリーに沿って展開される PFM
史上初のトータル・コンセプト・アルバムといった趣が強い作品に仕上がっています。Mussida
のアコースティック・ギターの爪弾きと Premoli
のピアノに導かれるインスト・ナンバーの "Ouverture"
からテクニカル・シンフォニック・ジャズ・ロックの様相を呈しており、高度な演奏と美しいメロディの融合が楽しめます。また、大胆に導入されたオーケストラとのスリリングなコラボレーションが堪能できるのもサントラならではと言えるのではないでしょうか。"Il
confine dell'amore"
から始まるヴォーカル・ナンバーでも、各人がパート毎にヴォーカルを繋いでいくというロック・オペラらしい演出が施され、これまでの
PFM
にはないメンバーによるコーラス・ワークも楽しめます。アルバム後半では混声合唱隊も交え、ダイナミックなロック・オペラを展開しています。ところで、ロック・オペラが上演された後にオリジナル・キャスト版やDVDはリリースされるのでしょうか?
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Paola Turci / TRA i
fuochi IN MEZZO AL CIELO_ (2005) On The Road, OTR 16.
(全10曲)
既に15年以上のキャリアを誇るベテラン・カンタウトリーチェ
Paola Turci
のライブ盤を挟んで3年振りとなるオリジナル・ニュー・アルバム。今回もほとんどの曲を共作を含めて彼女自身が手掛けており、共同プロデュースにも名を連ねています。本作では
Max Grazzé が4曲ほどベースでゲスト参加しており、Paola
自身もアコースティック・ギターやパーカッションを演奏しています。ハープの音色のアルペジオに導かれたオープニングの
"Stai qui"
から落ち着きのある彼女のヴォーカルを包み込むような幻想的な雰囲気が全体を支配しており、続く
"Come eravamo"
でもリバーブのかかったピアノの調べが囁きかけるような歌声を引き立てて幽玄な空間を演出しています。ベースとピアノによるリズムが印象的な
"Quasi settembre"
では内省的なロック・サウンドを聴かせてくれます。弦楽四重奏を加えた
"Lasciami credere"
では叙情的なメロディに乗せた彼女の染み入るようなヴォーカルが哀愁を感じさせます。アルバム・ラストはフランスの
Leo Ferré のカバー曲のイタリア語ヴァージョン "Tu non dici
mai niente"
で、ピアノと弦楽四重奏をバックに囁きかけるような色香を感じさせるヴォーカルを披露しています。この後、2分ほどの無音部分に続き英詞によるシークレット・トラックが収録されています。
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Stadio / L'AMORE
VOLUBILE (2005) EMI/Capitol, 0946 333506 2 5.
(全12曲) CCCD
Lucio Dalla
のバック・バンドからそのキャリアをスタートしたベテラン・ロック・バンド
Stadio
のベスト盤を挟んで3年振りとなるオリジナル・ニュー・アルバム。メンバーは不動の
Gaetano Curreri (vo, cho), Giovanni Pezzoli (ds), Andrea
Fornili (g, key), Roberto Drovandi (b) の4名で、前作同様
Gaetano はヴォーカルに専念し、Andrea
がキーボードを兼任しています。今回はいつもよりも哀愁漂う叙情的な楽曲が多く収録されています。小気味のいいリズムに乗せた安定感のある堅実な演奏をバックに
Gaetano のしゃがれ声のヴォーカルが歌い上げる Stadio
らしさ全開の楽曲 "Buona sorte" で幕を開けます。続く "Mi vuoi
ancora"
は得意のしっとりとしたバラードで、ストリングスをバックに哀愁を感じさせるメロディを切々と歌い上げています。軽快なリズムを刻むギターの音色に乗せた
"Mercoledì"
では憂いを含んだヴォーカルによる切なくなるようなメロディが印象的です。"Fine
di un'estate"
では哀愁漂うメロディを紡ぎ出すヴォーカルを包み込むようなストリングスが去り行く夏を思う気持ちを演出しています。アルバム・ラストの
"Senza parrucche"
はピアノとトランペットをメインとした叙情的なメロディを持ったインスト・ナンバーで、アルバムを消え入るような哀愁で締めくくっています。
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Dottor Livingstone /
L'Assenza (2005) Dottor Livingstone, DRV001.
(全11曲)
1999年にデビュー・アルバムをリリースした Dottor
Livingstone
のサード・アルバム。2000年にリリース予定だったセカンド・アルバム
"Tredinotte"
が完成したもののお蔵入りとなってしまったため、事実上のセカンド・アルバムと言っていいでしょう。前作までは6人編成のバンド形態だったものの、今作では3名が脱退して
Anna Basso (vo), Fabrizio "Cit" Chiapello (g, program),
Andrea Bovo (key, program)
の3人のプロジェクトとなっています。オープニングのタイトル曲
"L'assenza" はキュートな Anna
のヴォーカルと浮遊感のあるミステリアスなアレンジとの対比が印象的です。バイオリンとチェロを導入した
"Mai più"
ではアコースティック楽器とエレクトロニクスが溶け合ったサウンドに乗せて
Anna のアンニュイな歌声を楽しむことができます。"Tutto è
relativo"
ではシタールを使ってエキゾチックな雰囲気を演出しています。アルバム・ラストはタイトル曲の別バージョン
"L'assenza II"
で、エレクトロニクスと艶やかなストリングスが融合した落ち着きのあるアレンジに乗せてしっとりとしたヴォーカルを披露しています。以前の作風と較べると音響系のサウンドへと大きくシフトしているのが感じられます。パッケージは
Anna
のセクシーなイメージ・フォトが掲載されたブックレットを綴じ込んだデジパック仕様となっています。
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