Musicadentro

第68号 (08/05/2005)

皆さん、今年のゴールデン・ウィークはおおむね天気も良好でしたが、いかがお過ごしだったでしょうか?今回は今年のサンレモ音楽祭関連のアルバムを中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Parole

Umberto Tozzi / Le Parole (2005) Atlantic, 5050467778726. (全12曲)

今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むベテラン・カンタウトーレ Umberto Tozzi のベスト盤を挟んで5年振りとなるオリジナル・ニュー・アルバム。プロデュースは彼自身が、アレンジは彼とキーボードも担当する Greg Mathieson が手掛けています。オープニングのサンレモ音楽祭参加曲 "Le parole" はアルバム・バージョンで収録され、しっとりとしたピアノの調べに乗せた叙情的なバラードとなっています。続く "Anch'io in paradiso" は彼の得意なパワフルで弾けるようなポップ感覚が全面に出た曲で、少ししゃがれ気味の力強い歌声を堪能できます。ベースが唸りを上げる "Schiuma" はロック色が強い曲で、畳み掛けるようなブラス・セクションとの絡みも最高です。"Amandoci" では絞り出すように歌い上げるヴォーカルとゆったりとしたバックの演奏が幻想的な雰囲気を醸し出しています。叙情的なピアノの調べで始まる "Sopra l'oceano" では軽快なリズムに乗せて歌われるダイナミックなヴォーカルが印象的です。包み込むようなストリングスをバックに切々と歌われる "Come in amore ci si fa male" ではドラマティックで胸を締めつけるような歌声を聴くことができます。アルバム・ラストはピアノによる美しいインスト曲 "Barbarella" で締めくくられています。

Studio

Le Orme / Studio Collection 1970-1980 (2005) Universal, 9871007. (全37曲)

'60年代後半から活動を続けるベテラン・バンド Le Orme の Philips 時代を総括する2枚組ベスト・アルバム。最新デジタル・リマスターによりクリアな音質で彼らの名曲を聴くことが出来ます。1枚目は'60年代のビート・グループからキーボード・トリオに転身したいわゆるプログレ色の強い時期で、Philips での初アルバム "Collage" 発売以前のアルバム未収シングル曲 "Il profumo delle viole" "I ricordi più belli" が収録されています。その初期のシングル曲2曲はオルガンが唸りを上げるアート・ロック色の強い曲で、たおやかな Aldo Tagliapietra のヴォーカルとバタバタとせわしないドラムの対比が印象的です。その他、アルバム "Collage" "Uomo di pezza" "Felona e Sorona" "Contrappunti" から3〜5曲ずつ選曲されており、キーボード・トリオらしいクラシカルなフレーズを取り入れた幽玄で幻想的な音世界が楽しめます。2枚目は再びギタリストを加えた編成によるメロディアス・ロックからアコースティック編成でのチェンバー・ロックを演奏した時期のもので、"Sera" "Canzone d'amore" "È finita una stagione" のアルバム未収シングル曲3曲が収録されています。キーボード・トリオ編成での最後のシングル曲 "Sera" はきらびやかな音色のキーボードをバックに Aldo の軽快な歌声が響き渡るリズミカルな曲になっています。4人編成でのシングル曲 "Canzone d'amore" "È finita una stagione" の2曲もギターとキーボードのアンサンブルを中心とした幾分ポップで愛らしいメロディが印象的な曲に仕上がっています。その他、アルバム "Smogmagica" "Verità Nascoste" "Storia o leggenda" "Florian" " Piccola rapsodia dell'ape" から各3曲ずつ収録され、愛くるしいメロディが全面に出た時期の歌心溢れる Orme 節を楽しむことができます。

Bastardo

Marcella Bella / Uomo Bastardo (2005) Nuova Gente, 3006949. (全9曲)

ベテラン女性シンガー Marcella Bella の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む3年振りとなるニュー・アルバム。プロデュースとアレンジは大半の曲も手掛けている実兄 Gianni Bella が担当しています。1曲目のサンレモ音楽祭参加曲 "Uomo bastardo" は艶やかなストリングスを従えたスケール感のあるバラードで、表現力豊かでドラマティックな彼女の歌声を堪能できます。中低音を生かしたピアノの伴奏に導かれた "Medusa" はロック色の強い曲で、'70年代を彷彿とさせるパンチの効いた迫力のあるヴォーカルが印象的です。叙情的なピアノで始まる "Se io se lei" では切々と訴えかけるようなヴォーカルが印象的で、大人の女性の魅力が全開しているダイナミックな曲となっています。"Tempo mio" ではセクシーさを強調した少しハスキーな歌声で、リズミカルな曲を歌い上げています。静かに始まり徐々に盛りあがっていく "La regina del silenzio" では囁きかけるような歌い出しから次第に力強く歌い上げていくドラマティックなヴォーカルが印象的です。アルバム・ラストは定番の Gianni Bella とのデュエット曲 "Ama la vita" で、スケールの大きい曲を息のあった2人のヴォーカルでドラマティックに歌い上げています。

Sorrenti

Alan Sorrenti / Alan Sorrenti (1974) EMI, 7243 8 60268 2 8. (全7曲) [CCCD]

孤高のヴォーカリスト Alan Sorrenti のサード・アルバムのCD化再発盤 (リリースは2005年)。前回は Mellow Records 経由のCD化だったので、オリジナル・レーベルからは初の再発盤 (CCCDではありますが) となります。前2作で見られた大作指向は影を潜め、コンパクトな佳曲が並んでいます。この後、徐々にAOR路線を歩んでいくことから、サイケデリックな雰囲気を残した最後のアルバムとなっています。オープニングの "Un viso d'inverno" から浮遊感の漂うアシッド感覚たっぷりの幽玄な音世界が構築され、液体が絡みつくような独特の雰囲気を湛えたヴォーカルが自由奔放に飛び交います。パーカッションが幻想的に響く "Dicitencello vuje" ではファルセットを多用したヴォーカルでサイケデリックなメロディを歌い上げます。"Poco più piano" ではヴォーカル・スタイルは破天荒のままですが、後のAOR路線を予感させる軽快なメロディを聴くことができます。ある意味過渡期的な作品ではありますが、彼のプログレ期と今を繋ぐ音楽性を併せ持つ唯一の作品として貴重だと思います。デジタル・リマスターにより音質が向上していますが、CCCD化によりその効果が半減している点が非常に残念です。

Colpisci

Marina Rei / Colpisci (2005) Perenne, 3006943. (全10曲)

パーカッション奏者でもあるカンタウトリーチェ Marina Rei のサンレモ音楽祭参加曲を含む最新アルバム。プロデュースとアレンジは演奏でも活躍する Daniele Sinigallia (g, b, syn etc) が担当し、共作を含め全曲 Marina 自身のペンによる曲で埋め尽くされています。オープニングを飾る "Sono come tutto" から Susanna Parigi を彷彿とさせるエキゾチックな歌い回しと艶やかなストリングスとのコラボレーションを堪能できます。タイトル曲 "Colpisci" ではリズムを強調したロック色の強いアレンジに彼女の柔らかい歌声がうまくマッチしています。エスニック色のあるエレ・ポップ風の "Song'je" では 24 Grana の Francesco Di Bella" とのデュエットを聴くことができます。サンレモ音楽祭参加曲である "Fammi entrare" はエキゾチックな歌い回しが印象的なドラマティックなバラードで、幻想的な雰囲気を漂わせています。"Ora che mi guardi da lontano" はエスニック色のあるメロディを囁きかけるように歌い上げることにより呪術的な効果があらわれる不思議な感じの曲です。ラストはギターの爪弾きに乗せて囁きかけるように歌われる "Sapienza" で締めくくられています。

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