第67号
(24/04/2005)
長らくご無沙汰しておりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回は女性ヴォーカル物の近作を中心としてお送りします。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Anna Tatangelo /
Ragazza di Periferia (2005) G&G Productions,
3006945. (全10曲)
若手実力派ヴォーカリスト Anna Tatangelo のレーベルを EMI
から Universal 系へ移籍(
祝!非CCCD化)しての約2年振りとなるセカンド・アルバム。今回はプロデュースを
Gigi D'Alessio と Adoriano Pennino
が担当しており、アレンジも主に Adoriano Pennino
が手掛けています。オープニングの "Quando due si lasciano"
では囁きかけるようなしっとりとしたヴォーカルを聴かせてくれます。ピアノとドラムを中心とした軽快なバッキングに乗せて歌われる
"Dimmi dimmi"
では軽やかな歌声を聴くことが出来ます。今年のサンレモ音楽祭参加曲であるタイトル曲は叙情的でスケール感のあるバラードで、表現力豊かなヴォーカルでダイナミックに歌い上げています。"Pensiero
stupendo"
ではスパニッシュ風味のリズムに乗せてラテン系のセクシーさを加味したヴォーカルを披露しています。"Qualcosa
di te"
ではかわいらしさの残る歌声で胸を締めつけるような切ないメロディを歌い上げています。アルバム・ラストの
"O te o me"
では軽快なギターに乗せて若々しさを全面に出したアップテンポの曲を元気いっぱいに歌っています。未だ10代の彼女ですが、声こそ若いものの圧倒的な歌唱力でイタリアン・ポップスの王道と言うべき作品を堂々と歌い上げており、今後の活躍に期待が高まります。
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Miura / In
Testa (2005) Volume, 0156692VOL. (全12曲)
Timoria のリズム・セクション Diego Galeri (ds) と Illorca
(b, vo) を中心に結成されたオルタナ系ロック・バンド Miura
のデビュー・アルバム。Jack (vo) と Zona や Alligator
で活躍する Killa (g)
を加えた4人編成となっています。プロデュースは Diego と
Illorca で、アレンジは Killa
を加えた3人でやっています。1曲目の "Azzurro acrilico"
から重厚なリズム・セクションとドライブ感のあるギターをバックに
Jack
の力強いヴォーカルが炸裂するダイナミックなロック・サウンドを聴かせてくれます。"Quello
che non cambia" でも低音部を強調したヘヴィーな演奏と Jack と
Illorca
によるヴォーカルのコラボレーションがいい感じを出しています。"Sposo
dell'aria" では Illorca の重厚なベースとバックに Jack
のヴォーカルが冴え渡ります。ドライブ感のあるロック・ナンバー
"Lucidamente" では無表情な低音コーラスと情熱的な Jack
のヴォーカルの対比が印象的です。アルバム・ラストは重厚なリズムをバックにチック音を流し続けるアバンギャルド色のある
"Crim"
で幕を閉じます。あまりイタリア色の強くないバンドですが、時折顔を覗かせる刹那的な美意識を感じさせるメロディが印象に残ります。
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Jenny Sorrenti /
com'è grande Enfermidade (2004) Polosud, PS054.
(全12曲)
元 Saint Just のヴォーカリストだった Jenny Sorrenti
の約3年振りとなる最新ソロアルバム。今回はほとんどの曲が共作を含め彼女自身によるオリジナル曲で構成されています。アコーディオンの調べで始まるオープニングの
"Galiziano-portoghese"
からほのかに香るケルト色を湛えた幽玄な曲調に乗せたドリーミーな歌声を堪能できます。続くトラッドのアレンジものであるタイトル曲
"Com'è grande enfermidade"
ではアシッド・フォーク色の強いアレンジに線の細いヴォーカルが印象的です。ラテン語で歌われる
"Erev shel shoshanim"
は荒涼とした大地を想わせる神話的なイメージを想起させる曲です。"La
pazienza"
は霧がかかったような雰囲気のバッキングに祈りを捧げるようなヴォーカルが印象的な神秘的な曲に仕上がっています。Harris
Alexiou のカバー曲 "Gia ena tango"
ではエキゾチックな雰囲気を漂わせたヴォーカルを聴かせてくれます。全体的にイタリアでは珍しいケルト色のある幻想的な女性ヴォーカル作品として非常に完成度が高いです。パッケージはデジパック仕様で、ブックレットにはオリジナルの歌詞と英語の対訳が掲載されています。
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Nomadi / Corpo
Estraneo (2004) Atlantic, 5050467475625. (全11曲)
現役最古参バンドの一つ Nomadi
のオリジナルとしては約2年振りとなる最新アルバム。メンバーは
Beppe Carletti (key), Cico Falzone (g), Daniele Campani
(ds), Danilo Kakuen Sacco (vo, g), Massimo Vecchi (b &
vo), Sergio Reggioli (per & vln) の6人で、今回は Danilo
もギターを弾いています。軽快なギターで始まるオープニングの
"L'ordine dall'alto" は Massimo
の低音を生かしたヴォーカルが印象的なロック色の強い勢いのある曲となっています。"Oriente"
では Danilo
の伸びのあるヴォーカルによるイタリア語の語感を生かしたなめらかなメロディが印象的です。流れるようなピアノに導かれて始まる
"In piedi"
では囁きかけるようなヴォーカルから一気に盛り上がるドラマティックな展開がイタリアらしさを感じさせます。"Stella
cieca"
はフィドルを思わせる軽快な奏法のバイオリンが印象的なアップテンポのナンバーとなっています。
バイオリンとチェンバロによるバッキングが印象的な "Confesso"
ではバロック的な展開と叙情的なメロディがイタリアのロック・バンドならではの醍醐味を感じさせてくれます。叙情的なピアノとバイオリンに導かれた
"Soldato" ではクラシカルなメロディと Nomadi
らしい哀愁を感じさせるヴォーカルがヨーロッパならではの気品を漂わせています。アルバム・ラストが重厚なベースが大活躍するロック色の強い
"La voce dell'amore"
で締めくくられているのも彼ららしいです。
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Teresa De Sio / A Sud
! A Sud ! (2004) Lucente, LUCE 009. (全13曲)
ナポリの歌姫 Teresa De Sio
の約5年振りとなるニュー・アルバム。プロデュースは彼女自身で手掛けており、アレンジも
Sasà Flauto
が主に担当している中で彼女が5曲手掛けています。オープニングの
"O diavolo s'arrecreia" は Musica Nova 時代からの盟友 Carlo
D'Angio
の手による曲で、トラッド色の強いアクのある歌い回しが彼女の出自を感じさせてくれます。トラッドのアレンジものである
"La montanara"
ではファースト・アルバム当時を思わせるトラッドの歌姫の面目躍如たる奔放なヴォーカルを聴くことが出来ます。"Mamma
napoli"
では南イタリアの陽気な町のにぎわいを思わせる土着的な雰囲気を漂わせています。タイトル曲の
"A sud a sud"
はアコースティック・ギターのカッティングと絡みつくバイオリンが印象的なフォークロック色の強い曲に仕上がっています。アコースティック・ギターの爪弾きに乗せて歌われる
"Addio"
はトラッド色を感じさせる表情豊かなヴォーカルが印象的なバラッドになっています。ゲストの
Raiz とのデュエットも印象的な "Stammo buono"
はバイオリンが活躍する力強いトラッド・ロックに仕上がっています。初回盤はデジパック仕様でしたが、現在では通常のプラケース仕様のものが出回っています。
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