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Le Orme /
L'infinito (2004) Crisler, CCD 3065. (全12曲)
イタリアを代表するベテラン・プログレ・バンド Orme
の3年振りとなるニュー・アルバム。カバー・デザインは前作同様、Paul
Whitehead が担当しています。メンバーは前作と同じく Aldo
Tagliapietra (vo, b, g), Michi Dei Rossi (ds, per) の2人に
Michele Bon (org, key, vo) と Andrea Bassato (p, key, vln)
を加えた4人となっています。今回は Michele Bon
が操るギター・シミュレーター Alien
が大々的にフィーチャーされており、スケールの大きいドラマチックなシンフォニック・ロックを繰り広げています。オープニングの
"Il tuono e la luce"
から壮大なキーボード・オーケストレーションを従えた畳み掛けるような展開に圧倒されます。前作同様、アルバム全体を通してのトータル・コンセプト・アルバムとなっており、弦楽四重奏を導入するなどクラシカルなアプローチもされています。全体的に彼らのサウンドを特徴付けるたおやかなメロディのヴォーカル・ラインに乗った
Aldo
のほのぼのとした歌声とスリリングなインスト・パートの落差が際立っており、Orme
にしか出せない独特の世界観が堪能できます。最近では老いて益々盛んというか作品を追う毎に完成度を増していく姿に脱帽します。
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Susanna Parigi / in
differenze (2004) Zelda Music/Sette ottavi,
SOZLD-S-005004. (全14曲)
かつて Claudio Baglioni や Riccardo Cocciante
のツアーメンバーとして活躍していたカンタウトリーチェ Susanna
Parigi
の約5年振りとなるサード・アルバム。デビュー当時からのつき合いとなる元
Il Volo の Vince Tempera
が本作でもプロデュースを担当しています。全曲共作を含め彼女自身が手掛けており、アレンジも本人が担当しピアノとアコーディオンも自分で演奏するなど多彩な才能を発揮しています。今作では
Bulgarian Simphony Orchestra
を大胆にフィーチャーした曲が多く、エキゾチックさとエレガントさが共存した独特の世界が繰り広げられています。一曲目の
"Opera buffa"
から幾分エキセントリックな独特の歌い回しが全開しており、彼女が弾くアコーディオンの哀愁を帯びた調べと相まって情感溢れる曲になっています。ギターの爪弾きに乗せて切々と訴えかけるように歌う
"Amada"
ではシンプルながらもトラディショナルな雰囲気が漂う深みのあるヴォーカルを聴かせてくれます。デビュー作でもつき合いのあった
Pat Metheny 作曲の "Di spazio perfetto"
ではピアノの弾き語りによる囁きかけるような歌声を披露しています。早くも今年の女性ヴォーカル物のナンバーワンと言ってもいい突き抜けた完成度を誇る作品になっています。
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Metamorfosi /
Paradiso (2004) Progressivamente, GMP 003.
(全14曲)
'70年代のイタリアン・ロック全盛期に2枚のアルバムを残したシンフォニック・ロック・バンド
Metamorfosi
の約30年振りとなる復活作。メンバーはオリジナル・メンバーでサウンドの核になっていた
Jimmy Spitaleri (vo) と Enrico Olivieri (key) を中心に
Leonardo Gallucci (b, classic-g), Fabio Moresco (ds)
を加えた4人編成となっています。ダンテの「神曲」の地獄編を題材にとった前作
"Inferno"
同様、「神曲」の天国編をテーマにしたトータル・コンセプト・アルバムで、当時サード・アルバム用に用意してあったものを中心とした曲たちが30年の時を経て見事に甦っています。彼らのサウンドを特徴付けるきらびやかな音色のキーボード群による万華鏡のようなめくるめくシンフォニック・ワールドは健在で、今回はピアノをメインにした引きのパートが増えたために静と動の対比が一層引き立ち、ドラマチックな完成度の高い作品に仕上がっています。Jimmy
Spitaleri
のヴォーカルも年齢を感じさせないスケールの大きいダイナミックな歌声を聴かせてくれ、全盛期と何の遜色もないイケイケ感が全開のイタリアン・ロックの醍醐味が味わえます。余談ですが、彼らは来年には残りの煉獄編をテーマにした作品に取りかかる予定だそうです。
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Francesco Renga /
Camere con vista (2004) Mercury, 9817600.
(全12曲)
元 Timoria の人気カンタウトーレ Francesco Renga
の2年振りとなるサード・アルバム。全曲が彼自身による作詞と
Luca Chiaravalli
との共作による作曲となっており、アレンジはアルバム全体のキーボードを演奏し、彼自身と共に共同プロデュースも務める
Umberto Iervolino
が担当しています。オープニングのフォーク・ロック調の
"ComeTe"
ではギターのストロークに乗せて伸びのあるダイナミックなヴォーカルを聴かせてくれます。シングル・ヒットした
"Ci Sarai"
はギターの爪弾きをバックに切々と歌い上げる哀愁漂う佳曲です。"La
sorpresa (Un raggio di sole)"
ではイタリアの陽光を感じさせる開放的なメロディに乗せたスケールの大きいヴォーカルを堪能できます。軽快でロック色の強い
"Come piace a me"
ではファルセットを織り交ぜたスピード感溢れる歌声を聴かせてくれ、ブギー調の"Meravigliosa
(Laluna)
ではノリノリのヴォーカルを堪能できます。ピアノをバックにした叙情的なラストの
"Solo"
の後には約6分間の静寂の後に4分半程の幾分アバンギャルドなシークレット・トラックが収録されています。
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RAF / Ouch
(2004) CGD east west, 5050467242722. (全11曲)
Rock系カンタウトーレ RAF こと Raffaelle Riefoli
の最新アルバム。ほとんどの曲が共作を含め彼自身が手掛けており、また全曲でギターやシンセサイザーを演奏するなど気合いの入った作品になっています。シングル・ヒットしたオープニングの
"In tutti i miei giorni"
は端正なピアノに乗せて訴えかけるようなヴォーカルを聴かせる叙情的なナンバーとなっています。続く
"Superstiti"
ではバンド・サウンドをバックにロック色の濃い力強い歌声を聴かせてくれます。"Milioni
di cose che non ti ho detto" では Hip/Hop
の影響を受けたリズミカルな歌い回しが印象的です。雨だれのようなピアノに導かれて始まる
"Il senso delle cose"
ではメランコリックなメロディを憂いを含んだヴォーカルで歌い上げています。語りかけるようなヴォーカルで始まる
"Il prestigiatore"
では爽やかに歌い上げるサビのメロディがイタリアの青い空を想い起こさせます。ラストは
"In tutti i miei giorni"
のエレクトリック・バージョンで、オリジナルに較べてよりリズムを強調したダンサブルなアレンジが施された別の魅力を持った曲に仕上がっています。
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