Musicadentro

第63号 (21/03/2004)

約2ヶ月振りの更新となってしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今年のサンレモ音楽祭は参加者が少なかったためか、日本では今ひとつ盛り上がらなかったようですね。今回はようやくセカンド・アルバムが発売された Valeria Rossi をはじめ女性ヴォーカルものを中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Osservi

Valeria Rossi / Osservi L'aria (2004) Ariola, 82876548402. (全14曲) [CCCD]

昨年6月末の予定が半年以上も発売がずれ込んだ Valeria Rossi の約2年半振りとなるセカンド・アルバム。今回は大部分の曲が詞・曲とも自作曲で占められており、アイドル然としていた前作に較べ歌唱力が格段に向上しており、表現力も増しているために前作以上にアーティスト色が強い作品に仕上がっています。オープニングの "Il tempo utile" から少し鼻にかかったヴォーカルでアップテンポの曲を軽快に歌いこなしています。アンニュイな雰囲気のある "Io sono contento" では語尾を引きずるようなセクシーな歌い回しでありながらも爽やかな印象を残すヴォーカルを堪能できます。昨年6月にリリースされ、先行シングルとなるはずだった "Luna di lana" はギターの爪弾きとパーカッションが軽快なリズムを紡ぎ出す曲で、ラテン調のリズムに絡みつくような表現力豊かなヴォーカルが印象的です。ポエトリー・リーディングの "Cecilia" を挟んで始まる "Alfonsina" はブラス・セクションが活躍するダンサブルな曲で、情熱的なヴォーカルが楽しめます。アルバム先行シングルとなった "Ti dirò" は端正なピアノに導かれたしっとりとしたバラードで、前作に較べ格段に向上した歌唱力と表現力を存分に見せつける感動的な作品に仕上がっています。大人の女性の魅力を感じさせるセクシーな歌声を聴かせる "Fiocco" では包み込むようなストリングスときらびやかなピアノの調べが曲を盛り上げています。ラストの "Preambolo" は長い語りと短い歌のフレーズと静寂が交互に現れる変わった曲構成となっています。

L'equilibrio

Madreblu / L'equilibrio (2004) Ishtar, ISH 022. (全9曲)

Rafaella Destefano と Gino Marcelli による男女デュオ Madreblu の約5年振りとなる最新アルバム。詞は Rafaella が 曲は Gino と Rafaella が担当しています。Rafaella の浮遊感漂うヴォーカルを中心としたシティ派ポップス路線は継承されており、オープニングの "Treni d'inverno" から旅情溢れる曲を清涼感のあるヴォーカルが歌い上げています。幾分リズムが強調された "Buon compleanno" では多重録音された Rafaella のヴォーカルが厚みのあるハーモニーを奏でています。エレクトリックな信号音がリズムを刻む "Spara" ではキーボード・オーケストレーションをバックにゆったりと時が流れるようなたおやかなメロディを歌い上げています。アコースティック・ギターの爪弾きに導かれる "Carmilla" では囁きかけるような歌い出しに始まる多彩なヴォーカル・スタイルを堪能できます。端正なピアノをバックにした "Sono io" ではシンプルなアレンジながら深く染み入るような情感溢れるヴォーカルが印象的です。ラストの "La cura migliore" は切々と訴えかけるようなバラードで、Rafaella の清涼感のある歌声がさわやかな哀愁を醸し出しています。また、この曲の後に3分ほどの静寂の後、リズミカルなベース音が印象的なシークレット・トラックが収録されています。パッケージは立体的な印刷が施された3面開きのデジパック仕様となっています。

Portoghese

Patrizia Laquidara / indirizzo portoghese (2003) Genius, 5949592. (全13曲) [CCCD]

昨年のサンレモ音楽祭の新人部門に参加した新進女性カンタウトリーチェ Patrizia Laquidara のファースト・アルバム。大部分の曲を共作を含め詞または曲を自作しています。流行のR&B色は全くなく、むしろ洗練されているもののトラッドからの影響が強く感じられます。特にかすかにコブシを利かせた歌い回しは Teresa De Sio を想起させます。オープニングの "Mielato" では効果的にバイオリンを配し、トラッドの香りがほのかに漂う歌い回しのヴォーカルが印象的です。タイトル曲の "Indirizzo portoghese" ではクラシック・ギターの響きとトラッド調のコーラスがエキゾチックな雰囲気を醸し出しています。"Sciroppo di mirtilli" は Teresa De Sio を想わせるコンテンポラリー・トラッド調の曲で、プリミティブなコーラスが印象的です。"Kanzi" ではアンニュイなヴォーカルとトラッド色の強いコーラスとの対比がおもしろい曲です。Mario Venuti とのデュエットを聴かせる "Per causa d'amore" では大人の男女によるしっとりとした掛合いを聴くことができます。ボサノヴァ調のリズムに乗せた "Uira puro" ではコブシを利かせたヴォーカルに絡みつくようなアコーディオンが大活躍し、ノスタルジックな雰囲気の曲に仕上がっています。サンレモ参加曲の "Lividi e fiori" では包み込むようなストリングスを従えてしっとりと歌い上げ、ほのかにトラッドの香り漂うコーラスが曲を盛り上げています。

Samurai

Verdena / Il suicidio dei Samurai (2004) Black Out, 9815944. (全11曲)

ドラマーの病気で制作が遅れていた Bergamo 出身のハード・ロック・バンド Verdena のサード・アルバム。メンバーは不動の3人 Alberto (g, vo), Luca (ds), Roberta (b) に、Fidel (key) という専任のキーボーディストが加わることにより音の厚みが一段と増しています。重厚なリズム・セクションに乗せてハード・エッジなギターが暴れ回るオープニングの "Logorrea (esperti all'opera)" から新加入の Fidel の奏でるノイジーなキーボードが唸りを上げてその存在感をアピールしています。"Luna" では、Alberto の哀感のあるヴォーカルが印象的なスピード感溢れるハード・ロックに仕上がっています。"Mina" はヘビーな演奏をバックに訴えかけるようなヴォーカルが哀愁を誘うロック・バラードになっています。重低音を響かせるリズム・セクションに乗せて幾分なげやりなヴォーカルを聴かせる "Balanite" はラストでは Alberto の珍しいシャウトとノイジーなギター音で締めくくられています。畳み掛けるドラムに乗せて金属質のギターが唸りを上げる "17 tir nel cortile" では終盤で歪んだ音色のメロトロンが響き渡ります。ラストのタイトル曲 "Il suicidio del Samurai" では退廃的な音色を吐き続けるギターによるヘビーなフレーズが印象的な終末感漂う曲に仕上がっています。

Quintessenza

Il Castello di Atlante / Quintessenza (2004) Electromantic Music, ART112. (全6曲)

'70年代から活動を続けるシンフォニック・ロック・バンド Il Castello di Atlante の約4年振りとなるニュー・アルバム。メンバーは前作に引き続き Aldo Bergamini (g, vo), Massimo Di Lauro (vln), Paolo Ferrarotti (ds, vo), Roberto Giordano (Key, p, vo) の4人に加え、ベースが Dino Fiore から ヴォーカルも担当する Franco Fava に交代したことによりコーラスの厚みが増しています。オープニングの12分を越える大曲 "Non puoi fingere" からいきなり畳み掛けるようなギター・キーボード・バイオリンによるアンサンブルが冴え渡り、続くヴォーカル・パートではピアノをバックに叙情的に絡んでくるバイオリンのオブリガートが印象的です。バンド・スタイルの典型のような "Il marinen forgia il sampo" では細かい曲展開によりヴォーカル・パートとインスト・パートを交互に配し、分厚いコーラスと艶やかな音色のバイオリン、叙情的なフレーズを紡ぎ出すギターが曲を盛り上げています。ピアノとギターの爪弾きに導かれた小品 "Il tempo venire" は囁きかけるようなヴォーカルの後にキーボードによるシンフォニック・アンサンブルで締めくくられています。続くインスト曲 "Cavalcando tra le nuvole" では軽快なリズムに乗せてバイオリンが華麗に舞い、ジャズ・ロック的なアンサンブルを聴かせてくれます。15分近い大作 "Questo destino" では3つのリード楽器によるテクニカルなアンサンブルと叙情的なヴォーカル・パートをバランス良く配し、バンドのこれまでの活動を総決算するかのような重厚なシンフォニック・ワールドを繰り広げています。

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