第59号
(23/09/2003)
遅れてきた残暑から一気に秋が訪れたかのように気温が下がってしまいましたが、皆さん体調はいかがでしょうか?今回もまた間隔が空いてしまいましたが、今後はもう少し頻繁に更新したいと思っています。
アルバム・カバー
|
アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
|
|
Nomadi / 40
(2003) CGD east west, 5050466579621. (全34曲)
ベテラン・ロック・バンド Nomadi
の結成40周年を記念したベスト・アルバム。2曲の新曲を含み、旧曲も現在のメンバーによってリアレンジされた再録による34曲入りの2枚組で、代表曲を概ね網羅したバンドの歴史を俯瞰できる構成になっています。アコーディオンとバイオリンの掛合いが印象的な
"Per fare un uomo"
は地中海トラッド色が強いアレンジによりシンプルながら力強さが増しています。最新作からの
"L'angelo caduto"
ではオリジナルではゲストのフルートが奏でていた美しいオブリガートをアコースティック・ギターの爪弾きに置き換え、よりシンプルにメロディを引き立たせる仕上がりになっています。定番の
"Io vagabondo"
は包み込みようなストリングスをフィーチャーしたよりしっとりしたアレンジが施され、染み入るような哀愁が漂っています。新曲でシングルにもなった
"Io voglio vivere"
は随所にバイオリンが活躍する、現在の編成を生かしたポップでありながら哀愁を感じさせる佳曲となっています。どの時期の曲も良いメロディを巧みなアレンジと堅実な演奏で聴かせるというバンドの基本姿勢が感じられ、好感が持てます。初回生産分はフォールドオープンタイプの3面開きのスリット・イン・タイプのCDケースサイズの紙ジャケ仕様となっています。
|
|
Morgan / Canzoni
dell'appartamento (2003) Columbia, COL 511904 2.
(全12曲)
Battiato 一派として知られる Bluvertigo の中心人物 Morgan
こと Marco Castoldi のファースト・ソロ・アルバム。Bluvertigo
本体はアバンギャルド色のあるエレクトロ・ポップ色が強いのですが、このソロ・アルバムでは意外にもアバンギャルド色は控え目で哀愁漂うポップスを披露しています。最もアレンジは良く聴くとかなり手の込んだことをしているのですが。プロデュースは彼自身と
Roberto Colombo で、Roberto Colombo
はオルガンやエレピで演奏にも参加しています。オープニングの
"Altrove"
では彼自身が弾くベースのリフに乗せて歌われる情感豊かなヴォーカルとそれを包み込むようなストリングスが哀感を醸し出しています。ピアノによるリフに導かれる
"Aria"
では多重録音によるコーラスが寂しげな曲調をより引き立てています。囁くようなヴォーカルが印象的な
"Non arrossire"
は古き良きヨーロッパを感じさせる魅力的な小品となっています。Roger
Waters の曲のカバー "Se (if)"
はまるで遊園地にいるかのような楽しげなアレンジが施されています。ラストは消え入るような哀愁が漂う小品
"Canzone per Natale" で締めくくられています。
|
|
Alan Sorrenti /
Sottacqua (2003) Multi Kulti Media, MKM 512188 2.
(全14曲)
初期のサイケデリックな作風でプログレ・ファンにも知られるベテラン・カンタウトーレ
Alan Sorrenti
の最新アルバム。音の方は'80年代以降のイタリアンAOR路線の延長にある洗練された軽やかな作風となっています。1曲目の
"Paradiso beach"
からアップテンポな曲調に乗せたファルセットを生かした軽快なヴォーカルを堪能できます。タイトル曲の
"Sottacqua"
ではギターの爪弾きをバックに囁くような歌声が哀愁のあるメロディを紡ぎだしています。タイトルもズバリそのものの
"Mediterraneo"
は地中海の情景を想起させる哀感の漂うスロー・バラードで、情感豊かなヴォーカルと消え入るようなストリングスの調べが印象的です。アルバム・ラストは
Van Morrison の "Crazy love"
のカバーで、シンプルなアレンジに乗せて切々と歌い上げています。初期の作風に固執する人には相容れないものがあるとは思いますが、適度に地中海色を織り込んだ良質なイタリア産AORとしては高水準な作品に仕上がっています。
|
|
Arturo Stalteri /
Rings - il Decimo Anello (2003) Materiali Sonori,
MASO CD 90132. (全15曲)
元 Pierrot Lunaire
のキーボード奏者として知られるコンポーザー兼ピアニストの
Arturo Stalteri
の最新ソロ・アルバムで、有名な「指輪物語」をモチーフにしたトータル・アルバムとなっています。彼の奏でるピアノを中心にして、Yasue
Ito (vln), Laura Pierazzuoli (cello), Stefano Pogelli
(hurdy-gurdy, crumhorn, fl, etc)
からなるバックと共に室内楽的な端正さを持った幻想的な演奏が繰り広げられています。また、元
Saint Just の Jenny Sorrenti
が作詞とヴォーカルで参加しており、"Gandalf the white"
では英詞による神秘的な歌声を聴かせてくれます。10分を越える大作
"Le utlime luci di Brea" では彼のファースト・ソロ・アルバム
"André sulla luna"
を想起させるようなピアノのフレーズが飛び出してきて楽しませてくれます。"Verso
Lorien" では Jenny
の美声ヴォーカルが神聖な響きさえ湛えており、ピアノとバイオリンを中心にした静謐な演奏が厳かな曲調を盛り上げています。ところで、ラストの小品
"Memories of a hobbit" は14曲目の "The grey havens' lullaby"
と続いており、インデックス表記では14曲となっています。また、マルチメディア・トラックが3曲収録されており、本編には入っていない
"Dolce vento, folle vento (Il canto di Legolas)"
を聴くことができます。
|
|
Argentovivo / La
normalità é una forma di pazzia (2003) Wea,
5050466462725. (全10曲)
Valentina Bertani, Nicol Bertani, Giulia Casali
からなるハイ・ティーン3人組によるボーカル・ユニット
Argentovivo
のデビュー・アルバム。巷ではイタリアのタトゥー扱いされていて、ブックレット内にもランジェリー姿のフォトが掲載されているなどスキャンダルな話題性もあるのですが、大部分の曲に
Bertani
姉妹が共作で名を連ねており、単なるアイドル・グループではないようです。シングルにもなったオープニングの
"Mela probita"
から3人の息のあったコーラス・ハーモニーが聴け、既に結成5年以上というキャリアを見せつける完成度を感じさせます。"Supermarket"
ではグランジ風のバックに軽やかなコーラスを主体にしたヴォーカルを聴かせてくれます。"Dolce
amaro"
ではダンサブルなビートに乗せて力強いヴォーカル・ハーモニーを聴くことができます。"Carpe
diem"
は切なさを全面に押し出したしっとりとしたバラードで、表現の幅の広さを感じさせてくれます。巧みなコーラスワークを聴かせるラストのバラード
"Ad occhi chiusi" の後、しばしの無音部分に続いて
"Supermarket"
のオルタナティブ・バージョンとでも言うべき老婆によるスペシャル・ヴォーカル・バージョンが収録されています。
|
ご意見ご感想などあれば以下にご連絡ください。
ただし、メール・アドレスは画像になっていますのでご了承下さい。
音楽の部屋に戻る
バックナンバー・ホームに戻る