Musicadentro

第56号 (11/05/2003)

永らくご無沙汰してしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?遅ればせながら今年のサンレモ音楽祭参加アーティストの作品を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Fortuna

Luca Barbarossa / Fortuna (2003) Columbia, COL 511057 2. (全12曲)

既にベテランの域に達したカンタウトーレ Luca Barbarossa の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むニュー・アルバム。オリジナル・アルバムとしては前作からベスト盤を挟み約4年振りの新譜となります。オープニングの "Sai dove trovarmi" は彼自身の弾くピアノをバックに、囁きかけるように始まり徐々に盛りあがっていく優しげなヴォーカルが印象的な曲です。続くサンレモ音楽祭参加曲 "Fortuna" は彼の得意な軽快なリズムを刻む曲で、つっかけるようなギターのカッティングと絡みつくようなバイオリンが曲にアクセントを付けている佳曲ですが、明らかにサンレモ音楽祭向きの曲ではないためか成績は振るいませんでした。"Non era molto tempo fa" ではイントロから活躍するフリューゲルホルンが彼の穏やかなヴォーカルを丁寧にサポートし、ムード溢れる仕上がりとなっています。"L'amore per me" はレゲエのリズムに乗せた南国情緒溢れる曲で、のどかな曲調に彼の軽やかな歌声がマッチしています。"Luce" はピアノを中心とした控えめな演奏をバックに情感豊かに歌い上げるドラマティックな曲で、彼の叙情的な側面をうまく引き出しています。ラストの "Tacabanda" ではアコーディオンとバイオリンによるノスタルジックなバッキングを受けて切々と訴えかけるようなヴォーカルを聴かせてくれます。久々のオリジナル・アルバムということもあってか、なかなかの力作となっています。

Oceano

Lisa / Oceano (2003) Carosello, CARSH 071-2. (全15曲)

久々に活動を再開した Lisa こと Annalisa Panetta の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む約4年振りとなるオリジナル・アルバム。囁きかけるように始まるサンレモ音楽祭参加曲 "Oceano" はかつてのような叙情的な作風ではないものの彼女の歌唱力を生かしたダイナミックなヴォーカルが印象的な佳曲です。アコースティック・ギターの響きに乗せてしっとりと歌われる "Dolce carezza" は外国曲のカバーのようで、彼女がイタリア語詞を書いています。"Vivre ici" では包み込むようなストリングスをバックに切々と訴えかけるようなフランス語によるヴォーカルが印象的です。こちらもカバー曲の "Adesso" は初期の Mariah Carey のようなスケールの大きい曲で、情感豊かな巧みなヴォーカルを聴かせてくれます。"Non so più chi sei" ではアコースティック・ギターを中心としたポップな曲に乗せて気持ちよさそうに歌い上げています。"Saro' come tu vuoi" は幻想的なアレンジのバラードで、切なさを感じさせるヴォーカルが絶品です。"Da dove sei" では沈み込むような重たいリズムに乗せて語りかけるように歌う様が印象的です。以前のような得意のしっとりとしたバラードばかりではなく、流行のR&B調のポップな曲が多数含まれるなど意欲的な作品に仕上がっています。久々の作品にもかかわらず、ブランクを感じさせない圧倒的な歌唱力を堪能できるのが嬉しいです。

Giorno

Cristiano De André / un giorno nuovo (2003) edel, ERE144572. (全12曲)

故 Fabrizio De André の息子で自身もカンタウトーレの Cristiano De André の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むニュー・アルバム。オープニングのサンレモ音楽祭参加のタイトル曲を除いて新旧取り混ぜたベスト選曲によるスタジオライブ録音となっています。その "Un giorno nuovo" は控えめなストリングスがバックを盛り上げるフォークロック調の曲で、中間部での彼自身の弾くエレクトリック・バイオリンが曲にアクセントを付けています。残りのスタジオライブのメンバーは Mario Punzi (ds), Roberto Melone (b, cho), Giovanni Imparato (per, cho), Rocco Zifarelli (g), Carlo Giardina (key, p) の5人に加え、彼自身もギターとバイオリンを弾いています。"Nel bene e nel male" は父 Fabrizio を思わせる語りかけるような唱法のフォーク調の曲で、さすがに父親の域には達していないものの渋めの歌声が印象的です。前作収録の "Lady barcollando" はオリジナルと較べるとシンプルなアレンジとなっていますが、それが逆に言葉数の多いヴォーカルを際立たせています。Giovanni Imparato による秘教的なヴォーカルで始まる "Buona speranza" はオリジナルよりもテンポを落としてルーズな感じが出ています。全体的にスタジオ・バージョンと較べるとシンプルな作りとなっていますが、アコースティック楽器の響きを大切にした深みのある作品に仕上がっています。

Musical

Pooh / Pinocchio - Il Grande Musical (2003) CGD east west, 5050466435422. (全22曲)

Pooh が音楽を担当したオリジナル・ミュージカル "Pinocchio" のサウンド・トラックのオリジナル・キャスト版で2 枚組となっています。Pooh は楽曲提供と音楽監修のみとなっていますが、前作 "Pinocchio" には収録されていない11曲が含まれたミュージカルのオリジナル・サウンド・トラックとしての完全版となっています。Pooh によるオリジナル・バージョンとは異なり、キャストが各パート毎に歌い分けており、随所に台詞が挿入されているなど舞台での模様が疑似体験できる作りになっています。舞台の進行に沿った曲順となっているので、曲の配列がオリジナルの "Pinocchio" とはかなり異なっています。オリジナルでは Roby の独唱だった壮大なバラード "Figli" も男女のヴォーカルによる掛合いになっていて、かなり印象が異なる仕上がりとなっています。"Un vero amico" では唯一 Dodiがアコースティック・ギターを弾いています。アルバム・ラストは Pooh のメンバー全員と Negrini の共作による6分半に及ぶ壮大なバラード "È soltanto amore" で締めくくられています。こちらが本来の形ではあるものの、同じ素材を使って完全なオリジナル作品として仕上げた前作 "Pinocchio" の完成度の高さを見るにつけ、Pooh の圧倒的な底力を再認識する事ができます。

Elsa

Elsa Lila / elsa (2003) Ricordi, 82876513122. (全8曲)

今年のサンレモ音楽祭の新人部門に参加した若手女性シンガー Elsa Lila のデビュー・ミニ・アルバム。流行のR&B色を全く感じさせない最近では珍しい正統派ヨーロピアン・ポップス路線の曲で占められています。1曲目の "Soli" から初期の Laura Pausini を想起させるようなドラマティックな曲を情感豊かに歌い上げています。"Le mie ali senza te" ではアコースティック・ギターの爪弾きを中心としたバックに切々と訴えかけるようなヴォーカルが印象的です。きらびやかなピアノの音色に導かれて始まるサンレモ音楽祭参加曲の "Valeria" は叙情的でドラマティックなバラードで、新人とは思えない情感溢れるダイナミックな歌声を聴かせてくれます。"Mi mancherai" では穏やかなピアノをバックに切なさを感じさせる曲をしっとりと歌い上げています。"L'amore che ho" はカナダの歌姫 Celine Dion の世界的なヒット曲 "The power of love" のイタリア語カバー曲で、さすがにオリジナルと較べるとやや小粒な感は否めないものの、水準以上の情感溢れるヴォーカルを聴かせてくれていて彼女のヴォーカリストとしての実力を垣間見ることができます。全体としてプロムラミングではなく生のストリングスを使った方がより完成度が上がったのではないかとの印象があるのと、声質が若干太い点が好みを分けるかと思いますが、今後が楽しみな若手アーティストです。

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