第54号
(29/01/2003)
新年一発目が1月末にずれ込んでしまいましたが、今年もよろしくお願いします。今回は遅まきながら昨年秋の新譜を中心にお送りします。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Eugenio Finardi /
Cinquantanni (2002) edel, 0140512 ERE. (全13曲)
ベテラン・カンタウトーレ Eugenio Finardi
の久々のオリジナル・アルバム。一時期 PFM にも在籍していた
Vittorio Cosma (key)
がプロデュースとアレンジを担当しており、ピアノなどで演奏にも参加しています。一部
元 Pooh の Valerio Negrini や旧友 Alberto Camerini
が詞を提供している他はほぼ全曲彼自身の作詞・作曲となっています。オープニングを飾る
"Scuola"
からたおやかなストリングスに乗って彼の渋味のあるヴォーカルが魅力あるメロディを紡ぎだしています。"Come
un animale"
では落ち着きのある弦楽四重奏をバックに切々と語りかけるように歌われており、ヴォーカリストとしての力量を感じさせてくれます。"Sulla
strada"
は軽快なフォーク・ロック調の曲で、弾むような軽やかなヴォーカルが印象的です。美しいクラシック・ギターの調べに乗せた
"A mio padre"
では囁きかけるようなヴォーカルをサポートするタイ・フルートの音色が印象的な佳曲です。全体的に一聴した印象は地味なのですが、細部まで神経の行き届いた非常に手の込んだ燻し銀のような趣のある作品に仕上がっています。
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Paola Turci / Questa
parte di mondo (2002) NUN Entertainment, NUN 0141762.
(全12曲)
10年以上のキャリアを誇るベテラン・カンタウトリーチェ
Paola Turci
の最新アルバム。共作を含め全作詞・作曲を自身で手掛けているだけでなく、本作ではプロデュース/アレンジも彼女が担当していて多才なところを見せています。1曲目の
"Mani giunte"
は得意のフォーク・ロック調の曲で、ギターのカッティングに乗せて落ち着きのある声で歌い上げています。続く
"Qualcosa da fumare"
は唸りを上げるハモンド・オルガンに導かれたロック色の強い曲で、珍しく迫力のある力強いヴォーカルを聴かせてくれます。"Adoro
i tramonti di questa stagione"
はアンニュイな雰囲気を漂わせた曲で、中低域を生かした気だるい歌声が印象的です。タイトル曲の
"Questa parte di mondo"
はブズーキやパイプなどを多用したトラッド色のあるアレンジを施した起伏に富んだ曲に仕上がっています。全体的にフォーク・ロックという基本線は押さえつつ曲調もバラエティに富んでおり、落ち着きのある大人の魅力溢れるヴォーカルを楽しめる作品に仕上がっています。
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Cesare Cremonini /
bagus (2002) wea, 5050466212221. (全12曲)
若手人気バンド Lùnapop の元中心人物 Cesare Cremonini
のバンドを脱退してから初のソロアルバム。とはいっても、基本的には
Cesare Cremonini (vo, key), Ballo (b), Andrea Morelli (g),
Matteo Monti (ds)
の4人によるバンド編成で録音されており、彼が中心の新バンドのデビュー・アルバムといった印象が強いです。オープニングの
"Gli uomini e le donne sono uguali"
から彼の奏でるファンキーなピアノをバックにロック色の強い演奏が繰り広げられています。"La
cameriera dei giorni più belli"
ではカントリー調のバンジョーの音色に乗せて軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。"Latin
lover"
は彼自身の多重録音によるコーラスが美しい、ミドルテンポのリラックスしたヴォーカルが印象的な佳曲です。"Mille
galassie" では煌びやかな音色のギターをバックに Lunapop
時代を彷彿とさせる哀愁漂うヴォーカルを聴かせてくれます。ラストのタイトル曲
"Bagus"
は彼のピアノを中心とした美しいインストゥルメンタルで、一旦演奏が終了した後に2分ほどの静寂を経てキーボードによるインプロビゼーションが延々と続くという
Lunapop
の時と同様の仕掛けがあります(公称6分の曲が実際には26分以上)。パッケージは豪華ブックレット付きデジパック仕様となっています。
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Carmen Consoli /
L'eccezione (2002) Polydor, 065 195-2. (全12曲)
ロック系若手カンタウトリーチェ Carmen Consoli
のニュー・アルバム。前作がライブ盤だったこともあり、スタジオ録音作としては2年振りとなります。共作を含め全曲自身の作詞・作曲で、またほとんどの曲で自分でギターも弾いています。前作でのオーケストラとの共演の成果を生かし、Orchestra
di Roma
がバックを務める曲も数曲含まれており、アレンジの幅が広がり飽きの来ない音作りとなっています。ギターとオルガンに導かれて始まるオープニングの"Pioggia
d' aprile"
からコケティッシュなルックスとは裏腹な本格的なロック・サウンドを独特の艶のある声で歌い上げています。タイトル曲の
"L'eccezione"
ではストリングスによるサポートを得て内省的な美しさのあるしっとりとしたヴォーカルを聴かせてくれます。"Moderato
in re minore"
は彼女のつま弾くアコースティック・ギターとうっすらと覆い被さるようなストリングスをバックに、切々と語りかけるようなヴォーカルが印象的な佳曲に仕上がっています。一転して
"Masino"
では歪んだ音色のギターの上をエフェクトのかかったヴォーカルが乗るロック色の強い曲となっています。曲調は以前と同様それほど起伏のないものが多いのですが、アレンジが多彩になった分かなり聴きやすい作品になっていると思います。
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Tiromancino / in
continuo movimento (2002) Virgin Music Italy, 7243
5427842 6. (全11曲)
既に10年以上のキャリアを誇るバンド Tiromancino
の2年振りの新譜となる6thアルバム。とは言っても今回から
Federico Zampaglione (vo, cho, g, b & key)
のソロプロジェクトとなってしまったようで、彼と Andrea Pesce
(p, key & cho), Luigi Pulcinelli (sampling)
の3人が中心となりレコーディング(プロデュース/アレンジも)されています。くぐもったピアノのアルペジオに導かれるオープニング曲
"Come l'aria"
は呟くような優しいヴォーカルが穏やかなメロディを紡ぎ出す詩情溢れる曲になっています。Elisa
がキーボードとヴォーカルで参加している "Nessuna certezza"
では浮遊感のある曲の上をテイストの異なる2人のデュエットが溶け合っていく様が聴き所となっています。"Per
me è importante" では美しいピアノの調べに乗せて Federico
の穏やかなヴォーカルが哀愁のあるメロディを紡ぎだしています。相変わらず捕らえどころのない飄々とした作風が主体で、実験的なアプローチも随所に見られますが、印象的なメロディを持った曲も多く、アルバムとしての統一感が感じられる出来となっています。
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