Musicadentro

第52号 (20/10/2002)

当サイトもいよいよ4周年を迎え、早くも5年目に突入しました。今回はこの秋にリリースされた新譜と再発物・再録盤など新旧取り混ぜてお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Fleurs3

Franco Battiato / FLEURES3 (2002) Columbia, COL 508884 2. (全12曲)

イタリア音楽界の巨頭 Franco Battiato のフランス語で「花」を意味するタイトルを冠するカバー曲集第2弾(何故か3となっていますが)。今回もイタリア及びフランスのアーティストの楽曲を中心に選曲されています。1曲目の "Perduto amore" は Adamo の曲で、エレクトロニクスと生楽器を見事に調和させたシンプルながらも美しいアレンジで聴かせます。続く PFM の "Impressioni di settembre" はシングルにもなり、原曲の持つ繊細で雄大な曲調を現代的なアレンジで甦らせています。Leo Ferré の "Col tempo sai" では呟くようなヴォーカルを包み込むようなストリングスが情感を盛り上げています。Alan Sorrenti の "Le tue radici" ではストリングスとピアノによる艶やかなバッキングの上を流れるような彼の淡々としたヴォーカルを聴くことができます。Bruno Lauzi の "Se tu sapessi" では叙情的なメロディを決してうまいとは言えないものの独特の味のある彼のヴォーカルが訥々と歌い上げています。唯一の新曲 "Come un sigillo" では長年親交のある Alice との息のあったデュエットを聴かせてくれます。選曲を含め彼のセンスの良さを改めて感じさせる気品溢れる作品に仕上がっています。パッケージは真ん中が円形にくり抜かれた変形ブックレット仕様になっています。

Occhi

Stadio / Occhi negli Occhi (2002) EMI, 7243 5408302 0. (全12曲)

'80年代から活躍するベテラン・バンド Stadio の約2年振りとなるニュー・アルバム。前作がエスニック色のある新境地を開いた作風だったのに対して、今回は直球勝負の正統的なポップ・アルバムに仕上がっています。メンバーは替わらず Gaetano Curreri (vo, cho), Giovanni Pezzoli (ds), Andrea Fornili (g, key), Roberto Drovandi (b) の4人ですが、Gaetano がヴォーカルに専念し Andrea がキーボードを兼任しています。また、本作ではストリングスが大々的にフィーチャーされており、いつもよりも叙情的なアレンジが施されています。オープニングの "Sorprendimi" はゆったりとしたリズムの上を艶やかなストリングスが乗り、Cocciante ばりのしゃがれ声で熱気のこもった歌声を聴かせてくれます。続く "Chiaro" は定番の軽快なポップロック路線の曲で、安定した演奏の上を渋めのヴォーカルが駆け抜けていきます。"Il segreto" は哀感のあるロック・バラードで、熱唱するヴォーカルに絡みつくようなストリングスが印象的で、ラストの叙情的なギターソロが曲を盛り上げています。きらびやかなピアノに導かれた "Una casa nuova" では包み込むようなストリングスのサポートを受け、語りかけるような哀愁ある歌声を聴くことができます。収録されているどの曲も飽きの来ない魅力的なメロディを持っており、非常に完成度の高い作品に仕上がっています。

L'anima

I Panda / L'anima e l'amore (1998) Duck Record, DUBCD 1023. (全10曲)

'70年代中盤に活躍したラブロック・グループ I Panda が再結成され、代表曲の数々を再録した1998年作。かつて発表された2枚のアルバムからの曲だけではなく、アルバム未収シングル曲も3曲収められています。この時点のメンバーは Osvaldo Pizzoli (vo, sax, fl), Antonello Carbone (b, cho), Gino Zandona' (g, cho), Silvio Melloni (key, g), Liborio Sciascia (ds) の5人で、さらに多彩なゲスト・ミュージシャンを迎えて制作されています。オープニングの "Tu solo tu sempre più" から軽快ながらも哀愁溢れるメロディを巧みなヴォーカル・ハーモニーで聴かせてくれます。1974年の Festival Bar 参加曲 "Addormentata" はこれぞラブロックといった叙情的な曲で、イタリアならではの憂いを含んだメロディをしっとりと歌い上げています。チャイコフスキーの曲に詞を付けたアルバム未収シングル曲 "Notturno" では転調を伴った美しいメロディを巧みなコーラスワークで聴かせてくれます。アルバムタイトルにもなっている "L'anima e l'amore" はドラマティックな展開を見せる曲で、Gianluca Zanini の哀愁溢れるアコーディオンと Annamaria Pizzoli の美しいソプラノ・ヴォイスがフィーチャーされています。1977年の Festival Bar 参加曲 "Voglia di morire" は哀感のある叙情的なメロディの波状攻撃が聴ける典型的なラブロック・サウンドが楽しめます。オリジナルを未聴のためはっきりとしたことは言えないのですが、新録による音の輪郭のはっきりしたサウンドと切れのある演奏によって新たな息吹を吹き込まれているように感じます。

Passato

Marcella / passato e presente (2002) Sony Music, EPC 508152 2. (全10曲)

ベテラン女性シンガー Marcella のオリジナル・アルバムとしては本当に久しぶりとなるニュー・アルバム。タイトル通り過去の代表曲のリアレンジと新曲3曲により構成されています。トップを飾るのは Giancarlo Bigazzi 作詞のダンサブルな新曲 "Fa chic" で、Marcella らしいパンチのある歌声が冴え渡ります。続く8thアルバム収録の "Rio De Janeiro" では一転してギターの爪弾きに乗せた情感溢れるセクシーなヴォーカルを聴かせてくれます。アルバム・ラストにも別バージョンが収録されている "Il colore rosso dell'amore" は14thアルバムに収録されていて、ラテン・フレイヴァー溢れる情熱的な曲に仕上がっています。Renato Zero 作詞の新曲 "La regina del silenzio" は物憂げなヴォーカルがゆったりとした曲調に絶妙にマッチしています。3rdアルバムに収録されていた "Nessuno mai" や6thアルバムの "Abbracciati" などの旧曲も原曲の良さを残したまま現代的なアレンジが施され、新たな息吹が吹き込まれています。Gianni Bella による新曲 "L'ombra del cuore" では久々に Gianni とのデュエットも聴け、兄妹の息の合った所を見せてくれます。また、1stアルバム収録の "Montagne Verdi" といった非常に懐かしい曲も選曲しており、新旧のファン心理をくすぐる作品に仕上がっています。欲を言えばそろそろ新曲だけで構成されたアルバムの発売を期待したいところです。

Piazza

Mario Castelnuovo / è piazza del campo (1985) RCA, 74321910112. (全11曲)

BMG Ricordi の廉価盤再発シリーズ Gli Indimenticabili Series からCD化再発された中堅カンタウトーレ Mario Castelnuovo の1985年発表のサード・アルバム(2002年リリース)。1曲目の "Piazza del campo" から彼本来の呟くようなヴォーカルをきらびやかな音色のキーボードと、管楽器を中心としたアコースティックな響きとのコントラストが映えるアレンジによって引き立て、コンパクトながら非常に魅力ある作品に仕上がっています。"L'uomo distante" ではアコースティック・ギターに乗せて語りに近いヴォーカルと管楽器が絡む様が印象的です。沸き上がるようなキーボードのフレーズが特徴的な "La scogliera" では囁くような歌声を管楽器による低音部がしっかりとサポートし、重厚感のある曲に仕上がっています。"Inchiostro II" はどちらかというとフランスのアーティストのような演劇的な展開を持った曲で、ヴォーカルを追いかけるようなアコースティック楽器主体のバッキングがおもしろい出来となっています。シンプルなピアノの調べに乗せた "Gli amici" は語りかけるようなヴォーカルと美しいピアノの音色が溶け合った佳曲です。"Stella di sugo" ではアコースティック・ギターの爪弾きに乗せた呟くようなヴォーカルをうっすらと包み込むようなキーボード・オーケストレーションが印象的です。全体として地味めな作風ながら、絶妙なアレンジによって起伏に富んだ魅力的な作品になっています。

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