第50号
(18/08/2002)
夏の暑さに負け更新が遅れがちになってしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回は今年の初夏から夏にかけての新譜を中心にお送りします。第50号という節目の回にもかかわらず8月はイタリアでは音楽業界もバカンスに突入しており、大きなニュースもないので通常通りの内容となっています。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Vol. 1
Vol. 2
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Riccardo Fogli /
Storie di tutti giorni vol.1 & vol.2 (2002) NAR
International, NAR 112-2, 113-2. (各12曲)
ベテラン・シンガー Riccardo Fogli
の3年ぶりのオリジナルリリースは彼にとって初のライブアルバムとなりました。2001年のツアーから12月の
Longiano での公演を収録しており、何故か vol. 1& vol. 2
の2枚に分けてリリースされています。バックのメンバーは Sandro
Ravasini (ds), Ugo Maria Manfredi (b & vo), Roby Facini
(g & vo), Luca Savazzi (p & key)
の4人で、的確で安定感のある演奏で彼の歌をサポートしています。彼の代表的なヒット曲に加えて
Pooh
在籍時のヒット曲が満載で、まさに彼の歴史を一望できる選曲となっており入門編としても最適です。vol.
1 のオープニングからいきなり Pooh 時代の最初期ヒット曲
"Piccola Katy"
を持ってくるあたりに彼のこだわりが感じられます。vol. 1
は12曲中6曲が Pooh
時代のヒット曲で、オリジナルのオーケストラをそのままキーボードに置き換えたようなアレンジの
"Noi due nel mondo e nell'anima" や "Tanta voglia di lei"
"Pensiero"
といったライブの定番曲、ギターのアルベジオをバックにした "In
silenzio" に加え "Quando una lei va via" といった Pooh
本隊でもあまりライブでやらない曲が含まれているのが嬉しいです。もちろんそれだけでなく彼のファーストヒット曲
"Mondo" や近作からの "Monica"
といった彼らしいバラード曲を中心にヒット曲の数々が収められています。vol.
2 の方はアルバムタイトルにもなっている "Storie di tutti
giorni" から始まり、Pooh 時代の "Alessandra" "Nascerò con
te" を交えつつ軽快なポップナンバー "Malinconia" や
重厚なバラード "Quando sei
sola"、伸びやかなギターが印象的な叙情的なバラード "Romanzo"
といった彼自身の代表曲が満載されています。選曲が多少懐古趣味に走っているきらいはありますが、彼のこれまでの活動の集大成的な作りになっています。こうして聴いてみると
Riccardo Fogli 在籍時の Pooh
の公式ライブ音源というものが現存していないのが悔やまれます。発掘音源などが見つかったなら是非ともCD化して欲しいものです。
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Paola & Chiara /
festival (2002) Columbia, COL 508145 2. (全12曲)
美人姉妹デュオ Paola & Chiara
の2年ぶりとなるニューアルバム。アルバムデザインは作を追う毎にセクシー路線になってきていますが、作品の内容は裏腹にどんどんアーティスティックになっているのが印象的です。今回も1曲(Beautiful
Maria of my
soul)を除いて彼女たちの共作曲で占められており、プロデュース及びアレンジも自分たちでやっています。オープニングの
"Hey!"
は前作に引き続きスパニッシュテイスト溢れる曲で、アコースティック・ギターと彼女たちのヴォーカルの絡みが絶妙です。続く
" Muoio per te"
は艶やかなストリングスに乗せて2人が交互にヴォーカルを執るアップテンポの佳曲です。気だるいヴォーカルを聴かせる
"Un mondo pieno d'amore"
では落ち着きのあるしみじみとした歌声が印象的です。ボサノバ調のゆったりとしたリズムが心地よい
"Un giorno di sole per me"
では女性らしい包み込むような優しい歌声に魅了されます。タイトル曲の
"Festival"
は静かな導入部に続いて軽快なサンバのリズムが全開するタイトル通りの祭りを意識させる高揚感のある曲になっています。ギターの爪弾きに乗せた英詞の
"Comin' around"
ではしっとりとした歌声で絶妙なヴォーカル・ハーモニーを聴かせてくれます。"Beautiful
Maria of my soul"
は緩やかなボサノバ調の曲で、哀愁のあるトランペットのサポートを受けた感傷的なヴォーカルが印象的です。アルバムラストは
"Festival"
のリミックス・バージョンで、打ち込みリズムを全面に押し出したダンサブルなバージョンの後に1分程の無音部分があり、今度は虫の声に導かれてアコースティック・バージョンが続く凝った構成になっています。
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Mango /
disincanto (2002) WEA, 0927471872. (全13曲)
ベテラン・カンタウトーレ Mango こと Giuseppe Mango
の久しぶりのニューアルバム。カバー曲(Michelle)を除いて全曲の作曲と詞の約半数を自身で手掛け、残りの詞も大部分は実兄の
Armando Margo によるものとなっています。1曲目のタイトル曲
"Disincanto"
から彼の得意なファルセットを多用した軽やかな哀愁を感じさせるイタリア流AORを聴かせてくれます。続く
"Io sono sentimentale"
では艶やかなストリングスのサポートを受けた穏やかな叙情とも言うべき地中海らしいメロディが印象的です。"La
rondine"
はうっすらとアラブ色の感じられる特徴的な曲展開が聴かれるアップテンポなナンバーになっています。エレポップ色のあるアレンジが印象的な
"Non è amore da ridele"
は哀愁のあるヴォーカルを全面に押し出したAORの佳曲に仕上がっています。言わずと知れた
The Beatles のカバー曲 "Michelle"
はアカペラ・バージョンとなっており、一人多重録音によるヴォーカル・ハーモニーが堪能できます。大洋を思わせるゆったりとしたリズムのうねりが心地よい
"E mi basta il mare"
では地中海色のあるメロディに彼の高音部を生かしたヴォーカルが非常にマッチしています。ファルセットを多用したヴォーカル・スタイルが好き嫌いを分けそうですが、哀愁のあるメロディがイタリアらしさを演出しており、聴き応えのあるアルバムになっています。
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Dirotta Su Cuba /
Fly (2002) CGD east west, 0927 47209-2. (全11曲)
イタリアのドリカムと言われた Dirotta Su Cuba
の2年ぶりとなる最新アルバム。ドリカムも一人減ってしまいましたが、こちらも詞を書いていた
Stefano De Donato (b) が脱退して Simona Bencini (vo) と
Rossano Gentili (p)
の2人組になってしまいました。前作がある意味パワー全開のハイテンションな作品だったので、前作と比較するとパワーの低下は否めないもののハイセンスでファッショナブルなサウンドはそのまま継承されています。オープニングの
"Sono qui"
からファンキーなサウンドにスピード感のあるダイナミックなヴォーカルが乗る彼ららしい楽曲を披露してくれます。タイトル曲の
"Fly" でも Simona
の気持ちよさ気なヴォーカルがアップテンポな曲にぴったりとマッチしており、彼らの持ち味を生かした仕上がりになっています。ギターの爪弾きが心地よい
"L'amore non aspetta mai"
ではゆったりとしたリズムの上を憂いを含んだヴォーカルが紡ぎ出すメロディが印象に残ります。"Vivo
anche così"
は軽やかでファッショナブルな感覚を生かしたサウンドが展開され、肩の力を抜いたいわゆるオシャレな曲に仕上がっています。アルバム前半はやや気負いすぎの感があるものの、後半にかけて徐々に彼ら本来の持ち味が出てきているように思います。
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Mariadele / ...ora mi
faccio un caffè (2002) Universo, UNI 507951 2.
(全13曲)
若手女性ヴォーカリスト Mariadele
の2年ぶりとなるサード・アルバム。前作ではR&Bなどに色気を見せたインターナショナル指向の強い音作りだったのですが、今作では比較的イタリアらしい正統的な曲調が目立ちます。詞は共作を含め全曲彼女自身が手掛けており、また曲も3曲ほど共作しています。1曲目の
"Indispensabile"
はシングルになった曲で、叙情的でしっとりとしたメロディをダイナミックなヴォーカルが歌い上げる哀愁のあるバラードになっています。"C'era
una volta"
では切々と訴えかけるようなヴォーカルを聴かせ、幅広い表現力のあるところを見せています。一転して
"Non ti dimentico"
はR&B色の強いリズミカルなヴォーカルを聴くことができるアップテンポな曲になっています。ゆったりとした曲調の
"Lascerei tutto"
ではキュートで伸びのある歌声で叙情的なメロディを歌い上げており、イタリアらしい曲に仕上がっています。また、"Bambina"
では控えめなストリングスをバックに軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。若手の女性ヴォーカリストでは歌唱力・表現力共にトップクラスに挙げられる程の実力がある上に、楽曲の出来もいいので女性ヴォーカル・ファンには是非ともお勧めです。ブックレットには前作に引き続き彼女のチャーミングなフォトが満載となっており、彼女の魅力が十分楽しめる作りになっています。
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