Musicadentro

第49号 (07/07/2002)

夏もいよいよ本格的になり、蒸し暑い日々が続きますが皆さんいかがお過ごしでしょうか。ワールドカップでは日本代表は健闘したものの、イタリア代表は期待に較べ残念な結果に終わってしまいましたね。今回はベテラン勢の新譜を中心にサンレモの残りを交えつつお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Prendi

Nomadi / amore che prendi amore che dai (2002) CGD east west, 0927 45219-2. (全10曲)

現役最古参バンドの一つ Nomadi の約1年半ぶりのニューアルバム。メンバーは変動がなく、Beppe Carletti (key), Cico Falzone (g), Daniele Campani (ds), Danilo Sacco (vo), Massimo Vecchi (b & vo), Sergio Reggioli (per & vln) の6人で、Danilo は今回はヴォーカルに専念しておりギターを弾いていません。本作は曲毎に多彩なゲストを迎えて制作されており、今までになくバラエティに富んだ作品となっています。オープニングの "Sangue al cuore" では Danilo の歌い上げるヴォーカルと厚めのバッキングが相まってイタリア的な叙情を演出しています。続くタイトル曲 "Amore che prendi amore che dai" ではロック色の濃い Massimo のヴォーカルと伸びやかなギターの音色により力強さを強調した仕上がりになっています。"L'angelo caduto" はゲストの Andrea Griminelli のフルートによるオブリガート(副旋律)が時に寄り添うように時に絡み合うように流れる様が美しい佳曲です。"Trovare dio" は映画 "L'alba di Luca" の挿入歌で、分厚いキーボードオーケストレーションと力強いコーラスが印象的な哀愁たっぷりのバラードです。"Sospesi tra terra e cielo" では Danilo と女性ヴォーカルの May とのイタリア語と英語による掛合いによるデュエットを聴かせてくれます。また、"Il circo è acceso" では Massimo のヴォーカルと女声コーラス隊との共演を唸りを上げるオルガンが盛り上げています。"L'arte degli amanti" ではヴィオラとチェロをゲストに迎え、Sergio のヴァイオリンを加えた室内楽を意識した典雅な演奏をバックに Danilo の切ないヴォーカルが冴え渡ります。アルバムラストは Danilo が朗々と歌い上げるバックに女声コーラス隊が絡み、再び May とのダイナミックなデュエットを披露する "Il nome che non hai" で大団円を迎えます。前作も素晴らしい出来でしたが、今回もそれ以上に素晴らしい充実した作品に仕上がっています。

Aria

Gianna Nannini / Aria (2002) Polydor, 589 765-2. (全13曲)

前々回、音楽を手掛けたアニメ「Momo」のサントラを紹介したイタリアを代表する女性ロッカー Gianna Nannini のオリジナルとしては約4年ぶりとなる最新アルバム。演奏には Mauro Pagani も参加していて得意のフルートとマンドリンを披露しており、単調になりがちなアレンジに彩りを添えています。静かな幕開けから一転して金属質のロックサウンドを披露する1曲目の "Volo" から Gianna のハスキー・ヴォイスが炸裂しており、久々に元気な歌声を聴かせてくれます。Pagani によるマンドリンのトレモロに導かれた "Uomini a metà" でもタイトなリズムセクションをバックにダイナミックに歌い上げています。シングル曲にもなったスケール感のある "Aria" は「Momo」に収録されていたものより短いバージョンとなっており、サントラ盤にあった Jeff Beck によるギターソロは割愛されています。唸るようなヴォーカルが印象的な "Sveglia" は短いながらも胸に迫るような情感を湛えた曲です。"Meravigliosamente crudele" はハードエッジなギターが活躍するロック色の強いナンバーで、Gianna のシャウトが高らかに曲を盛り上げています。久々のオリジナル・アルバムではありますが、冒頭からパワー全開で歌い上げており、ロックの女王ここに健在といった感じが良く出ています。

Fuori

Ligabue / FUORI COME VA? (2002) WEA, 0927453402. (全12曲)

既に10年以上のキャリアを誇るロックン・ローラー Ligabue の約2年半ぶりとなるニューアルバム。本作でも全曲彼自身による作詞・作曲となっており、また演奏でもアコースティック・ギターを自身で弾いていてライブを意識したスタイルが徹底しています。オープニングの "Nato per me" から Ligabue 節とも言える低音のヴォーカルを生かしたスピード感のあるロックン・ロールを披露しています。続く "Tutti vogliono viaggiare in prima" では弾むようなベースに乗せて訴えかけるようなヴォーカルを聴かせ、バックのメンバーによる息のあったコーラスが曲に彩りを添えています。きらびやかな音色のギターのリフに導かれる "Ti sento" ではしゃがれ声による落ち着きのある歌声を聴くことができます。ギターによる哀愁のあるカウンターラインが印象的な "Questa è la mia vita" はイタリアらしい叙情的な中にも力強さを感じさせるロック・ナンバーに仕上がっています。この人の場合、どの曲を聴いてもあまり印象が変わらないところが長所であり短所でもあったりするのですが、収録されている曲全てがライブ映えするダイナミックなものとなっているので、家でCDを聞くよりも大きなコンサート会場で大音量で生で体験するのが一番その魅力を理解できるのではないかと思います。本作はデジパック仕様で歌詞の載っているブックレットが付属しています。

Uguali

Gianluca Grignani / UGUALI E DIVERSI (2002) Universal, 586 703-2. (全11曲)

今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む若手カンタウトーレ Gianluca Grignani の最新アルバム。全曲彼自身による作詞・作曲で、プロデュースも自身で手掛けており、アレンジもピアノ/キーボードの Adriano Pennino と共同で行なっており、多才なところを見せています。1曲目の "Lady Miani" はアレンジを含め英米指向が見え隠れする曲ですが、彼独特の浮遊感のあるヴォーカルが印象的な力強いナンバーとなっています。サンレモ音楽祭参加曲 "Lacrima della luna" は一転してイタリア的な叙情を湛えた美しい曲で、サビの部分のシャウトにも哀感が漂っています。"L'estate" では浮遊感のあるヴォーカルを生かしたさり気ないストリングス・アレンジが曲を静かに盛り上げています。語りかけるようなヴォーカルで始まる "Angeli di città" は美しいメロディと彼の歌声が醸し出す叙情が印象的な佳曲です。"Emozioni nuove" は浮遊感のあるヴォーカルとギターのバッキングとの絡みが哀愁を漂わせる勢いのある曲で、時折聴かせるファルセットがアクセントを付けています。前作に較べるとよりロック寄りのサウンドに仕上がっていますが、勢いのある分一般受けはこちらの方がいいかも知れません。

Tracce

Francesco Renga / Tracce (2002) Mercury, 586 846-2. (全11曲)

元 Timoria の Francesco Renga の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む最新アルバム。ソロとしては多分2枚目になると思われます。詞及び曲の大部分は共作を含め自身で手掛けており、プロデュースにも名を連ねています。オープニングを飾る "Dove il mondo non c'è piu'" は伸びのある歌声を聴かせる爽やかな曲で、ファルセットを交えたヴォーカルスタイルとギターを中心としたバッキングが絶妙にマッチしています。軽快なロックナンバー "Sto già bene" では彼の力強いヴォーカルとファルセットのコーラスとの対比が印象的です。サンレモ音楽祭参加曲 "Tracce di te" はピアノの調べに導かれた哀愁漂うバラードで、高らかに歌い上げるヴォーカルとバックの幾分控えめなオーケストラが静かな叙情を醸し出しています。流麗なピアノで始まる "Segreti" はスケール感のあるメロディを持った曲で、張りのある歌声を艶のあるオーケストラがサポートしており大いに盛り上げています。"Vuoto a perdere" ではロック色の強いリズミカルなバッキングとサビでの語尾を引き延ばすような歌い回しが印象的です。ラストの "La nuda verità" は軽やかなヴォーカルをサポートするピアノを主体とした弾き語り調の曲で、終盤のチェロによるバッキングがいい味付けになっています。また、2分ほどの静寂の後に1分半ほどの叙情的なシークレット・トラックが収録されています。

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