Musicadentro

第48号 (02/06/2002)

いよいよワールドカップも開幕し、イタリア代表チームの活躍が期待される所ですが皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回は今年のサンレモ音楽祭に参加したバンド/グループものを紹介します。いずれのアーティストも音楽祭の成績は振るわなかったものの決して作品の出来が悪かったわけではなく、御行儀のいいサンレモ向きではなかっただけですのでご安心を!

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Magico

Timoria / un aldo qualunque sul treno magico (2002) Polydor, 589 688-2. (全18曲)

社会派ロックバンド Timoria の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むニューアルバム。今回もメンバーは Diego Galeri (ds, vo), Enrico Ghedi (key, vo), Illorca (b, vo), Omar Pedrini (g, vo), Sasha (g, vo), Filippo Ummarino (per) の6人で、ほとんど全員がヴォーカルを取っています。今回のアルバムはジャケットデザインを含めサイケデリック色が強く、全体的に Love & Piece な雰囲気に包まれています。サンレモ音楽祭参加曲 "Casamia" はオルガンとディストーションのかかったギターの音色が印象的なロック・バラードで、明らかにサンレモ向きではないアレンジが施されているものの、スケール感のある作品に仕上がっています。Bee Gees のカバー曲である "To love somebody" ではオリジナルに匹敵する巧みなコーラスワークを聴かせ、ヴォーカル面での実力を示しています。6分弱もある "Fresco" ではファルセットを多用したコーラスとオルガンのうねりが哀感のある曲を盛り上げています。"Il mare nella strada" はまるでマカロニ・ウェスタン映画のテーマ曲といってもいいような曲調で、イタリア的西部劇といった雰囲気があります。英詞で歌われる "Atomic lovers" ではゲストの Lucia Tarì とのヴォーカルの掛合いが素晴らしく、ロック色の強い曲調がドライブ感を強調しています。相変わらずバラエティのある曲が詰め込まれており、幅広い音楽性を楽しめるアルバムとなっています。このアルバムの曲はRAI Cinema 制作の映画 "Un Aldo qualunque" のサウンドトラックとしても使われているようで、Timoria の看板男 Omar Pedrini も出演しているようです。

Casuali

Plastico / incontri casuali (2002) Universo, UNI 507725 2. (全12曲)

昨年、期待の新人として紹介した Plastico の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むセカンド・アルバム。前作同様 Diana Tejera Nenna (g, vo), Irene Boreggi (g), Stefano Galafate Orlandi (b), Raffaele Venturi (ds) の4人のメンバーでレコーディングされています。オープニングの "Un giorno per caso" からタイトなリズムに乗せて Diana のヴォーカルが矢継ぎ早に畳み掛けるのが印象的です。サンレモ音楽祭参加曲 "Fruscio" は気だるいヴォーカルを生かしたミドルテンポの曲で、時折聴かせるファルセットとストリングスの響きが曲にアクセントを付けています。ギターの爪弾きで始まる "Fili e reti" ではアンニュイなヴォーカルをサポートするストリングスとアコースティック・ギターの対比が素晴らしい出来になっています。沈み込むような低音のヴォイスに導かれた "L'incantesimo" はミステリアスな雰囲気を醸し出している曲になっています。アルバムラストにアンプラグド・バージョンも収録されている "Ombre invisibili" はしっとりとしたヴォーカルとギターの爪弾きをストリングスが包み込むように覆う美しい曲で、バンドとしての表現力の向上を感じさせます。"Il margine" ではアコースティック・ギターの弾き語りスタイルで語りかけるようなヴォーカルを聴かせてくれます。全体的に前作に較べて落ち着いた雰囲気の曲が多く、バンドとしてのカラーが固まりつつあるように感じられます。

Curioso

La Sintesi / un curioso caso (2002) NOYS, COL507546 2. (全10曲)

若手バンド La Sintesi の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含むセカンド・アルバム。メンバーは Lele Battista (vo, g, key), Giuse Sabella (b), Giorgio Mastrocola (g), Michelino Sabella (ds) の4人編成で、詞・曲ともにほとんどが Lele が手掛けています。今回紹介するバンドの中では最もポップ色が強く、またCDで聴く限りでは演奏力も水準以上で優れたポップセンスを兼ね備えているために今後の活躍が期待できる新人バンドと言えましょう。オープニングの "Stare fuori" は弾けるようなポップ・チューンで、軽快なリズムに乗せて巧みなコーラスを主体とした爽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。続くサンレモ音楽祭参加曲 "Ho mangiato la mia ragazza" はミステリアスな音色のキーボードに導かれて始まるミディアムテンポの曲で、ピアノを主体としたバッキングに乗せたコーラスワークが印象的です。きらびやかなピアノの音色と前に出てくるベースのリフがリズムを強調する "Un periodo un po' così" では囁きかけるようなヴォーカルとリズミカルな曲調の対比が特徴的です。マリンバに導かれて始まる "Il faro nella notte" では幾分コミカルな曲展開を見せ、気だるいヴォーカルとの対比が聴き所となっています。くぐもった音色のキーボードがリズムを刻む "Bollette transparenti" は物憂い感じのヴォーカルが哀感のあるメロディを歌い上げています。また、リズミカルなピアノに乗せた "Piccole forme di solitudine" ではコーラスを主体としたスピード感のあるヴォーカルを聴くことができます。全体的に曲調もバラエティに富んでおり、水準以上のポップアルバムに仕上がっています。

Euforia

Giuliodorme / solida euforia (2002) PANAMA, PAM 507580 2. (全11曲)

今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む新人バンド Giuliodorme のデビュー・アルバム。メンバーは Andrea Moscianese (vo & g), Roberto Di Egidio (b), Federico Giannini (ds) の3人で、曲・詞ともに主に Andrea が書いています。また、本作では Daniele Silvestri が2曲ほど詞の共作でクレジットされています。1曲目の "Resta" は哀愁を帯びたメロディを幾分しゃがれたヴォーカルが歌い上げるイタリア色の強い曲調で、バックを埋め尽くすように流れるストリングスと相まって'70年代前半のカンタウトーレ作品のような趣があります。一転してサンレモ音楽祭参加曲 "Odore" ではディストーションのかかったギターが活躍するハードロック色のある曲で、中間部のトランペットの響きを含めファンキーな感じに仕上がっています。"Che sen so ha" では物憂げなヴォーカルがしみじみと歌い上げるロック・バラードで、金属質のバッキングとの対比が曲に不思議な雰囲気を与えています。"Foglio bianco" はギターの爪弾きとピアノをバックに囁くようなヴォーカルを聴かせる美しい小曲です。アルバムタイトル曲の "Solida euforia" は力強いリズムに乗せたコーラスを主体としたヴォーカルが印象的なロック・ナンバーで、バンドの勢いを感じさせます。アルバムラストを飾る "Virus" ではリヴァーブのかかったピアノをバックに独白にも似たヴォーカルを聴かせ、エフェクトのかかったトランペットが哀愁のあるメロディを奏でる中、幻想的なエンディングを迎えるラストにふさわしい曲になっています。

Treni

Botero / Siamo treni (2002) B&G, BG 0502CD. (全11曲)

今年のサンレモ音楽祭の新人部門で8位入賞を果たしたグループ Botero のサンレモ音楽祭参加曲を含むファースト・アルバム。メンバーは Francesco Riccardi (key), Chiara Novati (cello), Valentina Cavalieri (vo), Luigi Santoro (vo) の4人で男女のツイン・ヴォーカルという特徴のある編成になっています。プロデュース及びアレンジは大御所 Vince Tempera とギターでも参加している Michele Schembri が担当しています。基本的なスタイルは初期 Matia Bazar に近く、曲によっては知らずに聴くと Matia Bazar の未発表曲かと錯覚するような類似点があるのですが、チェロがメンバーにいることによりアレンジに独特の味付けがなされており、独自性も兼ね備えています。サンレモ音楽祭参加曲 "Siamo treni" はチェロに導かれツインヴォーカルが歌い上げるスピード感のある曲です。"Tempo non ce n'è" ではチェロによる低音部をバックに時計の秒針の音を模した効果音が印象的で、ゆったりとしたヴォーカルの掛合いを聴くことができます。問題の "Tu mi manchi" は完全に "Melancholia" 当時の Matia Bazar テイストの曲で、ヴォーカルスタイルまで Antonella Ruggiero そっくりだったりします。そうは言っても全体的にはミステリアスな曲調も目立ち、陰影のある音作りがされているためにオリジナリティを感じさせます。
ちなみにこのアルバム、ケース裏及びブックレットに記載されている曲順がCDに収録されているものと異なっており、実際のものは (1) Siamo treni (2) Tempo non ce n'è (3) Tu mi manchi (4) Toccami (5) Batti un colpo (6) Tutte le cose che non ti ho detto mai (7) ...E adesso fallo! (8) Quello che resta di me (9) Non è stato mai (10) Fotogrammi (11) Fino in fondo となっています。

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