第44号
(20/01/2002)
「日本におけるイタリア年」であった2001年がポピュラー音楽の分野ではまるで盛り上がりを見せずに過ぎ去ってしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。振り返ってみれば去年はイタリア物の新譜がほとんど国内盤発売されずに終わってしまった気がします。今年こそは少しでも多くのポップス作品の国内盤発売があるように期待しましょう。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Cristiano De André /
scaramante (2001) edel, 01 3449 2ERE. (全10曲)
Genova の重鎮、故 Fabrizio De André
の息子で自身もカンタウトーレの Cristiano De André
のおそらく4枚目となるニューアルバム、ということは約6年ぶりの新作ということになります。大部分の曲で詞・曲ともに共作を含め自身で手掛けている他、アコースティック・ギターを中心に各種弦楽器も演奏しています。1曲目の
"Buona speranza"
はラテン系のリズムに乗せてスパニッシュ風のギターサウンドが駆け抜けるのが印象的で、彼の幾分気だるいヴォーカルを盛り上げています。"Lady
barcollando"
では父親譲りの言葉数の多い歌詞をフォークロック調のサウンドに乗せて聴かせてくれます。"Sei
arrivata"
ではクラシック・ギターによるカッティングとトロンボーンが紡ぎ出すリズミカルな曲調に彼の早口のヴォーカルが非常にマッチしています。軽快なヴォーカルを聴かせる
"Le quaranta carte" では妹の Luvi De André
がコーラスで花を添えています。ゆったりとしたフォークサウンドが印象的な
"Sapevo il credo" では作曲に Fabrizio Casalino
の名前が見られます。Mauro Pagani との共作となる "Sempre
anà" は Genova 方言で歌われているようで、珍しく Pagani
によるコーラスも聴けます。ラストの "Il silenzio e la luce"
ではピアノによるシンプルなバッキングに語りかけるような彼の優しいヴォーカルが印象的で、静かにエンディングを迎えていく様が心に染みます。
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Renato Zero / La curva
dell'angelo (2001) Tattica, TAT 504971 2.
(全13曲)
かつてはお化粧キャラで有名だったベテラン・カンタウトーレ
Renato Zero のニューアルバム。前々作 "Amore dopo amore"
が大傑作アルバムだったことからこの新作にも期待が高まるのですが、本作では
"Amore dopo amore"
タイプのゆったりとしたドラマチックな曲と彼本来の持ち味であるアップテンポで軽快な曲が交互に配置されています。オープニングの
"Svegliatevi poeti"
はゆったりとしたストリングスに乗せて朗々と歌い上げる彼のヴォーカルが盛り上げるドラマチックなバラードになっています。続く
"Qualcuno mi ha ucciso"
ではリズミカルな曲に乗せてコーラス隊を従えた軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。ピアノに導かれて静かに始まる
"Il maestro"
ではストリングスを交えて徐々に盛り上がっていき、終盤に向かって彼のヴォーカルが一気に駆け上がっていきます。きらびらかなキーボードの音色で始まる
"Nuda proprietà"
は女性コーラスを従えた軽快な曲調とブラス隊によるサポートが印象的で、彼の楽しそうなヴォーカルは聴いていて気持ちがいいです。巷で言われているように
"Amore dopo amore"
を期待すると多少肩すかしを食うものの各曲は非常に良くできており、ドラマチック一辺倒よりはこういった構成の方が聞き易いかと思います
(収録時間も長いことだし) 。
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Malibran / oltre
l'ignoto (2001) Mellow Records, MMP 409. (全8曲)
'90年代初頭から活動を続ける新進プログレバンド Malibran
のオリジナルとしては4枚目、ライブアルバムを入れれば5枚目となるニューアルバム。メンバーは
Giancarlo Cutuli (fl, sax), Jerry Litrico (g), Angelo
Messina (b), Alessio Scaravilli (ds, perc), Benny Torrisi
(p, key), Giuseppe Scaravilli (vo, g, fl)
の6人で、本作にはバイオリンとチェロがゲストで参加しています。本作はジャケットにもあるように大航海時代の雰囲気を湛えた典雅なシンフォニック・ロックが繰り広げられています。1曲目の
"Si dira' di me"
からフルートを全面に押し出したエモーショナルな演奏が力強いヴォーカルと一体となり、いくつかの場面展開も含む一大シンフォニック絵巻を繰り広げています。きらびらかなパーカッションとフルートに導かれて始まる
"Oltre l'ignoto"
では畳み掛けるような曲展開の中、リリカルなヴォーカル・パートを支える包み込むようなキーボードが印象的です。小曲の
"L'incontro"
は囁くようなヴォーカルをサポートするアコースティック・ギターとゲストによる弦楽セクションが叙情姓を際立たせています。ラストの大曲
"In viaggio"
では静かなヴォーカルで始まり、展開の激しい典型的なイタリアン・シンフォニック・ロックを聴かせてくれ、力のこもった演奏が楽しめます。テクニック的には未だ未完成の部分があるものの、アイディアやセンスに溢れた次世代を担う好グループだと思います。
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Nada / L'amore è
fortissimo e il corpo no (2001) Storie di note,
SDN016. (全9曲)
かつてはアイドルとして一世を風靡したベテラン・カンタウトリーチェ
Nada
の2年ぶりとなるニューアルバム。全曲彼女自身が詞・曲共に手掛けており、カンタウトリーチェとしての才能を遺憾なく発揮した1枚となっています。1曲目の
"Gesù"
から低音域のヴォーカルを生かした非常にアグレッシブなサウンドアプローチをしています。続く
"Giulia"
はフォークタッチの曲で、時々沸き上がってくるように絡んでくるストリングスが印象的です。"Meraviglioso"
は呪術的なヴォーカルによるオープニングから一気にアップテンポのサビに突入する展開の激しい曲で、ヴォーカルの表情の切り替えが印象に残る1曲です。"In
generale"
はブルース色のある曲で、彼女のルーズなヴォーカルが非常にマッチしています。"La
musica antica"
ではギターの爪弾きに乗せて囁くように歌うといった軽やかな一面も見せてくれます。"Suonano
alla porta"
は沈み込むような重々しい演奏に、呪術的とも言える彼女の低音域を生かしたヴォーカルが絡む独特の雰囲気を持った曲に仕上がっています。ラストの
"Questa donna"
では一転して穏やかな曲調に呟きにも似た肩の力の抜けた静かなヴォーカルを聴かせてくれます。イタリアらしさはほとんどないものの、Nada
自身の個性がはっきりと表れた作品に仕上がっています。
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Gianni Morandi / un
mondo di donne (1971) RCA, 74321737722. (全12曲)
イタリアを代表するベテラン2枚目シンガー Gianni Morandi
の1971年発売の10枚目のアルバムのCD再発盤(2000年発売)。'60年代のカンツォーネのテイストを残しながらも、'70年代に興隆を極めるカンタウトーレ達の作品を早くもこの時期に積極的に取り上げるなど意欲的な作品になっています。アルバムタイトル「女性の世界」から連想されるように、女性の名前をタイトルに冠した曲が並んでいます。オープニングの"Buonanotte
Elisa" は Riccardo Cocciante による展開の激しい曲で、Morandi
のダイナミックなヴォーカルを緩急のある演奏が巧みにサポートしています。"Angela"
は Luigi Tenco
の曲で、ピアノとハープの爪弾きに乗せて切々と訴えかけるようなヴォーカルで始まり、チェンバロや切り込んでくるストリングスによる叙情パートの波状攻撃が聴かれる早すぎたラブ・ロックといった感じの曲です。"Teneramente,
Annamaria"
はムーディーなヴォーカルをトランペットによるオブリガートが絶妙にサポートしているのが印象に残ります。"Balla
Linda" は Mogol - Battisti コンビによる曲で、張りのある
Morandi の歌声がアップテンポな曲にマッチしています。"La
canzone di Marinella" は Fabrizio De André の代表曲で、De
André の呟くようなヴォーカルとは対照的に Morandi
は朗々と歌い上げています。全体的にアレンジに古さを感じさせる部分はあるものの、彼のヴォーカリストとしての実力が遺憾なく発揮された作品だと思います。
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