Musicadentro

第43号 (24/12/2001)

年の瀬も押し詰まってまいりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。時期的には多少遅れ気味ではありますが、今回はこの秋にリリースされた新譜を中心にお送りします。Poohmania の更新に力を入れていた関係で、本編の更新が大幅に遅れてしまいました。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Best-doppio

Pooh / best of the best - doppio (2001) CGD east west, 092741990 2. (全34曲)

Pooh のアンソロジー的な選曲によるベストアルバム。34曲収録の2枚組限定盤と18曲収録の1枚にまとめられたものの2種類がリリースされていますが、こちらは2枚組の方です。新曲3曲を含み、最新シングル曲 "Portami via" を冒頭に、中間部とラストに新曲 "E arriv tu" と "Figli" を配し、あとはほぼ年代順にヒットシングル中心の選曲がなされています。'90年以前の曲はリミックスを施されたものを11曲含み、その中でもオリジナル・アルバム未収シングルの "Non siamo in pericolo" がリミックス・バージョンで収録されているのがうれしいです。また、オリジナル・アルバム未収録曲で "The best of Pooh" のみに収録されていた "Non lasciarmi mai più" が収録されています。しかし、"Un po' del nostro tempo migliore" "Forse ancora poesia" "Tropico del nord" "Giorni infiniti" "Il colore dei pensieri" "Musicadentro" の6枚のアルバムからの選曲がないなど35年以上のキャリアを持つ彼らの代表曲を2枚組というヴォリュームに凝縮するのは無理があるような気もします。1枚ものの方はさらに5枚のアルバムからの曲が削られており、1982年の "Non siamo in pericolo" から一気に1990年の "Uomini soli" に跳んでしまうのでアンソロジーとしては物足りないものとなっています。とはいえ、収録されている各曲はどれも Pooh らしさに溢れたポップでメロディアスな楽曲ばかりなので、初心者の入門編としても充分楽しめると思います。

Matana

Lucio Dalla / Luna Matana (2001) Pressing Line, 74321 892912. (全11曲)

ローマ派カンタウトーレの重鎮で、Bologna 出身のミュージシャンの首領 Lucio Dalla の2年ぶりのニューアルバム。彼は元ジャズ奏者だったこともあり、自身でキーボードとクラリネット、アルト・サックスを担当しており、また独特のリズム感に裏打ちされた浮遊感のある作風に特徴があります。オープニングの "Chi sarò io" ではゆったりとしたオーケストラとSEに乗せて語りに近い漂うようなヴォーカルを聴かせてくれます。続く "Siciliano" はトロピカルな雰囲気のリズムアレンジが印象的で、彼のほのぼのとした歌声と非常にマッチしています。しみじみとした歌を聴かせる "La strada e la stella" では彼の奏でるサックスも充分に堪能できます。"Zingaro" ではゲスト・ヴォーカルの Joseph Fargier を交えて、イスラムの影響を感じさせるスパニッシュ・スタイルの演奏を繰り広げています。日本人としては気になるタイトルの "Kamikaze" は仲々力の入った歌声を聴かせる曲で、サビの部分でのエフェクトのかかったヴォーカルが印象的です。ラストの "Agnese Dellecocomere" ではゆったりとした曲調に彼のリラックスしたヴォーカルとムードのあるサックスが絡む夜を感じさせる曲になっています。一見冴えないその風貌と飄々とした作風から日本では今ひとつ人気がないようですが、イタリアの最重要アーティストの一人なのでこの機会に是非聴いてみて頂きたいと思います。

Forza

Francesco Baccini / forza francesco! (2001) S4, 5045882. (全11曲)

Genova 出身の中堅カンタウトーレ Francesco Baccini の約2年ぶりとなる新作アルバム。本作では自身でピアノを弾いている他、Agostino (ds) と Antonio (sax) の Marangolo 兄弟が参加しており、録音の良さも手伝って粒立ちのいい音の輪郭がはっきりした非常にクリアなサウンドが堪能できます。1曲目の "Chissà chi saro'" から流麗なピアノに乗せて語りかけるような彼のヴォーカルが楽しめます。"Son resuscitato" では英詞を交え、アコースティック・ギターとマリンバなどの打楽器の絡みが印象的なリズミックな曲になっています。"Quelli come me" はストリングスの艶やかな調べをバックに叙情的なヴォーカルを聴かせ、間奏部ではAntonio Marangolo のサックス・プレイが堪能できます。"L'orso" では巧みな演奏をバックに、擬音語・擬態語を交えた歌と言うよりはトーキングに近いヴォーカル・パフォーマンスを披露しています。"L'unica droga che ho" はブラスセクションが活躍するデキシーランド・ジャズ風の曲調で、彼のヴォーカルも非常に楽し気です。また、"Ti piacerebbe" ではレゲエのリズムを導入しているなど、様々なサウンド・アプローチが採られています。"Devo diventare come" はせっつくような前のめりなリズムに乗せたとっても前向きな応援ソングです。ラストは同郷の大先輩、故 Fabrizio De Andre' の "La ballata dell'amore cieco" のカバーで締めくくっています。

Monaco

Delta V / monaco '74 (2001) Ricordi, 74321885182. (全16曲)

3人編成のクラブ系グループ Delta V の2年ぶりとなるサード・アルバム。メンバーはお馴染みの Carlo Bertotti [Straker] (key, b, vo), Flavio Ferri [Foster] (g) に加え、女性ヴォーカリストが前作の Luana Heredia から Gi Kalweit に変わっています。本作は全体的にリゾート感覚溢れた作風となっており、去り行く夏に思いを馳せるようなセンチメンタルな雰囲気に満ちています。オープニングの "I treni e le nuvole" から控えめなストリングスをバックにクールな中にも寂しげな雰囲気のある新加入の Gi のヴォーカルが印象に残ります。2曲目の "Un'estate fa" はこの夏のヒット曲で、原題を "Une belle histoire" といい日本でも「ミスター・サマータイム」として知られている曲のカバーで以前 Homo Sapiens も取り上げていた曲ですが、アレンジが全く異なっており別の曲のように聞こえます。"L'ombra in me" ではHIP・HOP調のコーラスを交え、落ち着きのあるヴォーカルを聴かせてくれます。"Un colpo in un istante" はサスペンス映画のサントラのような緊迫感のある曲で、時折聴かれるトランペットが非常に効果的に使われています。収録されているどの曲もヨーロッパ映画に出てくるような情景が想起される非常に映像的なサウンドに仕上がっています。これまでの2作品に較べ格段の進化を遂げており、ヨーロピアン感覚に満ちた傑作アルバムに仕上がっています。

Piu'

Pupo / Piu' di Prima (1980) RCA, 74321890272. (全10曲)

BMG Ricordi の廉価盤再発シリーズの Gli Indimenticabili Series からCD化再発された Pupo こと Enzo Ghinazzi の'80年制作のサード・アルバム (2001年リリース)。ポップ系カンタウトーレの代表格である Pupo ですが、本名の Enzo Ghinazzi 名義で他のアーティストに多数楽曲提供をしていることでもよく知られています。ピアノとストリングスに導かれて始まる1曲目の "Cosa farai" から彼特有の声を生かしたポップでかつ哀愁を帯びたヴォーカルが全開しています。アルバムタイトル曲の "Più di prima" はリズムを刻むピアノの上を囁くようなヴォーカル が乗り、艶やかなストリングスが盛り上げる叙情的な曲です。"Su di noi" ではリズミカルなヴォーカルラインにストリングスが切り込んでくるのが印象的です。コンサートのオープニングを連想させる拍手で始まる "Bravo" はライブを模した雰囲気のアットホームな感じに仕上がっています。彼の代表曲の一つである "Firenze S.M. Novella" はトスカーナ人である彼自身のテーマ曲のようなもので、豊潤なトスカーナの大地を思わせる郷愁を感じさせる曲になっています。"S. Francisco" は幾分ハードな曲調のアップテンポな曲で、ポップで弾むような彼らしいヴォーカルが楽しめます。若き日の彼の瑞々しい感性に裏打ちされたイタリアらしいポップな楽曲が並んでおり、後に'80年代の Gianni Morandi と言われたことが納得のいく作品となっています。

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