第40号
(26/08/2001)
残暑もまだまだ厳しい中、皆さんいかがお過ごしでしょうか。第40号という区切りにもかかわらず、特に趣向を凝らすわけでもなく、いつも通りの内容でお送りします。今回は久しぶりにバンド物ではなくソロ・アーティストの作品が多数を占めています。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Calicanto /
Labirintomare (2001) Compagnia Nuove Indye, CNDL
13177. (全13曲)
20年程の活動歴を誇るコンテンポラリー・トラッド・バンド
Calicanto の最新アルバム。地元 Padova を含む Veneto
州を中心としたアドリア海周辺のトラッドを基調とした楽曲を演奏しています。本作は
Claudia Ferronato (vo), Gabriele Coltori (bagpipe),
Giancarlo Tombesi (cb), Nicola Marsilio (cl, fl, gamba),
Roberto Tombesi (vo, acd, g, per), Paolo Vidaich (per)
の6人のメンバーに多数のゲストを迎えて制作されています。以前紹介した
Agricantus
などに較べるとトラッド色が強いのですが、泥臭さはなくかなり洗練された音を特徴としています。また、オープニングから大活躍のバグパイプがこのバンドのサウンドの特徴の一つとなっています。また、Claudia
のヴォーカルの美しさも一聴の価値があります。このアルバムは録音が非常に良く、各楽器の音の分離がクリアな上に音の立ちあがりがはっきりしており、さらに出力レベルも高いので、こうしたアコースティック楽器を主体とした作品には最高のマスタリングが施されています。さらにうれしいことに、30ページを越えるブックレットが付属したデジパック仕様となっています。
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Marco Ferradini /
Geometrie del cuore (2001) HI-LITE, HLDC 9073.
(全11曲)
既に20年以上活躍しているベテラン・カンタウトーレ Marco
Ferradini
のニューアルバム。ベテランらしく最近の若手には感じられないイタリア的な哀愁に満ちた作風に好感が持てます。全曲共作を含め自身で作詞・作曲をしており、またアコースティックギターも本人が弾いています。オープニングの
"Alla ricerca di un sogno"
ではイタリアらしいスケールの大きなバラードを聴かせてくれます。続く
"Aria"
はアップテンポなナンバーで、イタリア語によるAORといった趣です。"Sulla
strada dell'amore"
では軽快なテンポに口ずさめるような素直なメロディが印象的で、サビの部分のハイトーンのコーラスがいい味を出しています。タイトル曲の
"Geometrie del cuore"
はキーボードオーケストレーションに乗せて、高音域を生かした彼のヴォーカルが歌い上げる哀愁漂う佳曲です。"Sul
ponte di messina"
はボサノバのリズムに乗せてリラックスしたヴォーカルを聴かせる楽しげな曲になっています。アルバムラストは彼の代表曲である
"Teorema"
の新バージョンで締めくくっています。派手さはあまりないものの、味わい深い大人のポップス作品に仕上がっています。
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Giorgia / SENZA
ALI (2001) Dischi di Cioccolata, 74321840912.
(全13曲)
今年のサンレモ音楽祭入賞曲を含む Giorgia
の最新アルバム。若手女性ヴォーカリストの中では Laura Pausini
が王道イタリアン・ポップス路線で、Irene Grandi
がロック指向なのに対して、彼女は元々はジャズ指向だったようですが、現在ではあまりはっきりとしたスタイルを持っていないようです。とはいえ、本作では全体的にR&B指向が強く、そのためあまりイタリアらしさが感じられないものの、歌のうまさも手伝って完成度の高い作品に仕上がっています。サンレモ音楽祭参加曲である
"Di sole e d'azzurro"
だけはアルバムの中でも異色の正統派サンレモ・ポップス仕様となっていますが、その他の曲はインターナショナル指向のイタリア語によるR&B作品となっており、1曲目の
"senza ali"
から日本で言えばMISIAが歌っていてもおかしくないようなR&B色の濃い曲を聴かせてくれます。また、"Save
the world"
などは安室奈美恵を思わせるダンサブルな曲で、バックダンサーを従えて踊っているようなイメージが浮かんでしまいます。歌のうまさには定評があり、どんなスタイルでもこなせる実力がある彼女ですが、もう少しヴォーカリストとしての個性を確立していかないとインパクトが弱いと感じました。イタリアンポップスというよりもR&Bファン向きの作品だと思います。
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Fausto Leali / IO
CAMMINERÒ ...e altri successi (2001) CGD east west,
8573 85323-2. (全17曲)
ベテラン・カンタウトーレ Fausto Leali
の最新ベストアルバム。このベスト盤が一風変わっているのはいわゆるヒット曲集ではなく、かつて日本でも国内盤が出た
Il Volo との共演盤 "Amore dolce, amore amaro, amore mio
(1975)" と "Io camminerò (1976)" "Leapoli (1977)"
の3枚からの選曲になっていることでしょう。特に "Amore〜"
は11曲中6曲が、"Leapoli"
に至っては11曲中10曲が収録されており、リマスターも施されていることから、これらの作品がアルバム単位でCD化されていない現状では非常に価値あるベスト盤になっています。本来はブルースを基調としたアーティストですが、このころはかなりイタリア色の濃い哀愁のある作風になっています。やはり聴き所は
"Amore〜"の曲で、一聴しただけでそれと分かる Alberto Radius
の引きずるようなギターが舞い、Vince Tempera
のキュンキュン唸るシンセが鳴り響くスリリングな演奏の上を
Fausto Leali
の情熱的なしゃがれ声が熱唱する様は圧巻です。また、"Leapoli"
の方も Radius が参加しており、Stefano Purga
のキーボード群と共に重厚なサウンドを構築しています。ただ、こういった形で発売されると特に
"Leapoli"
は大部分の曲が収録されているため、単体での再発の可能性は低くなったかも知れません。
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Ivan Graziani / i
lupi (1977) Numero Uno, 74321460202. (全8曲)
昨年トリビュートアルバムも制作された Ivan Graziani
の1977年発表のセカンドアルバムのCD化再発盤(1997年リリース)。プログレ関連人脈として有名な人ですが、サウンドの方はフォークロックを基調としています。むしろ高音域を生かしたヴォーカルスタイルに特徴があり、ファルセットを多用したエキセントリックな歌い回しが印象的です。そういうと
Alberto Fortis などが想起されますが、どちらかというと Alan
Sorrenti の初期に近い感じです。本作では Walter Calloni (ds),
Gino D'Eliso (key), Antonello Venditti (p, org), Gaio
Chiocchio (syn)
といった凄腕のミュージシャンをバックに従え、演奏面でも充実した作品となっています。タイトル曲の
"I lupi"
からギターによるシンプルなバッキングに乗せて自由奔放なヴォーカルが全開しており、続く
"Motocross"
で一気に上り詰める様は尋常ではなく、ある種独特のスタイルを感じさせます。こうしたヴォーカルスタイルははっきりと好き嫌いを分け、だめな人は全く受け付けないリスクはあるものの、はまると非常に心地よいものがあります。ただ、この作品前半に山場がありすぎるためか、後半に進むに従ってだんだんヴォーカルのテンションが下がっていくのが気になります。そうは言ってもフォークロックとしての出来は水準以上となってるのでご安心を。
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