Musicadentro

第37号 (27/05/2001)

皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回はカンタウトーレ物の新譜2枚と再結成物を中心にお送りします。Battiato は老いて益々盛んといった感じで、新作を次々とリリースするのには感心させられます。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Franco Battiato / Ferro Battuto (2001) Columbia, COL 502295 2. (全10曲)

イタリア音楽界の巨頭 Franco Battiato の久々のポップ・フィールドでのオリジナル新作アルバム。ここ数年、彼の創作意欲は留まることを知らず、毎年のように各種アルバムをリリースしています。本作は彼自身と盟友 Saro Cosentino の共同プロデュースとなっており、Michele Fedrigotti がピアノとオーケストラの指揮を担当していて、いつものように Battiato 一派が大活躍しています。基本路線は前作 "Gommalacca" の延長上にありますが、より密度が高く全く隙のない作品に仕上がっており、荘厳な雰囲気さえ漂わせています。1曲目の "Running against the grain" にはゲストヴォーカルで Jim Kerr が参加しており、バックに電子音が飛び交う中、クールなヴォーカルがスピード感のある曲に彩りを添えています。"Lontananza d'azzurro" は壮大なストリングスに乗せて語りかけるようなヴォーカルを聴かせ、まるでヨーロッパ映画の一場面のようにゆったりとした時間が流れていきます。また、"Hey Joe" はカバー曲で、前々作 "FLEURs" を思わせるセンスのいいアレンジが施されています。ラストの "Il potere del canto" は11分を越える大曲で、アバンギャルドでありながらも聞き易いという Battiato ならではのハイセンスなポップワールドを繰り広げています。初回限定特殊紙製外装ケース入となっています。

Pupo / Sei caduto anche tu (2001) pull, PCD 2245. (全11曲)

ポップ系カンタウトーレのベテラン Pupo こと Enzo Ghinazzi の最新作。前作の "tornerò" が新録によるベストアルバムだったことから、新曲によるオリジナルアルバムとしては6年ぶりの作品となります。オープニングのタイトル曲 "Sei caduto anche tu" ではギターのアルペジオとストリングスに乗せて、哀愁を感じさせるスローバラードを聴かせてくれます。また、"La nostra storia" は得意の軽快な曲調で、相変わらず爽やかな歌声を聴くことができます。"Il verde del mare" はスチールドラムの音色で始まるトロピカルな曲で、南国風のリズミカルで楽しげな雰囲気を味わうことができます。"Il viaggio" はラップ調のヴォーカルで始まり、女性コーラスを従えたサビで盛り上がる彼には珍しい曲になっています。"L'indifferenza" では叙情的なストリングスの調べに乗せて、語りかけるようなヴォーカルが哀感を漂わせています。全体的に若い頃の作品に較べて哀愁を感じさせる曲が増えており、よりアダルトテイストな感じに仕上がっています。このアルバムは彼の「父」に捧げられているのですが、だからといってこのジャケットデザインはあんまりではないかと思います(地味だし、心霊写真みたいに見える)。内容の方は保証付きの傑作だと思いますのでご安心を。

Garybaldi feat. Bambi Fossati / La ragione e il torto (2000) Il Popolo del Blues, P.D.B. 2000 008-2. (全11曲)

'70年代に活躍したハードロックバンド Garybaldi の再結成アルバム。メンバーは中心人物の Bambi Fossati (vo, g) に加え、Fabrizio Nuovibri (b), Emanuele Strano (ds) のトリオ編成となっています。オープニングの "La ragione e il torto" からディストーションのかかった金属質のギターの音色が全開で、'70年代そのままのギターオリエンテッドなハードロックを再現しています。"Brutto muso" はブルージーなヴォーカル曲で、リズム隊の活躍も印象的です。"Ilde & brando" はいかにもハードロックといったイントロに導かれて、ギターとヴォーカルの畳みかけるような掛合いが懐かしさを感じさせます。ブルースハープの音色に導かれて始まる "Toledo" はブルース色が強く、ギターの音色も抑え気味で歌を聴かせるアレンジとなっています。純粋なハードロックではありますが、イタリアらしい人なつこいメロディを内包しているので、結構聞き易いのではないかと思います。

Pincapallina / Pincapallina (2001) Columbia, COL 501930 2. (全13曲)

今年のサンレモ音楽祭にも参加した新人バンド Pincapallina のサンレモ参加曲を含むデビューアルバム。メンバーは Aua (vo), Paolo Milzani (b, cho), Luca Gallina (g, mandolin, cho), Igor Gobbo (ds) の4人編成となっています。本作では Roberto Colombo がプロデュースとキーボードを担当しています。音の方は'60年代のフレンチ・オールディーズっぽい感じで、イタリアらしさはあまりありませんが、ポップでキュートな楽曲が並んでいます。アルバム全体の印象としてはフランスの Lio のアルバム "Pop model" (1986) のような感じです。オープニングの "Quando io" は今年のサンレモ音楽祭参加曲で、ノスタルジックな曲調に Aua のキュートなヴォーカルが絡む様が印象的です。"Le stelle le stelle" はフレンチ・オールディーズタイプの脳天気な曲調で、陽気なヴォーカルと軽快な演奏が一体となっておめでたい雰囲気を醸し出しています。"Ninnananna-ò" ではフレンチポップスばりのセンチメンタルな曲をキュートなヴォーカルで歌い上げています。アイドルポップスの一言で片づけてしまえばそれまでですが、敏腕プロデューサーの下での肩の凝らない気楽なポップス作品としては良くできていると思います。

Valentina / Valentina (2001) EMI, 7243 531623 2 0. (全12曲)

おそらく10代と思われる新人女性ヴォーカリスト Valentina こと Valentina Maugeri のデビューアルバム。たぶん作詞だと思うのですが、全曲に彼女がクレジットされています。流行のR&B色がほとんどなく、良質なヨーロピアン・ポップス調の曲を少し鼻にかかったスイートな歌声で伸びやかに歌い上げるところが好印象を受けます。オープニングの "È mattino" からストリングスに乗せた軽快な曲を気持ちよさそうに歌っています。"Tutte le volte" ではピアノとアコースティックギターのサポートを受けてゆったりとした曲を軽やかに歌い上げています。"Parole che..." は叙情的なバラードで、ピアノをバックに切々としたヴォーカルを聴かせてくれます。また、"Silvia" では Carmen Consoli に似たフェイクした歌い回しが印象的です。"Nuvole" はミヒャエル・エンデ原作の映画「ネーバー・エンディング・ストーリー」の主題歌のカバーです。ブックレットには Valentina からのメッセージが記されており、このアルバムに対する意気込みが感じられます。これからの活躍が期待できる新人だと思います。

ご意見ご感想などあれば以下にご連絡ください。

ただし、メール・アドレスは画像になっていますのでご了承下さい。

音楽の部屋に戻る

バックナンバー・ホームに戻る