今年のサンレモ音楽祭も無事終了し、参加曲を収録したアルバムも続々リリースされているようですが、まだ手元に入手していないのでそれらは次回以降ということで、今回は年明けにリリースされたものを中心にお届けします。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Timoria / EL TOPO
GRAND HOTEL (2001) Polydor, 549 601-2. (全19曲)
社会派ロックバンド Timoria
の2年ぶりのニューアルバム。メンバーは前作と同じ Diego Galeri
(ds, vo), Enrico Ghedi (key, vo), Illorca (b, vo), Omar
Pedrini (g, vo), Sasha (g, vo), Filippo Ummarino (per)
の6人で、ほとんど全員がヴォーカルを取っています。多彩な音楽性を内包しており、現代的な要素も大胆に導入しています。しかし、基本的なメロディが非常にイタリア的なために、若いカンタウトーレなどにありがちな英米指向は感じられません。本作は全19曲トータル72分超の大作に仕上がっており、彼らの気合いの入りようが感じられます。オープニングの
"Sole spento"
から複数のヴォーカルの絡みが生かされた力強いロックサウンドが展開されています。続く"Cielo
immenso" では New Trolls や Osanna
にも通じる荒々しいフルート(要するに Jethro Tull の Ian
Anderson
スタイル)が大胆に導入されています。ギターのアルペジオで始まる
"Vincent Gallo Blues"
はサックスによるオブリガートが印象的なバラードで、彼らの叙情的な一面が強調された曲となっています。また、"Strumenticomexico"
ではターンテーブルを多用したHIP/HOPスタイルを披露しています。タイトル曲の
"El Topo Grand Hotel"
はオルタナ系のアプローチを採っており、器用なところを聴かせてくれます。期待を裏切らない会心の出来と言えましょう。
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Francesco De Gregori /
Amore nel pomeriggio (2001) Columbia, COL 499893 2.
(全11曲)
ローマ派カンタウトーレのベテラン Francesco De Gregori
の最新アルバム。基本的には Bob Dyran
タイプのフォークロックスタイルのアーティストなので派手な印象は全くありません。1曲目の
"L'aggettivo "Mitico"" は Lalla Francia
のコーラスが全面的にフィーチャーされた曲で、ギターの爪弾きの上を渋めの彼のヴォーカルが呟くように被さるのが印象的です。"Canzone
per l'estate" は親交のあった Fabrizio De André の詞に De
Gregori
が曲を付けたもので、地味ながら静的な美しさを湛えた曲に仕上がっています。"Natale
di seconda mano"
はピアノとアコーディオンのバッキングに乗せて歌い上げるバラードで、切々と訴えかけるようなヴォーカルが魅力的です。"Condannato
a morte" では Toto Torquati
がハモンドオルガンを弾いており、Carlo Gaudiello
の弾くアコーディオンとのコラボレーションが聞き物です。"Il
cuoco di salo'" は Franco Battiato
がプロデュースとアレンジを担当しており、Battiato 一派の
Michele Fedrigotti
による美しいピアノの調べに乗せて、優しく語りかけるようなヴォーカルが胸を打ちます。デジパック仕様ですが、インサートの類が一切なく歌詞カードがついていないのは少し残念です。
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Goblin / Non ho
sonno (Colonna Sonora) (2001) Cinevox, CD MDF 342.
(全14曲)
ホラー/サスペンス映画のサントラを数多く手掛ける Goblin
が再結成され、かつての盟友 Dario Argento
監督の最新作のサントラをリリースしました。メンバーは最盛期のベストメンバーと言える
Agostino Marangolo (ds), Massimo Morante (g), Fabio
Pignatelli (b), Claudio Simonetti (key)
の4人となっています。スリラー映画のサントラということもあるのでしょうが、最盛期の「サスペリア」や「サスペリア2」を想起させる神秘的で不安を助長させるような曲がひしめき合っています。1曲目のタイトル曲
"Non ho sonno" はまさに Goblin
節というべき曲調で、ギターによる不安を引き立たせるカッティングの上をきらびやかなピアノが駆け抜け、重厚なキーボード群による音の壁が押し寄せる様は圧巻です。"Killer
on the train"
ではベースとパーカッションが焦燥感醸し出し、ストリングスキーボードが不安をかき立てるフレーズを次々と奏でます。"Endless
love"
では一転してピアノによる美しい調べに乗せて女性スキャットが漂う静かな曲となっています。再結成に向けていろいろ紆余曲折もあったでしょうが、これぞ
Goblin
という素晴らしい出来映えとなっているので、今後の活躍にも期待してしまいます。デジパック仕様の限定版もリリースされています。
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Marco Masini / Uscita
di sicurezza (2001) Ricordi, 74321831412.
(全14曲)
既にベテランの域に達しつつあるカンタウトーレ Marco Masini
のニューアルバム。本作では前作に比べてロック寄りのサウンドアプローチを採っています。ハーモニカの調べに乗って始まるオープニングの
"La danza della ragione"
から、徐々に盛り上がり中盤から一気にしゃがれたヴォーカルが爆発する特有のスタイルが楽しめます。続く
"Errori"
はロック色の強い曲で、ストリングスの艶やかなバッキングの上を熱唱型のヴォーカルが力強く炸裂します。"Il
bellissimo mestiere"
ではゆったりした曲調に語りかけるようなヴォーカルが哀愁を醸し出しています。"Vai
male a scuola" では Aleandro Baldi
がコーラスで参加しており、サビのところの子供達によるコーラスも印象的です。"E
chi se ne frega"
は彼のしゃがれたヴォーカルを生かしたMetallica
のカバー曲(原題 Nothing else matters)になっています。"Vivere
liberamente"
はほのかなエスニック色を湛えた曲になっており、アルバムのアクセントになっています。"Ci
vediamo"
ではストリングスとピアノのバッキングの上を彼の熱いヴォーカルが熱唱する王道ともいうべきスタイルで曲を盛り上げています。前作に比べると多少方向性が拡散した感がありますが、作品としての完成度は高く、非常に楽しめる出来になっています。
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Alunni del Sole /
L'amore che non finirà (1996) D.V. More Record, CD
DV 5950. (全16曲)
'70年代から'80年代に活躍したラブロックグループ Alunni del
Sole
が再結成され、かつての代表曲を再録した1996年作。メンバーは
Paolo Morelli (vo, p, key), Bruno Morelli (g), Enrico
Olivieri (key), Ruggero Stefani (ds)
の4人となっていますが、元々 Paolo Morelli = Alunni del Sole
の傾向があったので、他のメンバーはサポート的なものと言っていいでしょう。他のラブロックグループがコーラスを主体としたサウンドスタイルを採っていたのに対して、Alunni
del Sole は Paolo
のソロヴォーカルを全面に押し出しており、叙情派カンタウトーレの作風に近いものがあります。オリジナルではほとんどオーケストラと
Paolo
のヴォーカルといった構成だったものが、本作ではキーボードオーケストレーションに置き換えられています。"Concerto"
"E mi manchi tanto" や "Jenny" といった初期のヒット曲や
"Pagliaccio" などの中期の名曲、"Liù" "Tarante'"
といった後期の曲まで幅広く取り上げられており、オリジナル作品がほとんどCD化されていないこともあり、バンドの概要を把握するのに最適な作品となっています。
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