いよいよ2001年を迎え、日本におけるイタリア年となりました。音楽関係ではクラシック関連の企画ばかりが目立っていますが、ポピュラー音楽の企画は今のところほとんどない(サンレモ関係は除く)ようです。そういった訳で、ポップスの方は草の根的な活動でもいいのでみんなで盛り上げていきましょう。
アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数) Collage /
settantaseiduemila (doppio) (2000) Collage, 010.
(全32曲) Pooh
の成功により'70年代半ばに大挙して現れたラブロックグループの中でもコーラスハーモニーの美しさで傑出していた
Collage
の新録とライブ音源による最新2枚組ベストアルバム。アルバムタイトルはデビューから現在までを示す
"1976-2000"
という意味です。今回紹介するのは2枚組完全盤ですが、同タイトルで1枚ずつに分けたバージョン(vol.1
& 2)も発売されています。現在のメンバーは Tore Fazzi (vo,
b), Piero Fazzi (vo, g), Mario Chessa (key, p, vln, cho),
Carmine Migliore (g, cho), Davide Moscatiello (ds, per)
の5人編成で、地元サルデーニャ島を中心に活動しているようです。オープニングを飾る2000年のライブ音源からの
"Scimmia"
では会場からの黄色い声援が飛び交い、現在でも人気のあるところを見せつけてくれます。デビュー曲の
"Due ragazzi nel sole" を始め、"Sole rosso" "Donna musica"
"Concerto d'amore" "La gente parla" "S.O.S"
など、彼らの代表曲をほとんど網羅しており、また20ページに及ぶブックレットも付いておりアンソロジー的な色合いの濃い作品となっています。唯一の難点は自身のレーベルからのリリースのため入手方法が彼らの公式ホームページからのダイレクト販売のみということでしょうか。現在でも精力的にライブ活動を続けているようなので、そろそろ新曲によるオリジナルアルバムのリリースを期待したいところです。 Premiata Forneria
Marconi (PFM) / Storia di un minuto (1972) BMG
Ricordi, 74321 765422. (全7曲) BMG Ricordi が過去のRCAやRicordi
時代の名作アルバムをデジパック、24ビットデジタルリマスター、ゴールドディスク仕様で廉価盤再発しているシリーズからまず1枚ということで、個人的にはやはりこれでしょう。という訳で、PFM
こと Premiata Forneria Marconi
の記念すべきデビューアルバムです。後に世界デビュー盤 "Photos
of ghosts" に収録される "Celebration"
の原曲で、伝統音楽のタランテラのリズムを大胆に導入した "È
festa" や、"The world became the world" としてリメイクされる
"Impressioni di settembre"
など印象的な楽曲が並んでいます。後の作品に比べると叙情的な面が際立っており、瑞々しい感性の表出が本作を特徴付けています。LP時代にはA面B面に分かれていた
"Dove... quando... (Parte 1&2)"
が続けて聴けるのもCD化の利点の一つと言えるでしょう。以前に出ていたイタリア盤CDに比べると格段に音質が向上しているのもうれしいところです。プログレに限らずイタリアンロックのマストアイテムの一つ。全てのイタリア音楽ファンに聴いてもらいたい作品です。 Mario Castelnuovo /
buongiorno (2000) dfv, DFV0004. (全11曲) 再編 Formura 3
などへの楽曲提供で知られる中堅カンタウトーレ Mario
Castelnuovo
の約4年ぶりになるニューアルバム。基本的には地味な作風のアーティストなのですが、アレンジがはまると非常に魅力的な作品に仕上がるという特徴があります。前作がキーボードオーケストレーションによる派手めなアレンジだったのに対し、本作ではアコースティック楽器を多用した緻密で繊細なアレンジが施され、ダイナミックさはないものの彼の幾分くぐもった渋めのヴォーカルと相まって穏やかで暖かみのある作品に仕上がっています。オープニングのタイトル曲ではアコーディオンを効果的に配し、静かに始まりながらもサビで彼らしい盛り上がりを見せ、健在ぶりをアピールしてくれます。"Angeli
con la coda"
はギターの爪弾きに導かれつぶやくようなヴォーカルで始まり、女性コーラスを伴ったサビで盛り上がる曲です。"Montaperti"
ではキーボードオーケストレーションにゲストの Athina Cenci"
の語りが乗るなどの新たな試みも見られます。ラストの
"Amaranta"
では混声合唱を導入し、荘厳な雰囲気を醸し出した音像を繰り広げながらアルバムは終焉を迎えます。派手さはないものの彼らしさの出たとても印象的な作品となっています。 Irene Grandi / verde
rosso e blu (1999) CGD east west, 8573 80521-2.
(全10曲) 若手女性ヴォーカリストの中でも人気の高い Irene Grandi
の今のところ最新アルバム。正統派イタリアンポップスの後継者である
Laura Pausini
と比べるとかなりロック寄りのアプローチが特徴的です。本作では半数の曲でドラムが打ち込みですが、残りの半数は元
Goblin の名手 Agostino Marangolo (ds)
が叩いており、ダイナミックな曲の表現に一役買っています。オープニングの
"Eccezionale" は Carmen Consoli
を思わせる内省的なロックサウンドで、力強いリズムの上を彼女のヴォーカルが自由にすり抜けていく様は実に気持ちいいです。タイトル曲の
"Verde rosso e blu"
は昨年発売されたコンピレーションアルバム「カンターレ・マンジャーレ・ロッソ」にも収録されたミドルテンポながらも乗りのいい曲です。"
Sto peggiorando" ではHIP
HOPのテイストを取り入れるなど色々な試みが見られます。"Francesco"
はロック色の強い曲で、彼女のダイナミックなヴォーカルが楽しめます。"Limbo"
はSheryl Crow
のカバーでフォークタッチの曲です。収録曲が非常にバラエティに富んでいて全体像が掴みにくいのが難点ですが、ヴォーカリストとしての幅の広さを感じ取れる作品です。 Onde Radio Ovest (ORO)
/ Con tutto il cuore... (1996) Sugar, SGR D 77903.
(全12曲) ORO こと Onde Radio Ovest のセカンドアルバム。この当時は
Mario Manzani (g, cho), Alfredo Golino (ds, per), Cesare
Chiodo (b, cho), Valerio Zelli (vo), Mauro Mengali (vo,
cho), Bruno Zucchetti (vo, key) の6人編成でしたが、現在では
Valerio と Mauro の2人で活動を続けているようです。1曲目の
"Quando ti senti sola"
は叙情的で美しいバラードで、キーボードオーケストレーションにヘビィメタルからの影響を感じさせる
Mario のギターが絡む様は圧巻です。続く "Dove ti porta il
cuore"
は一転してポップで軽快な曲で、さわやかなヴォーカルが印象的です。ギターのコードカッティングに導かれて始まる
"Io e lei"
はシンプルながらも哀愁を感じさせるヴォーカルが一際印象的な曲です。全体的に洗練されてスタイリッシュになったラブロックといった趣が感じられ、'90年代には珍しい非常にイタリアらしい音を表現するバンドだと思います。また、スタジオミュージシャンの集合体だけあって演奏水準は非常に高く、安心して聴いていられます。アルバムラストには1曲目のカラオケが収録されています。かなりメンバーが減ったとはいえ現在も活動を続けているようなので、新曲によるアルバムを期待したいところです。
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