第31号
(26/11/2000)
ここのところ体調を崩していた関係で更新が少し遅れてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回はポップ系シンガー3人とプログレ系バンド2組の紹介となりますが、ポップ系シンガーのものはレーベル名を見ていただけると分かるようにレコード会社合併以前のものなので、現在では入手困難になっているようです。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Riccardo Fogli /
romanzo (1996) Fonit Cetra, CDL 401. (全10曲)
もはや元 Pooh
のリードヴォーカリストという肩書きが必要ないほどのベテランシンガーになってしまった
Riccardo Fogli
の1996年のアルバム。彼の場合、バラード系の曲で本領を発揮するタイプなのですが、本作ではまさに王道を行く作りとなっており、シンプルなアレンジにより彼の歌を引き立たせる楽曲が連なっています。オープニングの
"Romanzo" は Guido Morra 作詞、Maurizio Fabrizio
作曲のラブバラードで、ピアノによるシンプルな伴奏にうっすらとストリングスが被さり、彼の叙情的なヴォーカルを引き立てる絶品の仕上がりになっています。"Tutto
quello che hai"
もストリングス中心のアレンジの上を大人の哀愁を感じさせる彼のヴォーカルが歌い上げる佳曲となっています。また、"Il
treno per Parigi"
ではアコースティックギターの爪弾きとボサノバ調のリズムアレンジが曲を引き立てています。"Monica"
でもギターを中心としたアレンジに効果的にストリングスがからみ、哀愁のある曲に仕上がっています。全体として大人の鑑賞に堪えうるヴォーカルアルバムとなっており、彼のヴォーカリストとしての成長の程が伺えます。今年になってベストアルバムがリリースされましたが、そろそろオリジナルアルバムのリリースを期待したいところです。
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Banco del Mutuo
Soccorso / En Concierto Mexico (2000) Sol & Dereb
Records, CD S&D 09/10, (全13曲)
イタリアを代表する現役プログレバンド Banco
の1999年5月28日メキシコ・シティでのライブの模様を収めた最新2枚組ライブアルバム。ファーストからスタジオ最新作
"13"
までのアルバムから万遍なく選曲されており、アンソロジー的な構成になっています。これまでライブアルバムに収録されていなかった
"Brivido" "Sirene" "Moby Dick" "Lontano da"
といった、いわゆるバリバリのプログレ期ではない時期の曲も入っていて、メキシコでの彼らの人気の程が伺えます。さすがに初期の複雑な楽曲群は
Gianni Nocenzi
不在のためか若干音の厚みが不足している感が否めませんが、あくまでもシーケンサーなどに頼らず手弾きにこだわる
Vittorio Nocenzi
の気概を感じることができます。メンバーも来日した時と同様、Vittorio
Nocenzi (key), Rodolfo Maltese (g), Tiziano Ricci (b),
Maurizio Masi (ds), Filippo Marcheggiani (g), Francesco Di
Giacomo (vo)
の6人となっており、ここ数年活動を共にしているメンバーによる鉄壁のコンビネーションを聴くことができます。作品の性質上、メキシコのみのリリースとなっており、イタリアでのリリースおよび国内盤の発売を期待したいものです。
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Pupo / 1996
(1995) BMG Ariola, 74321 31760 2. (全10曲)
ポップカンタウトーレの代表格 Pupo こと Enzo Ghinazzi
の新曲のみによる純粋なオリジナルアルバムとしては最新作となる1995年の作品。本作では大半の曲がプロデューサーの
David Brandes 作曲、Bernd Meinunger, Enzo Ghinazzi
の共作詞となっており、曲作りから2人のプロデューサーが深く関与しています。1曲目の
"La notte"
からいかにも彼らしいアップテンポでキャッチーな曲が展開され、Pupo
節が健在であることをアピールしています。"Solo con te"
ではオープニングと中間部に語りを配し、コーラスを効果的に使った意欲的な構成になっています。"L'angelo
postino"
は彼のもう一つの特徴である優しい歌声によるミドルテンポの叙情的な曲になっています。"Tu"
ではギターの爪弾きの上を語りに近いヴォーカルが被さる導入部から女性ヴォーカルとの掛合いを披露するサビまで一気に聴かせてくれます。アルバム全体がとびきりポップな
Pupo
節で埋め尽くされており、彼の魅力にとりつかれた人には堪らないアルバムに仕上がっています。今年イタリアに行ったときにテレビの生中継で
Bar
で歌う彼を見たのですが、まだまだ元気に活動しているようです。そろそろ新作のリリースを期待したいところです。
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Museo Rosenbach /
exit (2000) Carisch, CL 77. (全10曲)
'70年代を代表するプログレバンドの1つ Museo Rosenbach
が再結成されて新作をリリースしました。オリジナルメンバーで残っているのは
Alberto Moreno (b), Giancarlo Golzi (ds)
のリズムセクションの2人だけですが、専任のヴォーカリストとツインキーボードを含む6人編成となっています。Giancarlo
は 再編 Matia Bazar との掛け持ちですが、キーボードの片割れの
Sergio Cossu は元 Matia Bazar のあの人で、Giancarlo
人脈での参加となっているようです。音の方はさすがに往年の若気の至りを具現化したようなバリバリのヘヴィシンフォニックロックというわけにはいきませんが、明らかにプログレを経由したシンフォニック色のあるロックに仕上がっています。アルバム導入部ではアコースティックギターの爪弾きによる伴奏にヴォーカルが乗る過去にはなかった展開を見せてくれます。続く
"Il terzo occhio"
では乗りのいいベースのリフに導かれてヴォーカル中心ながらロック色の強い演奏を聴かせてくれます。また、"Love"
ではメロトロン音色のキーボードまで飛び出し、"Illuse le
intenzioni"
ではオルガンが唸りを上げるなど往年のファンにバンドの復活を高らかに宣言しているようです。ラストの
"Un porto nel sole"
ではアコーディオン音色のキーボードが活躍するタンゴの影響を感じさせる曲です。Matia
Bazar でもインテリジェンス溢れるキーボードを弾いていた
Sergio Cossu のセンスのいいキーボードプレイが光る1枚。
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Gianni Morandi / UNO
SU MILLE (1985) BMG Ricordi, 74321573812.
(全11曲)
Gianni Morandi
の傑作アルバムの1つとして知られる1985年のアルバムのCD化再発盤(1998年リリース)。今作ではカンタウトーレたちからの曲提供が目立ち、当時としては意欲的な取り組みが感じられます。1曲目の
"Canta ancora per me" は Enrico Ruggeri
作詞の曲で、アップテンポでカラフルなアレンジが施された'80年代らしいポップな作品となっています。続く
"1950" は Amedeo Minghi
の曲で、ストリングスによるアレンジが絶妙でオリジナルよりも盛り上がる出来となっています。タイトル曲の
"Uno su mille" では Morandi
のダイナミックなヴォーカルが堪能でき、彼のヴォーカリストとしてのスケールの大きさが再確認できます。また、"Solo
lui, solo lei" では Amii Stewart
とのデュエットを聴くことができ、息の合ったヴォーカルアンサンブルを楽しむことができます。"Facile
così" は Ivano Fossati
作詞・作曲の曲で、哀愁の漂うヴォーカルと叙情的なアレンジが相まって寂しげな雰囲気を醸し出しています。ラストの
"Questi figli" は Mariella Nava 作詞・作曲で、アレンジを
Luis Bacalov
が担当しており、ピアノを中心としたアレンジながら Bacalov
らしい艶やかなストリングスが曲を盛り上げています。
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