梅雨もほとんど明けてしまったようで、これから夏本番といった趣ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。ニューアルバムが続々と発売されていますが、今回は新譜は2枚と控えめとなっています。Pooh の仕様変更盤など是非紹介したいものがあったのでご了承ください。今回紹介し損なった新譜の類は次回以降に紹介していきたいと思っています。
アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数) Michele Zarrillo / Il
vincitore non c'è (2000) S4, 498152 2. (全11曲) 中堅カンタウトーレ Michele Zarrillo の最新アルバム。前作
"L'amore vuole amore"
がベストアルバムだったので、オリジナルとしては4年ぶりの作品となります。全曲彼自身の作曲で、詞は
Vincenzo Incenzo が担当しており、一部 Michele
との共作となっています。オープニングのタイトル曲はイスラム色のあるスパニッシュテイスト溢れる曲で、今までにないエキゾチックな感じに仕上がっています。続く
"Come è bello il cielo"
は彼のしゃがれ声を生かしたスローなヴォーカルナンバーで、控えめな演奏が逆に曲に彩りを添えています。"Uno
e mai nessuno"
もギターを中心としたアレンジによるエキゾチックな曲で、情熱的なヴォーカルを聴くことが出来ます。"Cercandoti"
ではストリングスを従えてゆったりとした中にも感情のこもったヴォーカルを聴かせてくれます。アルバムラストは1曲目の
"Il vincitore non c'è"
のリフレインで締めくくられており、全体の流れもうまく計算されていて、久々のアルバムなので力が入っているなという印象を受けます。大きな冒険はしていないが、非常に安定した作品となっているところが好感が持てます。 Madreblu /
necessità (1999) Chrysalis, 7243 4 99755 2 1,
(全10曲) Rafaella Destefano と Gino Marcelli による男女デュオ
Madreblu
の最新アルバム。ロック色はほとんどなく、さわやかなシティ派ポップスといった趣に仕上がっています。特に
Rafaella のヴォーカルは独特の浮遊感があり、1曲目の
"Certamente"
からその声の魅力の虜になってしまいます。"Bargiallo"
では幾分アバンギャルド色のあるリズムアレンジの上を北欧ポップスを思わせる清涼感のあるヴォーカルが乗る独自のスタイルを聴くことが出来ます。"Primanotte"
はベースによる重たいリフの上を浮遊感のある Rafaella
の声がメロディを紡ぎ出す、イマジネイション溢れる曲に仕上がっています。アルバムラストの
"Calma"
は反復するリズムの上を口ずさむようなヴォーカルが乗り、ストリングスが曲を徐々に盛り上げていくドラマティックな曲で、曲の終了後数分間の無音部分の後にシークレットトラックが収録されているというおまけ付きです。この手のヴォーカル物としてはブラックミュージックからの影響がほとんど感じられないのが逆に印象的です。 Samuele Bersani /
L'oroscopo speciale (2000) Pressing, 74321757892.
(全10曲) 若手カンタウトーレ Samuele Bersani
の4枚目となる最新アルバム。今年のサンレモ音楽祭参加曲も含まれています。ローマ派カンタウトーレの重鎮でボローニャのドン
Lucio Dalla
人脈のアーティストのようです(レーベルも同じ)。基本的に彼自身で作詞・作曲しており、一部の詞はプロデュースとアレンジを手掛ける
Beppe D'Onghia
との共作となっています。また、彼自身がキーボードを担当しています。歌い上げるでもなく、シャウトするわけでもない、口ずさむようなヴォーカルスタイルが非常に印象的で、リラックスした感じの玄人受けのするタイプだと思います。1曲目の
"Il pescatore di asterischi"
から肩の力の抜けたヴォーカルが聴かれ、少しタイプは違うもののフランスの
Yves Duteil と印象の重なる部分があります。"Morelli Mirko"
はユーモラスなメロディラインを独特の間のあるヴォーカルスタイルで淡々と歌う特徴のある曲です。"Isola"
は坂本龍一/大貫妙子による "Tango"
に彼がイタリア語詞を付けたものです。また、サンレモ音楽祭参加曲の
"Replay"
の地味ながら味わいのある曲です(どう考えてもサンレモ音楽祭向きとは思えないが)。3面開きのデジパック仕様となっています。 Pooh
/ MUSICADENTRO (1994) CGD east west, 4509 97309-2.
(全10曲) 本コーナーのタイトルにもなっている Pooh
の1994年のアルバム "Musicadentro"
が、発売当初の缶入り特殊仕様パッケージからスタンダード仕様になりました。収納の関係から購入を躊躇していた人にはうれしい仕様変更と言えましょう。内容については今更言うまでもないのですが、次作
"Amici per sempre" と並び Pooh
独特のヴォーカルアンサンブルのバリエーションと Dody
の多彩なギタープレイが堪能できる作品となっています。ヒット曲
"Tu dove sei" は Red
のヴォーカルをフィーチャーしたバラードで、Dody
のギターが曲をしっかりとサポートしています。この曲は'94年の冬にイタリアに行った際にラジオなどでよくかかっていたので特に印象に残っています。アルバムラストの
Pooh 流ゴスペル "E non serve che sia natale"
はライブアルバム "Buonanotte ai suonatori"
およびライブビデオ "Un anno di Pooh"
にヴァチカン市国でのオーケストラと混声合唱団を従えてのコンサートからの音源が収録されています。Pooh
クラスになるとイタリア色云々という以前に Pooh
らしさが確立しているためにどのアルバムも安心して聴くことが出来ます。 MIMÍ BERTÈ / Mimí
Bertè (1996) On Sale Music, 52-OSM-010. (全16
曲) 実力派シンガー Mia Martini が本名の Mimí Bertè
名義で'60年代に活躍していた頃の音源によるコンピレーションアルバム。'62年から'64年の曲が収録されており、同時バリバリのアイドル(というか子供)だった彼女の、今からはおよそ想像できない程弾けた歌声を聴くことが出来ます。曲のタイプとしてはアメリカのオールディーズやフランスのイエ・イエなど今となっては懐かしいオールドスタイルな曲が並んでおり、そういった意味ではイタリアらしさはそれ程期待できないかも知れませんが、当時としてはこういったものが最先端の音楽だったのでしょう。万人向けとは言えませんが資料的な価値が高いので紹介してみました。最近再プレスされたので比較的入手し易いのではないかと思います。
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