とうとう梅雨に突入してしまいましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回は女性ヴォーカル物の新譜を中心に、待望の
Gianni Togni
のデビュー作のCD再発というビッグニュース(私にとってだけか?)を交えてお送りします。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Paola & Chiara /
TELEVISION (2000) Columbia, COL 498051 2.
(全12曲)
Paola と Chiara の Iezzi
姉妹による美人デュオの3枚目となるニューアルバム。前作・前々作同様、全曲彼女たちの手による作品で、さらに本作ではアレンジ・プロデュースも
Roberto Baldi と共同で担当しています。1曲目の "Vamos a
bailar"
はタイトルから予想される通りスパニッシュ色の強い曲で、2人のヴォーカルが交互に回されていくのが印象的です。続く"Amoremidai"
ではストリングスにサポートされて、コーラス主体のリラックスしたヴォーカルを聴くことが出来ます。"Buona
stella"
はオーケストラによるスリリングな演奏に乗せて哀愁のあるメロディが歌われるヨーロッパらしい曲になっています。"Viva
ei amor!"
は1曲目同様スパニッシュ色が感じられる曲で、スピード感のあるストリングスが曲を盛り上げています。"+Forte
di te"
では珍しくエレクトリック色の強いアレンジの上を漂う心地よいヴォーカルを聴くことが出来ます。タイトル曲の
"Television"
は彼女たちのペンによるインスト曲で、打ち込みによるリズムの上を哀愁漂うピアノの調べが紡がれていく様が印象的です。ラストは1曲目の
"Vamos a bailar"
のユーロビート風リミックス・バージョンで、オリジナルよりもスピード感のある仕上がりになっていてクラブなどで受けそうな感じです。さらに、シークレット・トラックとして
"Television"
のピアノのみによるリフレインが収録されています。1作毎にスケールアップしていく彼女たちの今後に更なる期待が高まります。
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Gianni Togni /
COM'ERO (1981) M.P. Records, MPRCD 030. (全10曲)
Gianni Togni の1975年に It
レーベルから発売されたファーストアルバム "In una simile
circostanza"
を1981年にジャケットとタイトルを替えて再発したアルバムのCD化再発盤(2000年リリース)。発売当初ほとんど話題にもならずに廃盤になっていたのを1980年以降
"Luna"
などのヒット曲に恵まれ、知名度が上がったために再発されたものと思われます。後のピアノによる曲作りをメインとしたポップな作風とは趣が異なり、ギターの弾き語りを中心としたフォークタッチの曲が並んでいます。当時の
It レーベル所属アーティストがバックアップしており、"Come
semple" では Pierrot Lunaire の Arturo Stalteri
の独特の音色のキーボードを、"Forse" では Canzoniere del
Lazio の Carlo Siliotto
のバイオリンを聴くことができます。しかしながら、本作の聴き所はそういったゲストの多彩さではなく、当時若干17歳の
Gianni Togni
の瑞々しい感性による楽曲そのものであると言えるでしょう。永らく入手困難な作品であったので今回のCD再発は非常に喜ばしいことです。これを機に現在廃盤となっている'80年代の諸作品もCD化して欲しいものです。
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Dirotta Su Cuba /
dentro ad ogni attimo (2000) CGD east west, 8573
82609-2. (全13曲)
イタリアのドリカムこと Dirotta Su Cuba
の約3年ぶりとなるニューアルバム。編成だけでなく音楽的にも共通点があり、特にSimona
Bencini
のファンキーかつソウルフルなヴォーカルスタイルは吉田美和を彷彿させ、とても気持ちよさそうに歌う様は聴いていて心地良いです。曲は主に
Stefano De Donato (b) が作詞を、Rossano Gentili (p)
が作曲を担当しています。オープニングの "Notti d'estate"
はファンキーな演奏に伸びのあるヴォーカルが乗るポップで勢いのあるナンバーで、1曲目から彼らの作り出す音楽に引き込まれてしまいます。タイトル曲の
"Dentro ad ogni attimo"
はストリングスアレンジに乗せてコーラスを多用したしっとりとしたバラードで、スケール感のある作品となっています。先行シングルとなった
"Bang !"
はブラスを導入したファンキーかつスピーディな曲で、ソウルフルな歌声が印象的です。"In
riva al mare"
ではギターとヴォーカルがラテンのリズムの上で絡み合う様が印象的です。また、この曲はアルバムラストによりラテン色を強調したアンプラグド・バージョンが収録されています。
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Mariella Nava / pazza
di te (2000) EMI, 7243 526039 2 3. (全10曲)
中堅カンタウトリーチェ Mariella Nava
の今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む最新アルバム。ほぼ全曲彼女が詞・曲ともに書いており、ピアノも自身が弾いています。タイトル曲の
"Pazza di te"
はリズムを強調したアレンジの上を落ち着きのあるヴォーカルが幾分アンニュイな雰囲気のメロディを歌い上げる佳曲です。"rosso
ciliegia"
はさえずるように歌うスローテンポな曲で、彼女の得意とするタイプの曲調となっています。"Il
nostro profilo"
は小刻みなリズムの上を彼女の低音部に張りのあるヴォーカルがうねるようなメロディを紡ぎ出す印象的な曲となっています。"Les
jeux sont faits"
はフランスっぽい気だるい感じがする曲で、バックに流れるサックスとアコーディオンの調べが哀愁感を引き立てています。"Ecco
la sera"
はピアノの調べに乗せたシンプルなバラードで、彼女のダイナミックなヴォーカルを堪能できます。アルバムラストは
Amedeo Minghi
とのデュエットによるサンレモ音楽祭参加曲で、語りによる掛合いを含む印象的な仕上がりとなっています。なお、この曲のみ
Minghi
との共作となっています。今回は女性らしさを強調してか、胸元の大きくあいたセクシーショットがジャケット内部に掲載されています。
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Piccola Orchestra
Avion Travel / Cirano (1999) Sugar, SGRD 77824.
(全13曲)
今年のサンレモ音楽祭で優勝した Piccolo Orchestra Avion
Travel が昨年発表したアルバム。プロデュースはなんと Arto
Lindsay (アート・リンゼイ)
が担当しています。全体的なイメージとしてはヨーロッパのキャバレーミュージックに近い感じで、フランスの
Arthur H
などと共通する要素があります。また、演奏はアコースティック楽器を多用した無国籍風民族音楽調で、その取り合わせが印象的です。オープニングの
"L'astronauta"
はスネアドラムの上を絡みつくようなヴォーカルが漂う世紀末的な印象の曲となっています。"Piccola
fuoco"
はデカダン溢れるヴォーカルが印象的な曲で、ギターと低音部を強調した管楽器の絡みが曲を盛り上げています。"Cose
nuove"
はクラリネットが大活躍する曲で、ミュゼットに近い曲調が古き良きヨーロッパを想起させます。"Nostromo"
はリズムに特徴があり、はねるようなメロディが懐かしさを感じさせるユーモラスな曲です。全体的に派手さはないものの、どこか懐かしさを感じさせる郷愁漂う作風に好感が持てます。
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