Musicadentro

第24号 (16/04/2000)

今回はサンレモ音楽祭後にリリースされた音楽祭参加曲を含むアルバムを3枚取り上げています。音楽祭での順位は振るわなかったものの、各アーティストのアルバムとも高水準な出来になっています。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Umberto Tozzi / un'altra vita (2000) CGD east west, 8573-81975-2. (全10曲)

今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む Umberto Tozzi の新譜は前作が新録によるベストアルバムだったので、久々の新曲のみの作品となっています。'97年の "aria & cielo" がポップス寄りの作品だったのに対して、本作は'80年代のスタイルに近いロック色の濃いドラマティックな作風になっています。1曲目の "Io e te naturalmente" はフォークロックタッチのアレンジの上を彼の渋めのヴォーカルが乗り、中間部から一気に盛り上がるナンバーです。サンレモ音楽祭参加曲の "Un'altra vita" は落ち着いたヴォーカルを聴かせる曲で、多少地味めながらメロディーの良さが光ります。"Rosa di frontiera" は印象的なピアノのイントロで始まり、切なげな彼のヴォーカルが堪能できる叙情的な曲になっています。"Vagabondi" は非常に彼らしいストリングスを交えたドラマティックで力強さを感じさせる曲で、中間部のコーラスが曲を一層盛り上げています。"Arcobaleno" はカナダの Bryan Adams にも通じるロックバラードで、熱く感動的な歌を聴かせてくれます。"Scivolando" ではかつてのヒット曲 "Gloria" を彷彿とさせるリズムを強調したアップテンポな曲で、元気な所を見せてくれます。全体として彼のメロディーメイカーとしての実力が遺憾なく発揮された作品となっており、非常にお勧めです。

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Gigi D'Alessio / Quando la mia vita cambierà (2000) RCA, 74321739882. (全11+4曲)

Gigi D'Alessio の新譜は今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む11曲に、初回プレスには4曲入りのゴールド仕様CDが付いた2枚組になっています。オープニングの "E vai!!!" から彼らしいナポリポップスが全開で、アップテンポで軽快な曲調の上をいかにもナポリ出身らしい特有の節回しを持ったヴォーカルが乗るスタイルが印象的です。"Non dirgli mai" はストリングスアレンジが印象的な叙情的なバラードで、ハイトーンによる独特の節回しのヴォーカルが一層哀愁感を深めています。"Como suena el corazon" はスパニッシュテイスト溢れる情熱的な曲で、アコースティックギターによる間奏が曲を盛り立てています。"Sole cielo e mare" はイスラムからの影響を受けた Musicanova などのナポリのトラッドタイプの曲で、ゲストの男女のヴォーカルが曲の特徴をうまく引き出しています。タイトル曲の "Quando la mia vita cambierà" は哀愁感たっぷりの曲でサンレモ音楽祭向きではありますが、彼にしてはストレートすぎる感じもします。全体的に南イタリアの陽光を感じさせるさわやかな出来で、非常にイタリアらしいメロディーが満載されており、昨今の英米寄りの作品群に物足りなさを感じている向きには最適です。

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Matia Bazar / brivido caldo (2000) Columbia, COL 497796 2. (全13曲)

今年のサンレモ音楽祭参加曲を含む新生 Matia Bazar の新作は9曲の新曲と4曲の旧曲のリメイクからなる全13曲を収録しています。前作 "Benvenuti a sausalito" 後、ヴォーカリストの産休などで活動休止状態だったのですが、ドラムの Giancarlo Golzi によって再編されました。初代キーボーディストだった Piero Cassano が復帰し、プログラミング・キーボード・バイオリン担当の Fabio Perversi と新任ヴォーカリストの Silvia Mezzanotte が加入した4人編成で再スタートしています。サウンドの方はロック色が大幅に後退し、Piero 在籍時に近いヨーロピアンポップスよりのものになっています。また、新任ヴォーカリストの Silvia の声質が前任者の Laura よりも初代の Antonella に近いこともあり、旧曲もそれほど違和感なく聴くことができます。その新録による旧曲は "Solo tu" "Cavallo bianco" といった初期のナンバーと "Vacanze Romane" "Ti sento" といった日本人にも馴染みがある曲が収録されています。サンレモ音楽祭参加曲のタイトル曲 "Brivido caldo" はミドルテンポの叙情的な曲で、ヴォーカルの盛り上がり方が Antonella 在籍時を彷彿とさせます。また、個人的には中間部のアコーディオンソロが気に入っています。"Aspettando te" 静かに始まり徐々に盛り上がっていくドラマティックな曲で、非常にダイナミックなヴォーカルを聴くことができます。ラストの "Sissy" は意外にもインストナンバーで、フュージョンタッチのピアノとキーボードの絡みが印象的です。新ヴォーカリストは低音から高音部まで幅広くこなせる実力があるようなのでこれからの活動が楽しみです。

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Ivano Fossati / La disciplina della Terra (2000) Columbia, COL 495072 2. (全11曲)

ここ近作でトラッド色のある作風の作品をリリースしていた Ivano Fossati の新作は非常にヨーロピアンな香りの高いアダルトな雰囲気に仕上がっています。トータルアルバムのような構成になっており、全体的に統一されたサウンドイメージになっています。また、彼自身が全曲でピアノなどを弾いており、プレイヤーとしての力量も垣間見せています。1曲目の "La mia giovinezza" はジャズのエッセンス溢れる楽曲の上を Fabrizio De André にも通じる語りに近いヴォーカルが乗る曲で、彼のいぶし銀のような渋い歌声が十二分に堪能できます。タイトル曲の "La disciplina della Terra" は彼の弾くピアノと Gianfranco Lombardi の指揮するオーケストラのコラボレーションが哀愁を誘う珠玉のバラードで、メロディーの美しさが光る一曲となっています。"Iubilaeum bolero" は9分を越える大作で、ピアノが印象的なフレーズを奏でる導入部から一気に盛り上がり、ジャズ的な手法を交えながら進行していくのが印象的で、後半部からフリージャズを思わせるようなインプロビゼーションまで聴くことができます。また、"La rondine" では De Andre' の娘の Luvi De André がゲストヴォーカルで参加しています。ところで、ドラム・パーカッションで参加している Claudio Fossati は彼の息子か何かなのでしょうか。

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Delta V / SPAZIO (1998) Ricordi, 74321614872. (全13曲)

Carlo Bertotti (key, b, vo), Francesca Touré (vo), Flavio Ferri (g) の3人編成のグループ Delta V の'98年のアルバム。基本的にはクラブ系のサウンドですが、Ennio Morricone が Mina に提供した "Se telefonando" を取り上げるなど意欲的な作りになっています。オープニングの "Il mondo visto dallo spazio" はミステリアスで荘厳な雰囲気を漂わせた曲で、11曲目にストリングスによるアレンジのバージョンも収録されています。続く "Senza gravità" では幾分コケティッシュな Francesca のキュートなヴォーカルが冴え渡っています。前述の "Se telefonando" はトリップ系のアレンジが施され、かつての名曲が現代的な感覚で再構築されているのが聴き所です。またこの曲はラストで2つのリミックスバージョンが収録されています。"Tu mi vuoi" では低音部を生かした落ち着いたヴォーカルを聴かせ、違った一面も覗かせてくれます。余談ですが、CDケース裏に記載された曲順が実際のものとは異なっており、インサートに記されているものが正しいようです。

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