Musicadentro

第21号 (10/01/2000)

とうとう2000年になってしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。本当は新年第1弾はライブビデオの特集号にしようと思っていたのですが、調子に乗ってたくさんオーダーしすぎて未だ入手できていないので、レギュラー号での発進になりました。そういうことで特集号の方はいずれお送りできると思います。本年も継続して更新して行くつもりですので、これからもよろしくお願いします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Viaggiatore

Claudio Baglioni / Viaggiatore sulla coda del tempo (1999) Columbia, COL 495070 2. (全12曲)

ベテランカンタウトーレ Claudio Baglioni の最新アルバム。ライブベスト盤であった前作 "A-LIVE" から1年、スタジオ録音の"Anime in gioco" からは2年ぶりのニューアルバムですが、"Anime in gioco" が企画盤で自作曲が含まれていなかったことを考えると、久々のオリジナルアルバムとなっています。近作ではポップ色が強く、比較的軽い音作りになっていたのに対して、本作ではベテランらしい重厚さが感じられる充実した内容になっています。1曲目の "Hangar" はデジタル機材を多用しているものの、非常に勢いのあるアップテンポのナンバーで、彼の力強いヴォーカルを堪能できるアルバムの冒頭を飾るにふさわしい曲になっています。続く "Un mondo a forma di te" と "Stai su" ではクラブ系のアレンジが施されていますが、それでも Baglioni らしさが滲み出ているところが彼のアーティストとしてのオリジナリティの高さを物語っています。"Quanto tempo ho" は重厚なキーボードオーケストレーションに導かれて始まる、'70年代の彼の作風を彷彿とさせる曲になっています。"Cuore di aliante" は彼の力強いヴォーカルが聴けるリズムが強調された曲です。アルバムを通して現代的なアレンジが施されていますが、彼の特徴を最大限生かした文句の付けようもない出来に仕上がっています。カラーデザインのプラスティックケースに入ったデジパック仕様で、ケースとピクチャーCDの一部がジャケットのデザインになっています。

Musica

Luca Barbarossa / Musica e parole (1999) Columbia, COL 495074 2. (全11曲)

前号でも紹介した中堅カンタウトーレ Luca Barbarossa の最新アルバム。前作では彼のルーツミュージックがストレートに反映された内容になっていて、あまりイタリア色が感じられなかったのに対して、本作ではそれらがうまく昇華されており、よりオリジナリティを感じさせる出来となっています。冒頭の "Come si dice ti amo" はギター中心のアレンジの上にさりげないヴォーカルが乗る彼の得意とするタイプの曲で、この手の曲では特に出来が良く優しい歌声が印象的です。続く "Tutto quello che so" はしみじみと歌を聴かせるミドルテンポの曲で、メロディの良さが光ります。"Segnali di fumo" は Tina Arena とのデュエット曲で、彼女の張りのある高音のヴォーカルと彼の優しげなヴォーカルとの絡みが魅力的です。"Domani" はもの悲しげなメロディをチェロが引き立たせる美しい曲になっています。タイトル曲の "Musica e parole" はアップテンポで力強いヴォーカルが聴けるポップなナンバーです。"Piccola ragazza" はアコーディオンが活躍するかわいらしい小曲で、タイトル通りほのぼのとした感じに仕上がっています。

Sconposta

Susanna Parigi / Sconposta (1999) Carisch, CL 75. (全11曲)

若手(?)カンタウトリーチェ Susanna Parigi のニューアルバム。彼女は元々 Claudio Baglioni や Riccardo Cocciante のツアーメンバーとして活躍しており、Baglioni のライブアルバム "Assieme" にキーボードとコーラスでクレジットされています。デビュー盤は1996年に日本の Avanz Records から出ていますが、彼女のHPにも載っていないので日本だけの発売だったのかも知れません。今作もデビューアルバム同様、元 Il Volo の Vince Tempera のプロデュースとなっています。全曲共作を含む自作曲で占められており、彼女自身が全てのキーボード群を担当しており、多才なところを見せています。冒頭の "Gli occhi che ci guardano" は彼女の弾くアコーディオンに乗せて、幾分エキセントリックな独特な歌声を聴かせるトラディショナルな雰囲気を持った曲です。続く "La decima porta" は奔放なヴォーカルを聴かせるアップテンポの曲で、多重録音によるコーラスが独特の雰囲気を醸し出しています。"Il canto dell'amante" はシェークスピアの戯曲にインスパイアされた歌詞が用いられており、演劇的なドラマティックな曲に仕上がっています。ラストは La decima porta" のライブバージョンで、スタジオテイクと異なりピアノの弾き語りになっています。女性アーティストの中ではかなり個性的で、非常にオリジナリティが高い音楽性を持っているので、これからがとても楽しみなアーティストだと思います。

Tornero'

Pupo / tornerò (1998) Live Music Edizioni, NR 21162. (全13曲)

'80年代に大活躍していたカンタウトーレ Pupo こと Enzo Ghinazzi の新録によるベストアルバム。彼は小柄で童顔だったこともあり、アイドル的な人気もありヒット曲にも恵まれていました。当時は'80年代の Morandi との異名もあり、他のアーティストにも楽曲を提供するなど、幅広く活躍していました。1曲目の "Non è un addio (Goodbye is not forever)" は Robin Beck とのデュエット曲で、ダイナミックな曲調と相まって2人のイタリア語と英語の掛合いが見事なイタリア然とした曲です。"Giovanna" はアップテンポでポップなナンバーで、ハイトーンで特徴のある彼のヴォーカルが曲を引き立てています。"In eternità" では哀愁のあるメロディを切々と歌い上げ、情熱的なヴォーカルを披露して叙情的な一面も見せています。"L'ultimo amore" は Petra Magoni とのデュエット曲で、穏やかな雰囲気の曲を優しく包み込むようなヴォーカルで歌っています。"Un amore grande" は彼のメロディセンスの良さを凝縮したような曲で、コーラスアレンジも素晴らしく曲を盛り上げています。"Firenze Santa Maria Novella" はトスカーナ人を自認する彼の郷里に対する思いが感じられる曲です。最近では活動のペースが落ちてしまっている Pupo ですが、彼のポップセンスを再認識するのに最適な1枚だと思います。

Quello

Davide De Marinis / quello che ho (1999) EMI, 5 20661 2. (全10曲)

新人カンタウトーレ Davide De Marinis のおそらくファーストアルバム。彼の声質は、故 Lucio Battisti の若い頃に似ており、歌い回しにも影響が感じられます。本作では全曲共作を含む自作曲となっています。1曲目の "Troppo bella" はギターによるコードカッティングが印象的なアップテンポな曲で、彼のしゃがれ声と女性コーラスの対比がいい味を出しています。"Cambiare aria" ではその Battisti 似のヴォーカルが堪能できる曲です。"Se davvero" はスパニッシュ風のギターが印象的な曲で、彼のかすれ気味なヴォーカルと相まって適度な哀愁を感じさせます。"Solo in città" はユーモラスなメロディを持った曲で、リラックスした楽しげなヴォーカルを聴くことができます。"Come il sale" はドラマティックな展開を持っており、つぶやくように始まり爆発的に盛り上がるヴォーカルが印象的です。タイトル曲の "Quello che ho" はHIP-HOP調の曲で、多様な音楽性を示しています。今年のサンレモ音楽祭の新人部門に参加するようなので、今後の活動に期待したいと思います。

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