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コンサートに行ってきました(Pooh 来日公演編 )

03/05/2012 更新

  2012年4月27日〜29日の3日間、川崎の Club Città で 「イタリアン・プログレッシヴ・ロック・フェスティヴァル 春の陣2012:ロマンの誕生」の一環として、我らが Pooh の奇蹟の来日公演が行なわれたので、すでに各所でいろいろなレポートがアップされていますが備忘録も兼ねて簡単ながらレポートします。今回はなぜか「プログレッシヴ・ロック」 の 括りながら Pooh をメインに持ってくるという暴挙を招聘元が企画したため、集客に若干の不安はあったものの、結果的には3日目のソールド・アウトを含め大盛況だったので安 心しました。

(日程及び出演バンド)
4月27日(金) New Trolls - UT / Pooh
4月28日(土) Le Orme / Pooh
4月29日(日) Locanda delle Fate / Formura 3 /  Pooh


第1日目【4月27日(金)】

第1部 (New Trolls - UT)
 この日の最初の出演バンドは New Trolls - UT ということですが、日本向けに New Trolls の名を冠しているものの、正式なバンド名は Uno Tempore (UT) といい、昨年夏にオリジナルの4人で結成していた La Leggenda New Trolls が空中分解してしまったことから、Gianni Belleno (ds, vo) と Maurizio Salvi (key, vo) が中心となり結成されたバンドです。メンバーは前述の2人に加え、Claudio Cinquegrane (g, vo), Fabrizio Chiarelli (b, vo), Andrea Perozzi (key, vo) の5人で、New Trolls のハード・ロック色の強かった時期の名作 "UT" の曲を中心に、Nico Gianni Frank Maurizio の連名で発表した "Canti D'innocenza - Canti D'esperienza" からの楽曲や後継バンドだった Ibis の "Sun Supreme" からの楽曲など、ある意味このメンバーでないと演奏されないであろうレアな選曲でなかなか聴き応えがありました。
 当初は Vittorio De Scalzi も Nico Di Palo もいない New Trolls なんてと思ってはいたものの、ヴォーカルをとる Fabrizio & Andrea 両名のがんばりもあって予想していた以上に充実した演奏を楽しめました。まだ結成半年くらいのバンドとしてはさすがにベテランが率いているだけあって、 水準以上の出来だったと思います。また、会場で先行発売されていたライブCDが Edel から発売されていることからも彼らの実力の程が分かるのではないかと思いました。
 で、ライブの方ですが、ハード・ロック 版 New Trolls は終わった後は一旦幕を下ろし、定番の "Concerto Grosso" が始まったのですが、ゲストで日本人の女性バイオリニストをファースト・バイオリンとして迎え、 キーボード・オーケストレーションとのコラボレーションを聴かせてくれました。しかし、いかんせんかつての New Trolls の来日公演の際は2回とも生のオーケストラ付きで聴いてしまっているために若干の物足りなさを感じてしまったのも事実です。 本編終了後に、舞台袖に戻らずにそのままアンコールに突入したのですが、 打ち合わせが十分でなかったのかバイオリンのお姉さんが "Adagio" ではなく間違えて "Allegro" を弾き始めてしまったのもご愛敬という感じでした。

第2部 (Pooh)
 オープニングの "Dove comincia il sole" のイントロとともに幕が上がり、そこには本当に Pooh の5人の姿が・・・というわけで、当初告知されていたサポート・ギタリストの Ludovico Vagnone は今回の来日公演には同行しなかったので、5人編成による Pooh のステージを観ることとなったわけです。ステージ上には左手から Red Canzian (b, vo), Phil Mer (ds), Roby Facchinetti (key, vo), Danilo Ballo (key), Dodi Battaglia (g, vo) の順に並び、堂々たる演奏を聴かせてくれました。とはいえ、開始当初は Roby のモニターの調子が悪く歌い出しに手こずった場面もありましたが、大きなトラブルもなく安心して聴くlことが出来ました。詳しくは下のセットリストを見て いただくとして、オープニングから3曲は新作 "Dove comincia il sole" からの重厚な楽曲を披露し、泣きのギターを中心としたドラマティックな演奏を聴かせてくれました。ポップで軽快な  "Canterò per te" と "Io sono vivo" は1コーラスずつのメドレーだったものの、フェスティバルで演奏時間の制約もあるので今回は仕方がないのでしょう。本国でも最新ツアーでは同じ構成だった しね。
 で、ここからは日本向けのセットリストとなり、本国でもほとんど演奏することのない "Infiniti noi" のフルバージョンに続き、本来は Ludovico と弾き分けるところを Dodi がギターを持ち替えずに一人で挑戦した長尺の "Il tempo, una donna la città" や Roby のキーボード・ソロで始まる "Viva" など、聴き所てんこ盛りの選曲で、Pooh のライブ初体験の人にとっても満足のいく選曲になっていたと思います。日本で人気の高い "Parsifal" フルバージョンが終わった時には会場が総立ちになり、スタンディングオベーションが起こったのには感動しました。また、イタリアでもメドレーの一部でしか やらない "Eleonora mia madre" のフルバージョンを聴くことができたのも日本ならではということでしょうね。本編最後は意外にもシングル曲であるため日本では正規CDに収録されたことが ない "Non siamo in pericolo" を持ってくるものの、さすがに会場に多数の Pooh ファンが集結したこともあり、終盤のコーラス(歌詞がないので難易度は高くないいが)を観客も一緒に歌うことができて会場が盛り上がりました。
 アンコールは本国でもリハーサル時くらいしか演奏しない "L'anno, il posto e l'ora" で始まり、怒濤のヒット曲集へと突入しました。今回の来日公演に備え、mixi の「Pooh サポーターズ俱楽部」コミュや italo-pop festa のメンバーに事前に声を掛け「Pooh と一緒に歌おうプロジェクト」と称して主だったコーラス曲をピックアップした成果を発揮する時がいよいよ訪れたわけです。さすがに会場全体では歌える人は 多くはなかったものの、ハイライトとなる "Pensiero" では多くの人が観客のコーラス部分を歌っていて Pooh の面々も驚いていたようです。もっとも、初日にこれをやったことにより後々ハードルを上げることになるわけですが・・・
 ヒット曲集もさすがにフルコーラスというわけにはいかなかったものの、"Tanta voglia di lei" や "Dammi solo un minuto" では2コーラス目からサビに向かうお馴染のライブバージョンでやったり、ワンコーラスのみではあったものの "Nascerò con te" では観客の大合唱が起こり感動的でした。そしてイタリアでは本編ラストで演奏されることが多い "Chi fermerà la musica" でライブは幕を閉じました。初日ということもあり、序盤は Pooh の面々も観客の反応を探り探りにやっていた感は否めませんでいたが、徐々に彼らのテンションも揚がっていったように思いました。
Pooh 日本公演セットリスト
(本編)
01) Dove comincia il sole (parte 1&2)
02) L'aquila e il falco
03) Isabel
04) Canterò per te
05) Io sono vivo
06) Infiniti noi
07) Il tempo, una donna, la città
08) Uomini soli
09) Viva
10) Parsifal (parte 1&2)
11) Eleonora mia madre
12) Non siamo in pericolo
(アンコール)
13) L'anno, il post e l'ora
14) Tanta voglia di lei
15) Dammi solo un minuto
16) Noi due nel mondo e nell'anima
17) Nascerò con te
18) Pensiero
19) Chi fermerà la musica

第2日目【4月28日(土)】

この日は開演前に Pooh の来日公演を記念して、mixi の「Pooh サポーターズ俱楽部」コミュや italo-pop festa の人に声を掛けてミニ・オフ会を開催しました。急な催しだったにも関わらず、私を含め男性7人女性3人の計10名が集まり Pooh 談義に花を咲かせました。参加者の皆さん、楽しい時間をありがとうございました。
第1部 (Le orme)
 この日の最初の出演バンドは Pooh と同世代の Le Orme で、何度かの活動休止を経て'90年代の半ばから再びコンスタントに活動してるため、近年中心人物の Aldo Tagliapietra (vo, b) が脱退したものの、今回の参加バンドの中では Pooh に続きバンドとしての一体感があります。メンバーは Michi Dei Rossi (ds), Michele Bon (key, cho), Fabio Trentini (b, ac-g, vo) の正規メンバー3人に加え、元 Metamorfosi の Davide "Jimmy" Spitaleri (vo) と William Dotto (g) の5人編成でした。
 序盤は現メンバーで制作された最新作 "La via della seta" からの楽曲を繰り広げ、そして日本で人気のある "Collage", "Uomo di pezza" からの曲を挟んで、今回の目玉である "Felona e Sorona" の全曲演奏へ。Aldo がいないことで期待していない人も多かったとは思いますが、タイプは異なるものの実力派ヴォーカリストの "Jimmy" Spitaleri が圧倒的な存在感を示したことにより、かなり充実したライブになったと思います。ただ、歌のある曲の半分くらいしか "Jimmy" はボーカルをとらず、残りは Fabio が担当していましたが、牧歌的なヴォーカル・パートに "Jimmy" の男性的な歌声はマッチしないと思うので、これはこれで良かったと思いました。
 また、今回のライブではギタリストが参加しているため、近年の彼らのサウンドを特徴付ける Michele Bon が操るギター・シミュレーター Alien を聴くことができなかったのは少し残念でした。もっとも、持ってくるのも大変だったんでしょうけど・・・で、本編終了後は一旦舞台袖に戻り、 アンコールでは日本でも人気の高い "Contrappunti" からの名曲 "Maggio" で締めくくりました。
第2部 (Pooh)
  2日目となる Pooh のライブは構成は前日とまったく同じで、セットリストの入れ替えはなし。オープニング当初、Roby のモニターの調子が若干悪かったようでしたが、前日ほどの影響はなくスムーズに進行していきました。前日のライブの手応えが良かったのか、メンバーのテン ションがが開演直後からかなり揚がっていて、前日以上に充実した圧倒的な演奏力と完璧なコーラスワークを堪能できました。個人的には Pooh のライブの醍醐味は Dodi のギタープレイだと思っているので、昨年のツアーでは6人編成でやっていた楽曲を5人でやることにより、大車輪のように活躍する Dodi のギターを堪能できたのは非常に良かったです。普段なら複数のギターを持ち替えるところを、最小編成の機材のためほぼストラトキャスター1本でこなす姿に 感動すら覚えました。
 そして、前日同様に "Parsifal" の完全演奏後にかなり長いスタンディングオベーションが起こったのには彼らも感銘を受けたのではないでしょうか。本編最後の "Non siamo in pericolo" での観客のコーラスも前日以上に盛り上がり、アンコールでの "Pensiero" では Roby が観客に向かってマイクを向ける場面もあり、より会場の一体感が醸成されていったように感じました。

第3日目【4月29日(日)】
この日は本来は Formura 3 を含む3バンドが出演する予定だったものの、4月の冒頭に中心人物の Alberto Radius (g, vo) が心筋梗塞のため入院・手術して安静を余儀なくされたために、残念ながら Formura 3 はキャンセルとなってしました。で、Club Città からのアナウンスでは「Pooh と Locanda delle Fate の演奏時間を当初より延長して」とあったのですが・・・
第1部 (Locanda delle Fate)
 この日の1組目は1977年に唯一の作品 "Forse le lucciole non si amano più" を発表した Locanda delle Fate でした。メンバーはアルバム制作時の Oscar Mazzoglio (key), Giorgio Gardino (ds), Luciano Boero (b), Leonardo Sasso (vo) の4人に、近年の再結成時から加わった Maurizio Muha (p, key), Massimo Brignolo (g) の6人編成でした。それにしても、Banco の Vittorio Nocenzi 並の巨漢になっていたヴォーカルの Leonardo の風貌はインパクトが大きかったです。
 で、演奏の方ですが、個人的には Locanda delle Fate の魅力はドラムとピアノのコラボレーションだと思っているので、ピアニストがオリジナルの Michele Conta でないこととピアノが奥に引っ込んでいるミキシングのため、今一つのめり込めませんでした。また、再結成から日も浅いこともありバンドとしての一体感に欠 けリズムの頭が合わない場面も多く、ELPのような最小編成ならともかく大編成のアンサンブル重視のバンドとしては問題が目につきました。Locanda delle Fate と言えば Hackett スタイルのギターも特徴の1つですが、今回参加しているギタリストは本来はプレースタイルが異なるようで、若干ぎこちなさを感じたのも少し残念でした。
 その他のバンドのパフォーマンスが圧倒的だったこともあり、彼らには少し厳しい評価をせざるを得ませんが、幻の名盤の曲を全曲生演奏で聴くことができた というのは貴重な経験になったと思います。新作からも数曲披露してくれたし、持ち曲が少ないことからアンコールはなかったのものの、精一杯のパフォーマン スをしてくれたのではないでしょうか。
第2部 (Pooh)
 3日目となる Pooh のライブは冒頭からメンバーもノリノリで、高度な演奏力と完璧なコーラスワークによる圧倒的なパフォーマンスを終始披露し、この3日間で最高の盛り上がり を見せてくれました。この日は "Parsifal" の完全演奏後のスタンディングオベーション時に、立ち上がることに戸惑いを見せた観客が若干多かったのが少し気になりますが、プログレ系のライブでは途中 でスタンディングオベーションが起こることはほとんどないので仕方がないのかも知れません。
 それでも、3日目ともなると事前に会場の雰囲気を調べてきた人が多かったのか、観客のコーラスの声も大きく出ていて、 イタリアでのコンサート会場を彷彿とさせる盛り上がりが感じられ、 Pooh の面々も喜んでいたのではないでしょうか。この3日間でかなり手応えを感じたのか、Red がMCで「また来るよ!」と言ってくれたのが印象的でした。計画性がなく発言する傾向のある Red だけにどのくらい信憑性があるかは分かりませんが、可能性がゼロではなくなったと言う意味では再来日公演を期待することは無駄ではないと思います。 何しろ、これまでは来日公演は不可能と言われていたにもかかわらず、 今回関係者の御尽力もあり単独ではないものの日本でライブを観ることができたのですから・・・
 それにしても、事前に「演奏時間を当初より延長して」とアナウンスがあったものの、 結局3日間同じセットリストで最終日の追加曲がなかったことが残念ででした。3人だけでできる "Solo voci" とかならできた気がしますが・・・再アンコールで "Questo sono io" か "Domani" でドラマティックに締め括ってくれれば感動の余韻に一層浸ることができると期待していたのですが、 それは次回があることを祈って楽しみはとっておくことにします。
(最後に)
 今回は1日目は8列目の右ブロック通路脇で Dodi をほぼ正面に、2日目は9列目の中央やや左よりで Red を、そして最終日は11列目のほぼ中央で正面に Roby をと日替わりで Pohh の面々を拝見することができて、充実した日々を送ることができました。
 また、「Pooh と一緒に歌おうプロジェクト」に参加して会場を盛り上げてくれた皆さん、本当にありがとうございました。もし、次回再来日公演が実現したら、 それは皆さんが今回ライブを大いに盛り上げてくれたことがかなり影響しているのだと思います。
 そして願わくば、次回は渋谷公会堂や中野サンプラザホールくらいの規模の会場で単独公演が行なわれるよう、今後とも日本における Pooh の灯を消さないように盛り上げていきたいと思います。

 

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