Musicadentro

第133号 (19/10/2014)

台風の襲来など不安定な季節になってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの秋にかけてリリースされた新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Red Canzian / l'istinto e le stelle (2014) Blu Notte, 8033954533661. (全12曲) CD+DVD

2016年の50周年への準備のために Pooh がバンド活動を休止したことを受けて、前作から28年振りに発表されたセカンド・ソロ・アルバム。 大部分の作詞は Miki Porru が、アレンジは Pooh のサポートでもお馴染の Phil Mer が担当しています。オープニングの Red らしいエレガントでポップな "Elogio del silenzio" に始まり、ストリングスをバックに切々と歌い上げる "Tu ci sei"  や、軽やかなヴォーカルを聴かせる爽やかなメロディが印象的な "Corro verso te" など Red の個性が際立った楽曲が続きます。メンバーのコーラスが入れば Pooh そのものといった感じの "Sia quel che sia" や、Negramaro の Giuliano Sangiorgi が作詞で参加した深遠な叙情を感じさせるバラード "Per un attimo"、Manhattan Transfer を彷彿とさせる "Inesorabilmente" やI vano Fossati が詞を提供した端正なピアノとストリングスをバックにしっとりとしたヴォーカルを聴かせる "Tutto si illumina" など曲も粒ぞろいで、非常に完成度が高いです。ラストはオーケストラをバックにフレットレス・ベースのソロを聴かせるインスト曲 "Sinfonia d'autunno" でしっとりと締め括っています。初回盤に付属するDVD "Lo sguardo e la pelle" には本人及び録音メンバーのインタビューを中心に、本編には収録されていない新曲3曲 (内1曲は Capsicum Red 名義) を含む6曲の映像が収録されています。初回盤は前述のDVDと70ページに及ぶブックレットを封入した化粧箱に収納されています。
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Gianluca Grignani / A volte esagero (2014) Columbia, 88843063782. (全10曲) CD-Text

既に20年近くの活動歴を誇る Milano 出身のロック系カンタウトーレ Gianluca Grignani の約3年振りとなるニュー・アルバム。全曲彼自身の作詞作曲で、ほぼ全曲でギターも弾いています。また、アレンジとプロデュースは本人と Adriano Pennino が担当しています。オープニングの軽快なロックン・ロール "Non voglio essere un fenomeno" では Michael Thompson によるテクニカルなギター・ソロが印象的です。続く "L'amore che non sai" は包み込むようなトロンボーンを従え、しっとりと歌い上げる叙情的なバラードです。Alberto Radius の特徴のあるギター・ソロが堪能できるブルース・ロックの "Il mostro" や、切々と情感溢れるメロディを歌い上げる "Madre"、ざっくりとしたギターのコード・カッティングをバックに彼独特の浮遊感のあるヴォーカルを堪能できるフォーク・ロックの "Maryanne" など様々な表情を見せるヴォーカルを楽しむことができます。また、ベースが唸りを上げるオルタナ色のある "Fuori dai guai" や、消え入るような叙情を感じさせる "L'uomo di sabbia" など曲調もバリエーションが富んでいて最後まで飽きさせない構成になっています。ラストは哀愁のあるメロディを囁きかけるように歌い上げる壮大なバラード "Come un tranmonto" で締め括っています。
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Marina Rei / Pareidolia (2014) Universal Music Italy, 3799768. (全11曲) CD-Text

すでに10年以上の活動歴を誇るパーカッション奏者でもあるカンタウトリーチェ Marina Rei の約2年振りとなる最新アルバム。今回も共作を含めてほぼ全曲彼女自身のペンによる曲で埋め尽くされ、 ほとんどの曲でドラム/パーカッションも自身で演奏しています。パーカッション奏者だけあってリズムが凝っている曲が多く、 一般的なカンタウトリーチェとは作風が異なる特徴があります。タイトなパーカッションが刻むリズムで始まるオープニングの "Avessi artigli" から緊張感のある演奏をバックにリズミカルな彼女のヴォーカルが冴え渡ります。続く "Ho visto una stella cadere" ではエレクトロニクスによる機械的なリズム・パターンと肉感的なドラムが入り混じった演奏をバックに、情感溢れるヴォーカルを堪能できます。 ギターのリフを中心としたノリのいい演奏を従え、軽やかに歌いあげるフォーク・ロック調の "Lasciarsi andare" や、ギターの爪弾きをバックに早口でまくし立てるように歌われる "Sole"、幻想的な雰囲気を漂わせる "Del tempo perso" や、切々と情感溢れるメロディを歌い上げる "Se solo potessi" など曲調も多岐にわたり、細部を作り込んだサウンドを聴くことができます。また、タイトル曲の "Pareidolia" では Zona MC のラップを交えて、リズムに懲りまくった彼女ならではのサウンドに仕上げています。ラストは CCCP のカバー "Annarella" をエレピの弾き語りでしっとりと聴かせてくれます。
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Alberto Fortis / Do l'anima (2014) Formica Edizioni Musicali, 88883720022. (全11曲) CD-Text

'70年代末から活動を続ける ベテラン・カンタウトーレ Alberto Fortis の約9年振りとなる最新アルバム。本作でも全曲彼自身の作詞・作曲で、アレンジと演奏で Lucio Fabbri (g, b, vln, key etc) が全面参加し、自身もピアノ、ドラム、キーボードなどの演奏にプロデュースと多方面で活躍しています。 オープニングのハミングをバックにモノローグを聴かせる "Alla mia maschera" に続き、艶やかなストリングスを従えて軽やかに歌いあげる Biagio Antonacci とのデュエット曲 "Tu lo sai" に始まり、端正なピアノをバックに彼のハイトーン・ヴォイスと燻し銀のような Roberto Vecchioni のヴォーカルの対比が印象的な "Mi fa strano" など、久々のアルバムということもあってかかなり気合いの入った作品になっています。 情感溢れるピアノの調べをバックにしっとりと歌い上げるバラードのタイトル曲の "Do l'anima" や、 トロピカルな雰囲気を漂わせた "Infinità infinita"、ハイトーン・ヴォイスと独特の歌い 回しが印象的なバラード "Aldilà" や、マーチング・ドラムをバックに語りかけるように歌われる Principe" など、9年のブランクを感じさせない高い完成度を誇ります。ラストは哀愁を感じさせるメロディを切々と歌い上げる "Buonamore" で静かに幕を閉じます。初回盤のパッケージはデジパック・サイズのスリット・イン方式の紙製見開きジャケットとなっています。

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Sergio Cammariere / Mano nella mano (2014) RCA, 88843095852. (全11曲) CD-Text

ジャズ・テイストを持った作風で知られる1960生まれの中堅カンタウトーレ Sergio Cammariere の約2年振りの7作目となる最新アルバム。大部分の曲は作曲は彼自身が、作詞の大半は Roberto Kunstler が手掛け、全編に渡って自らピ アノとキーボードを弾いています。ギターの爪弾きと軽やかなアコーディオンをバックに囁くように歌われるオープニングのタイトル曲 "Mano nella mano" に始まり、ジャズ・テイスト溢れるピアノの調べと鼻歌のような軽やかなヴォーカルが楽しめる "L'amore trovato" など、ジャズを基調としたシンプルな演奏をバックに軽快なヴォーカルを聴かせるスタイルを基本としています。トロピカルな雰囲気を漂わせた "Ed ora" や、Fabrizio Bosso によるトランペットが印象的な、しっとりとしたヴォーカルを聴かせるバラード "Le incertezze di marzo"、ラテン・テイスト溢れる軽やかなアレンジで聴かせる Bruno Lauzi のカバーである "Io senza te tu senza me" など曲調のバリエーションも豊富で、やや単調になりがちなヴォーカルを補って余りある多彩なアレンジが施されています。"La vita ci vuole" では囁きかけるようなヴォーカルに寄り添うようにアコーディオンが舞い、"Ancora non mi stanco" では Fabrizio Bosso によるフリューゲルホルンが彩りを添え、ボサノバ調の "Siedimi accanto" では Greta Panettieri によるコーラスを従るなど、演奏面でも聴き所が満載です。 ラストは舞うようなアコーディオンと静謐なピアノによるインストの "Pangea" でしっとりと締め括っています。

 
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