Musicadentro

第131号 (07/06/2014)

いよいよ梅雨に突入しジメジメした季節になってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの春〜初夏にかけてリリースされた新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Susanna Parigi / Apnea (2014) 103 Edizioni Musicali, 14CD1SP01. (全9曲) CD-Text

アーティスティックな作風で知られる孤高のカンタウトリーチェ Susanna Parigi の前作の企画ライブ盤から約1ヶ月、オリジナルとしては約3年振りの6作目となる最新アルバム。ほとんどの曲は自身の作曲で、詞も Kaballa' との共作を含め大部分彼女自身が手掛けており、演奏でもチェンバロ、アコーディオン、ピアノを自分で弾いています。 静謐なピアノに導かれて始まるオープニングの "Quello che no so" から哀愁漂うメロディが全開で、続く "Donne esoteriche" では少女コーラスや管楽器などを交えてシアトリカルなヴォーカルを聴かせてくれます。艶やかなヴァイオリンが響き渡る叙情的な "Tutte le cose si attaccano addosso" や、アコースティック・ギターとエレクトロニクスが融合したリズミカルな "L'umono che cammina"、少女コーラスやアコーディオンを効果的に配しシアトリカルな展開を見せる "Che noia" など曲調も多彩で飽きさせません。リリカルなピアノに乗せてしっとりと歌い上げる "Venivamo tutte dal mare" や、'80年代の Battiato を想わせるエレポップと壮大なメロディが融合した "Filtro elettronico"、アコースティック・ギターの爪弾きをバックに軽やかに歌いあげる "Carica erotica" などアレンジのバリエーションも豊富で、色彩豊かなサウンドを楽しめます。
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Cesare Cremonini / Logico (2014) Trecuori, 0602537826704. (全11曲) CD-Text

もはや元 Lùnapop という肩書きが不要になるほどの人気カンタウトーレ Cesare Cremonini の約2年振りとなる5thアルバム。一部 Alessandro Mognanini (g, key) と Davide Petrella との共作があるものの、ほぼ全曲彼自身の作詞・作曲になっていて、全ての曲で彼自身がピアノやギターなどを演奏しています。また、今回も Lùnapop 時代からの盟友 Nicola Balestri (b) がサウンド面を支えています。艶やかなストリングスによるイントロ "Intro blu" に導かれた "Logico #1" ではきらびやかな音色のキーボードとピアノが重厚なサウンドを構築し、ドラマティックなヴォーカルが冴え渡る佳曲です。続く "Greygoose" では一転して軽快なリズムをバックに爽やかなメロディを歌い上げています。叙情的なメロディをしっとりと歌い上げる "Io e Anna" や、ウェスタン調の "John Wayne"、モータウン調のリズムが印象的な "Vent'anni per sempre" などアレンジにも工夫が見られます。また、ワルツのリズムに乗せて切々と歌いかけるノスタルジックな "Quando sarò milionario" や、ピアノとストリングスをバックに切々と歌い上げるバラード "Cuore di cane" など叙情的な曲も多く、バリエーションに富んだポップス作品に仕上がっています。初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。
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Conqueror / stems (2014) Ma.Ra.Cash Records, MRC 040 CD. (全8曲)

2003年にデビューした若手シンフォニック・ロック・バンド Conqueror の約4年振りの5作目となる最新アルバム。前作からギタリストとベーシストが交代し、サウンドに彩りを添えていた Sabrina Rigano (fl, sax) が脱退して Simona Rigano (vo, key), Natale Russo (ds, per), Ture Pagano (g), Peppe Papa (b) の4人編成になっています。 目まぐるしく曲調が変化していくオープニングの11分近い大曲 "Gina" から新加入のベースとギターが活躍し、これまでリードを執ることが多かった管楽器に替わってギターの比重が高くなっています。 きらびやかな音色のキーボードが幾重にも重なり、叙情的なヴォーカル・パートを盛り上げる "Di notte" や、ギターとキーボードがせめぎ合う重厚なシンフォニック・ロックを聴かせる "False idee" などシンフォ系プログレの王道を行く曲が多く、一方で可憐なヴォーカルを生かしたポップ感覚溢れる "Un'altra realtà" や叙情的なメロディをしっとりと歌い上げる "Sole al buio" のような楽曲も魅力的です。叙情的なオープニングから次第にドラマティックに展開していく "Sigurtà" ではこのバンドの特徴である引きの美学が見え隠れし、イタリアの中でも彼らならではの作風を楽しむことができます。 初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。
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Mario Castelnuovo / Musica per un Incendio (2014) Nicipic Records, INC 179. (全12曲)

すでに30年以上のキャリアを誇る個 性派カンタウトーレ Mario Castelnuovo の約8年半振りとなるニュー・アルバム。全曲彼の作詞・作曲で、演奏面でもギターやウクレレを自身で弾いています。雷鳴とともに始まるオープニングの "Annie lamour" から彼の低音ヴォイスを生かした囁きかけるようなヴォーカルをドラマティックなアレンジで盛り上げています。しっとりとしたフォーク・ロックを聴かせる "Mandami a dire" や、アコースティック・ギターの爪弾きをバックに軽やかに歌いあげる "A certardo fa freddo"、艶やかなストリングスをバックに囁きかけるように歌われる "Gli amanti" や哀愁漂うアコーディオンのオブリガートが印象的な "Gli innamorati coi capelli bianchi" など一聴すると地味な楽曲が多いものの、細部まで手の込んだ緻密なアレンジにより非常に完成度の高い作品に仕上がっています。また、ゲストに Johnny Di Tacco を迎えた "Torna a casa lassie" や BIanca Giovannini を迎えた "Trasteverina" といった本人はヴォーカルを執らない楽曲が収録されるなど自分の歌にこだわらない姿勢も彼らしいです。中部ヨーロッパ的な曲調を男性コーラスが盛り上げる "Canto della povera gente" など彼ならではの楽曲も収録されています。初回盤のパッケージはデジパックサイズの紙製化粧箱仕様となっています。

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Rossana Casale / Il signor G e l'amore (2014) Zenart Management, 8033954533517. (全13曲) CD-Text

ジャズとポップスの2つのフィールドで活躍するカンタウトリーチェ Rossana Casale の前作から約7年半振りとなるニュー・アルバム。今回は Giorgio Gaber のトリビュート盤として彼の楽曲をジャズ・アレンジで聴かせてくれます。端正なピアノに導かれて始まるオープニングの "Sostiene l'amore" から50代とは思えないほどの可憐な歌声でしっとりと歌い上げています。ウッド・ベースとピアノを中心にヴァイオリンなどが艶やかに響き渡るジャージーな アレンジの "Amore difficile amore" では絞り出すような情感溢れるヴォーカルが魅力的です。重厚なベース音をバックに囁きかけるように歌われる "Chissà dove te ne vai" や、リズミカルなピアノとサックスによるオブリガートが印象的な "Il corpo stupido"、叙情的なメロディを奏でるサックスが哀愁を誘う "Quando sarò capace d'amore" など落ち着きのあるアレンジの楽曲が並び、彼女のコケティッシュなヴォーカルと相まって消え入るような叙情を感じさせます。 また、軽やかなヴォーカルを聴かせる "Piove" や "Torpedo blu"  のようにジャズ・アレンジを生かしたムーディーな楽曲も魅力的です。企画盤ではあるものの、彼女のヴォーカルの魅力を堪能できる1枚に仕上がっています。 初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。

 
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