Musicadentro

第126号 (02/06/2013)

早くも梅雨に突入しジメジメした日々がやってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの春に発売されたアーティストの新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Nek / Filippo Neviani (2013) Warner Music Italia, 5053105592821. (全10曲) CD-Text

人気中堅カンタウトーレ Nek が本名をタイトルに冠したオリジナルとしては約4年振りとなるニュー・アルバム。今回は共作を含めて大部分が自作曲で占められ、 ほとんどの演奏も自分で行なっています。また、半数近くの曲で後述する Federica Camba が主に作詞で参加しています。重厚なベース音で幕を開けるオープニングの "Hey Dio" から彼の低音域を生かしたヴォーカルが冴え渡る大人のロック・サウンドを聴かせてくれます。 ざっくりとしたギター・リフに乗せてイタリアらしい哀愁を感じさせるメロディを高らかに歌い上げる "Congiunzione astrale" や、囁きかけるように始まり次第に疾走していく "Dentro l'anima"、ギターのアルペジオに乗せて叙情的なメロディをしっとりと語りかけるように歌う "La meta' di niente" など、いぶし銀のような味わい深い楽曲が続きます。また、軽快なロックンロールの "Uno come me" や、ギターのコードカッティングをバックに軽やかなヴォーカルを聴かせるポップ色の強い "Verra' il tempo" など各所にアクセントのある曲を配し、アルバムを通して聴いても飽きのない巧みな構成になっています。
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Federica Camba / buonanotte sognatori (2013) Universal Music Italia, 0602537278411. (全12曲) CD-Text

上記の Nek の新作の他、Laura Pausini や Alessandra Amoroso などへの楽曲提供で知られる若手カンタウトリーチェ Federica Camba の約3年振りとなるセカンド・アルバム。今回もアレンジとプロデュースを共同で担当している Daniele Coro との共作を含め全曲自身で作詞・作曲しています。また、今回は演奏面でも全編にわたりアコースティック・ギターを自身で弾いています。オープニングを飾る "Baciami tu" からしゃがれ声と言ってもいい独特の声で絞り出すようにシャウトする内省的なロックを聴かせてくれます。重厚な演奏をバックに少し突き放したように歌う "Una cosa grande" や、アコースティック・ギターのつま弾きに乗せて切々と歌いかける "Quanto amore hai"、軽快なフォーク・ロックを聴かせる "La mia mano" など曲のバリエーションも豊富です。端正なピアノの調べに乗せて叙情的なメロディをしっとりと歌い上げる "Nina" や、アコースティック・ギターの響きを生かした語りかけるようなバラード "Piccola" など、シンプルながら趣深い楽曲を要所に配するなど、アーティストとしての底力を感じさせます。ラストはコーラスをバックにモノローグを綴るタイトル曲の "Buonanotte sognatori" で締め括っています。初回盤のパッケージはデジパックサイズの見開き紙製ジャケット仕様となっています。
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Museo Rosenbach / Barbarica (2013) Immaginifica, ARS/IMM 1017. (全5曲) CD-Text

今年の4月に来日公演を果たした'70年代を代表するプログレバンドの1つ Museo Rosenbach の再々結成されてから2作目、オリジナルとしては初となる最新作。メンバーは前回の再結成時にも参加していた Alberto Moreno (key), Giancarlo Golzi (ds) の2人と Il Tempio delle Clessidre から復帰した Stefano "Lupo" Galifi (vo) の3人のオリジナル・メンバーに、若手の Sandro Libra (g), Max Borelli (g, vo), Fabio Meggetto (key), Andy Senis (b, vo) の4人を加えた前作のスタジオ・ライブ盤や4月の来日公演と同じ7人編成となっています。重厚なキーボードで始まるオープニングの "Il respiro del pianeta" から全盛期を思わせるハードな演奏とダイナミックなヴォーカルが絡みつく切り返しの多い展開の典型的なヘヴィ・シンフォが繰り広げられ、 否が応でも期待が高まります。続く "La coda del diavolo" ではミステリアスな音色のキーボードをバックに切々と歌い上げる Stefano の男性的なヴォーカルが冴え渡り、その後の畳みかけるような演奏との対比が印象的です。北アフリカを思わせる導入部が印象的な "Abbandonati" や、アルバム中唯一来日公演で演奏されなかったキーボード・ラビリンスが繰り広げられる叙情的な "Fiore di vendetta"、クラシカルなオープニングから次第に畳みかけるような演奏へとなだれ込む "Il re del circo" など、どの曲も聴き所満載で再結成物では異例とも言える完成度を誇ります。 初回盤のパッケージは3面開きのデジパックサイズの紙製ジャケット仕様となっています。
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Cristiano De Andre' / Come in cielo cosi' guerra (2013) Nuvole Production, 0602537338108. (全10曲) CD-Text

故 Fabrizio De Andre' の息子で自身もカンタウトーレの Cristiano De Andre' のオリジナルとしては約12年振りとなるニュー・アルバム。プロデュースとアレンジは Corrado Rustici が担当しており、演奏に関してもギターやキーボードなどで全面的に参加しています。地中海トラッド色が漂うオープニングの "Non e' una favola" から Fabrizio からの影響を感じさせるものの、よりロック色の強いノリのいいフォーク・ロックを聴かせてくれます。 ゆったりとしたリズムに乗せて叙情的なメロディをしっとりと歌い上げる "Disegni nel vento" や、アコースティック・ギターをバックに語りかけるようなヴォーカルを聴かせる "Credici" など声質が似ていることもあり、父 Fabrizio の陰がちらつくのもご愛敬です。一方でレゲエのリズムを導入し、ウェスタン調の展開を見せる "Il vento soffiera'" や、アンビエントな響きを湛えた "Ingenuo e romantico"、Ligabue を思わせる力強いヴォーカルが印象的な大人のロック作品 "Sangue del mio Sangue" など、彼独自の路線の曲も要所に配され、全体的にバランスの取れた作品となっています。 アルバム・ラストは叙情的な演奏をバックにほとんど語りに近いヴォーカルを聴かせる "La bambola della discarica" でしっとりと幕を閉じます。初回盤のパッケージは見開きデジブック仕様となっています。

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Erica Mou / Contro le onde (2013) Sugar, 8033120983627 (全10曲) CD-Text

Puglia 州 Bisceglie で1990年に生まれた若手カンタウトリーチェ Erica Mou こと Erica Musci の約2年振りのセカンド・アルバム。ほとんどの曲は彼女自身の作詞・作曲となっています。 リズミカルなピアノをバックにややアンニュイなヴォーカルが軽やかに歌いあげるオープニングの "Mettiti la maschera" から軽快なポップ・ロックを聴かせてくれます。続く "Non dormo mai" では中低音域を生かした気怠いヴォーカルで大人の女性を演出しています。しっとりとしたメロディをファルセットを交えながら切々と歌い上げる "Dove cadono i fulmini" や、リズムを強調し疾走感のあるロック・ナンバー "Il ritmo (Frequenza obbligatoria)"、哀愁を感じさせるメロディをダイナミックなヴォーカルで聴かせるタイトル曲 "Contro le onde" など曲調やヴォーカル・スタイルのバリエーションが豊富です。畳みかけるパーカッションをバックにロック色の強いヴォーカルを聴かせる "Mentre mi baci (Scena madre)" や、アコースティック・ギターの弾き語りの "Romanzo storico" でのバッキングのキーボード・オーケストレーション、オルゴールを思わせる音色のキーボードに導かれた "Il genio" などで聴かれる少し変わった音色のチョイスにも個性が感じられます。アルバム・ラストの "Monti di giaccio" でもフェリーニの映画音楽にも通じる大道芸的なアレンジが施され、一筋縄ではいかない作品に仕上がっています。 初回盤のパッケージはデジパックサイズの紙製化粧箱仕様となっています。

 
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