Musicadentro

第124号 (09/02/2013)

また更新がしばらく空いてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回は昨年の秋〜冬に発売されたアーティストの新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Franco Battiato / Apriti sesamo (2012) Mercury, 0602537174300. (全10曲) CD-Text

イタリア音楽界の巨匠 Franco Battiato のポップス作品としては久々の新作となるニューアルバム。詞は全曲 Manlio Sgalambro との共作で、作曲は全て自身で手掛けています。オープニングの "Un irresistibile richiamo" からクールな曲調に顔を覗かせる淡い叙情が印象的な Battiato 節が全開で、唯一無二の音世界が楽しめます。続く "Testamento" ではエレクトロニクスとストリングスが絶妙に融合した演奏をバックに彼のクールな歌声が映えます。壮大なストリングスをバックに叙情的なメロディを奏でる "Quand'ero giovane" や きらびやかな音色のキーボードを従え淡々と歌い上げる "Eri con me"、アラビア風のエキゾティックなバッキングが印象的な "Passacaglia" など各曲に工夫がなされ、聴き手を飽きさせない作品となっています。また、冷徹な叙情性が感じられる "Caliti junku" や "Aurora" など'80年代の作品を思わせる曲もあります。そして何故かボーナストラック扱いのアルバム・タイトル曲 "Apriti sesamo" でラストを締め括っています。 初回盤のパッケージはタイトルが印字された透明なスリップケースがついた3面開きのデジパック仕様となっています。
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Grazia Di Michele e Paolo Di Sabatino Trio / Giverny (2012) Rai Eri, 0208230RAT/RTP0268 (全12曲) CD-Text

ほのかにトラッドの香りが漂う作風とアンニュイな歌声で人気のカンタウトリーチェ Grazia Di Michele の約3年振りの最新アルバム。今回は Paolo Di Sabatino (p) 率いるジャズ・トリオによるジャージーな演奏をバックにしているため、持ち味のトラッド色は若干控えめになっています。オープニングのタイトル曲 "Giverny" からピアノを中心としたジャージーな演奏をバックに大人の女性を意識したようなムーディーなヴォーカルを聴かせてくれます。続く "La luna balla il tango" ではアコーディオンを効果的に使い、タンゴのリズムに乗せてしっとりと歌い上げています。 ジャズ・トリオによるシンプルな演奏に乗せてキュートなヴォーカルを聴かせる "Pettini e pettinini" や、柔らかな音色のソプラノ・サックスに導かれて哀愁を帯びたメロディを歌い上げる "Dove mi pedro"、ラテンフレーヴァー溢れる "Passo a due" など曲調もバラエティに富んでおり、彼女のヴォーカルの魅力を堪能できる作品となっています。 また、包み込むようなストリングスとピアノをバックに叙情的 なメロディをしっとりと歌い上げる "L'arte dell'incontro"のようにスタンダードな王道ポップスも魅力的です。 なお、初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。
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Francesco Guccini / L'ultima thule (2012) Capitol, 5099972510322. (全8曲)

音楽活動からの引退を表明したフォーク系ベテラン・カンタウトーレ Francesco Guccini のラスト・アルバム。会話によるオープニングに導かれて淡々と物語を紡ぎ出す渋いヴォーカルが印象的な8分を超える大作 "Canzone di notte n. 4" に始まり、ギターの爪弾きをバックにオーソドックスなフォーク・ロックを聴かせる "L'ultima volta" や、アラブ風のエキゾティックなオープニングから力強いヴォーカルを聴かせる "Su in collina" などアレンジにも工夫が施されていますが、あくまでも主役は彼の詞とヴォーカルであるのは潔いです。フェリーニの映画音楽のような雰囲気を漂わせた "Il testamento di un pagliaccio" のように新機軸を打ち出した曲もあり、シンプルな演奏をバックにしっとりと歌い上げる "Notti" や 囁きかけるようなヴォーカルが印象的な "Gli artisti" のようにヴォーカリストとしての魅力がひしひしと感じられる曲も収録されているだけに、これが最後の作品となってしまうのが本当に惜しいです。 ラストのタイトル曲 "L'ultima thule" での力強い歌声が作品の最後を潔く締め括っています。なお、初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。
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Francesca Michielin / Riflessi di me (2012) RCA, 8725457532. (全13曲) CD-Text

人気オーディション番組 X Factor 出身の若干18歳の若手女性シンガー Francesca Michielin のデビュー・ミニ・アルバムに続くファースト・フル・アルバム。今回は Elisa が曲や演奏で全面的にバックアップしており、Francesca 自身も数曲で作詞や作曲を手掛けています。端正なピアノに導かれたオープニングの "Sola" から叙情的なメロディを歌い上げる可憐でありながらダイナミックな彼女のヴォーカルを楽しむことができます。 きらびやかな音色のキーボードをバックに幾分ロック色を含んだ力強い歌声を聴かせる "Arcobaleni" や切々と語りかけるようなヴォーカルが印象的な "Quello che vorrei"、多少ハスキーな歌声で絞り出すように歌い上げる "Mai piu'" などヴォーカル・スタイルが一本調子ではなく、幅広い曲調に対応できているので聴き所が多いです。 哀愁を感じさせる叙情的なメロディをドラマティックに歌い上げる "Se cadrai" やファルセットやシャウトを織り交ぜたヴォーカルを堪能できる "Tutto quello che ho"、切々と訴えかけるようなヴォーカルが印象的な "Distratto" など彼女の歌声を純粋に堪能できる曲も多数収録されています。今後に期待が持てる注目の若手女性ヴォーカリストの筆頭に挙げられるのではないでしょうか。

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Ivano Fossati / Live - Dopo tutto (2012) IL Volatore, 5099943387526. (全16曲)

ライブ活動からの引退を表明したベテラン・カンタウトーレ Ivano Fossati のラスト・ツアーの模様を収録したライブ・アルバム。前作 "Decadancing" 発表後のツアーからの音源で構成され、Pietro Cantarelli (p, key, vo), Andrea Fontana (ds, perc), Claudio Fossati (ds, pec), Max Gelsi (b), Riccardo Galardini (g), Fabrizio Barale (g, vo), Martina Marchiori (cello, key, p) らのバンドを率いて、自身もピアノやギターなど各種楽器を演奏しています。オープニングとなる "Viaggiatori d'occidente" から彼らしい渋い歌声と堅実なバックの演奏が一体となった素晴らしいステージの模様を感じとることが出来ます。軽快なフォーク・ロックを聴かせる "Ventilazione" やブルース色のある演奏が印象的な "La decadenza"、畳みかけるような演奏をバックに力強く歌い上げる "Quello che manca al mondo" などバランスの取れた自身のキャリアを総括するような選曲で聴き手を飽きさせません。 ジャージーな演奏をバックにエンディングに向けて自身でフルートを吹きまくる "Stella benigna" やピアノの弾き語りでしっとりと聞かせる "Settembre" などライブならではの演出も楽しめます。また、最近の曲だけでなく "La musica che gira intorno" や ラストの "La construzione di un amore" などの初期のヒット曲も収録されているのでベスト選曲のライブ盤としてもお勧めです。

 
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