Musicadentro

第119号 (02/07/2011)

未だ梅雨が明けず、ジメジメした日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの春〜初夏に発売された男性アーティストの新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Nomadi / Cuore vivo (2011) Segnali Caotici, 8032732271627. (全10曲) CD-Text

結成からすでに45年を超えるベテラン・ロック・バンド Nomadi のオリジナルとしては2年振りとなる最新アルバム。とは言っても、今回は彼らのデビューから最初の10年間にあたる1967-1977の間に発表された 8曲のリメイクに新曲2曲を加えたセルフ・トリビュート・アルバムとなっています。メンバーは Beppe Carletti (key), Cico Falzone (g), Daniele Campani (ds), Danilo Kakuen Sacco (vo, g), Massimo Vecchi (b, vo), Sergio Reggioli (perc, vln, vo) の6人で、1999年以来不動のラインアップとなっています。先行シングルにもなったオープニングを飾る新曲 "Toccami il cuore" からドラマティックな楽曲を Danilo が力強く歌い上げる Nomadi らしさが全開で期待が持てます。Mogol / Lavezzi コンビによる1971年のヒット曲 "Non dimenticarti di me" では艶やかなストリングス系キーボードとハードなギターが歌を盛り上げています。"Un figlio dei fiori non pensa al domani" は Kinks のヒット曲 "The dealth of a clown" のカバーで、Sergio のバイオリンにより軽快なロックナンバーに仕上がっています。オリジナルの Augusto Daolio を彷彿とさせるソウルフルなヴォーカルを聴かせる "Isola ideale" に続いて、ケルティックなアレンジの新曲 "Cosa cerchi da te" では力強いトラッド・ロックを披露しています。また、軽快なロックンロールに生まれ変わった最初期のヒット曲 "Noi" や、しっとりとしたバイオリンが寄り添うような "Un po di me"、レゲエ調にアレンジされた "La storia" など原曲の良さを生かしつつ新たな息吹を吹き込んでいます。
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RAF / Numeri (2011) Columbia, 88697907242. (全11曲) CD-Text

ロック系カンタウトーレ RAF こと Raffaelle Riefoli の最新アルバム。今回も全曲自身で作詞・作曲しており、また全ての曲でピアノやギター、パーカッションなどを演奏しています。オープニングのタイトル曲 "Numeri" はゲストの Frankie Hi-NRG MC のラップと Nathalie のコーラスを主体に組み立てられたヒップホップ調の曲で、主役の RAF はサビの部分だけ前面に出るという異色の作品となっています。続く、端正なピアノに導かれた "Senza cielo" では叙情的なメロディをしっとりと歌い上げる珠玉のロック・バラードを聴かせてくれます。エッジの立ったオーケストラが切れ込んでくる "Un'emozione inaspettata" ではリズミカルなメロディ・ラインをダイナミックに歌い上げています。ブルース色のあるギターの爪弾きをバックに囁きかけるように歌われる "Nuovi Mondi" やファルセットを多用した軽やかなRAF流AORを聴かせる "Controsenso"、沈み込むようなピアノをバックに切々と歌い上げる "Un tempo indefinito" など派手さは少ないものの、曲のバリエーションも豊富で飽きさせません。 また、しっとりとしたピアノに導かれてイタリアらしい人懐こいメロディを高らかに歌い上げる Il mio scenario" のように今後のライブの定番になりそうな楽曲も含まれていて楽しみです。ちなみに、ジャケ写に映っている両側の風景は大阪の繁華街のものだったりします。

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Vittorio De Scalzi / Gli occhi del mondo (2011) Aereostella, ARS FV / 1007. (全13曲) CD-Text

New Trolls のリーダー Vittorio De Scalzi のソロ名義での2作目となる最新アルバム。参加メンバーは彼のサイド・プロジェクト Il Suonatore Jones のメンバーや“Concerto Grosso - The Seven Seasons”や来日公演でもお馴染の Stefano Cabrera (vcl) を中心とした White Light Orchestra に加え多くのゲストを迎えて制作されています。今回は同郷の詩人である故 Riccardo Mannerini の詩をモチーフにして、Fabrizio De Andre' などのGenova 派カンタウトーレからの影響を強く感じさせる地味ながらも味わいの深いカンタウトーレ作品に仕上がっています。 ノイジーなストリングスで始まるオープニングの "Il ritorno" から Vittorio の渋いヴォーカルを生かしたブルース色のあるオールド・スタイルのロックを聴かせてくれます。続く "Gionata orsielli" では Fabrizio De Andre' や初期の Luca Barbarossa を彷彿させる味わい深いフォーク・ロックを披露しています。後期 Fabrizio De Andre' を想わせる地中海トラッド・ロックの "Senza una voce" やトロピカルな雰囲気を醸し出している "Serial killer"、端正なピアノをバックに切々と歌い上げる "Tante gocce" やリズムを刻むピアノをバックに Corrado Tedeschi のトーキングを交えつつシアトリカルに展開する "La corte" など、地味なものが多いものの曲調も多様で、彼の作曲能力の高さを再認識できる作品に仕上がっています。

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Mango / la terra degli aquiloni (2011) Columbia, 88697919582. (全11曲) CD-Text

ベテラン・カンタウトーレ Mango こと Giuseppe Mango の最新アルバム。今回もほとんどの曲は彼自身の作詞・作曲となっており、演奏面でも自身でピアノを弾いています。 足音を刻むようなピアノをバックにファルセットを多用した独特のヴォーカル・スタイルで歌い上げるオープニングのタイトル曲 "La terra degli aquiloni" から Mango 流AORが全開です。ハイトーン・ヴォーカルで叙情的なメロディをしっとりと歌い上げる "La sposa" や ケルティックなメロディを女性コーラスとともに軽やかに歌いあげる "Dignitose arrendevolezze"、リゾート地を想わせるトロピカルなアレンジが施された "Guarda l'Italia che bella" やウェストコーストのAOR風のメロディをファルセットで軽やかに歌いあげる "Chiamo le cose" など、曲調は多岐にわたるものの、全編彼らしさが滲み出てた楽曲で占められています。また、スパニッシュ・ギターが大活躍するフラメンコ風の "Volver" や英詞によるブルース・ロック調の "Starlight" など新境地も見せています。アルバム・ラストは Maurizio Fabrizio / Guido Morra コンビによるドラマティックに展開する "Il rifugio" で締めくくっています。初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。

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Agrado / rumore bianco (2011) Aereostella, ARS FV / 1009. (全12曲)

2005年に結成された若手ロック・バンド Agrado のファースト・アルバム。メンバーは Omar Russo (b, vo), Alessandro Massa (g), Loris Rignamonti (ds, vo) の3人編成です。風のSEに導かれて始まるオープニングの "Tra sogni e dovere" では'80年代のニューロマンティックスを彷彿とさせる粘着質のヴォーカルとミステリアスな響きを湛えた演奏を聴かせてくれます。続く "Come la neve quando cade" では一転してイタリアらしい明るくメロディアスなポップ・ロックを披露しています。ストリングス系のキーボードが舞う叙情的な "A"や、スピード感のある爽やかなロック・ナンバー "Numeri"、気怠いギターのアルペジオをバックに語りかけるように歌われる "La bellezza delle cose" や派手な音色のギター・リフが囁きかけるようなヴォーカルを盛り上げる "Non e' facile" など、この手のバンドとしては曲調も多様です。また、通常とは異なり、8曲目と9曲目の間にゴースト・トラックの "Se io fossi invisibile" (実際には9曲目)が収録されています。煌びやかな音色のシンセポップ "Piccola luce" は Tears for Fears の "Change" のカバー曲で、彼らの出自をよく表しています。アルバム・ラストは叙情的なロック・バラード "Un cielo senza nuvole" で締めくくっています。


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