Musicadentro

第118号 (05/06/2011)

早くも梅雨に突入してすっきりしない日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回はこの春に発売された女性アーティストの新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Dolcenera / Evoluzione della specie (2011) K6DN, 509908222824. (全11曲)

若手実力派カンタウトリーチェ Dolcenera の約2年振りとなる5thアルバム。収録曲は全曲彼女自身の作曲で約半数の曲の作詞も手掛けています。また、全編でピアノを担当しており、 端正な演奏を聴かせてくれます。前作ではルックスも含めてガーリィーなアプローチを見せていましたが、 今回は従来の路線に近いロック・スピリット溢れる作風に戻っています。オープニングの "Il sole di domenica" ではドスの効いた迫力のあるヴォーカルで、リズミカルなロック色の強いメロディを歌い上げています。 迫力のあるリズムと男声のかけ声をバックにシャウトする "Evoluzione della specie "Uomo"" や、若い頃の Gianna Nannini を想わせる "L'amore e' un gioco" のようにロック色の強い曲が並ぶ一方、「恋はあせらず」でお馴染のモータウン・ビートに乗せて軽やかに歌い上げる "Nel regime delle belle apparenze" やリズミカルなピアノをバックにソウルフルに歌われる "A un passo dalla felicita'" のようにブラック・ミュージックからの影響を感じさせる曲があったりと曲調も多彩で飽きさせません。 また、切々と語りかけるように始まり、クライマックスに向けて一気に盛り上がっていく "Nel cuore e nella mente" のように得意のロック・バラードも健在です。アルバム・ラストはバンジョーやウクレレを使った陽気な演奏をバックにしっとりと歌い上げる "Dagli occhi di una donna" で締めくくっています。
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I Camaleonti / che aereo stupendo... la speranza (1976) BTF, VMCD150. (全8曲)

イタリアンロック最古参バンドの一つ Camaleonti の1976年作のCD再発盤(2011年リリース)。当時のメンバーは Gerardo Manzoli [Gerry] (b), Livio Macchia (vo), Paolo de Ceglie [Bolo] (ds), Antonio Cripezzi [Tonino] (vo, key), Dave Sumner (g) の5人編成で、再発レーベルがBTFであることからも分かるように、初期のビート・サウンドとは異なりプログレッシブ・ロック寄りの作品に仕上がっていま す。 オープニングを飾る "Sconfinate fortune" から静と動を対比させたドラマティックな構成によるサイケデリック色のある演奏を聴かせてくれます。続く "Fantasia" はハードエッジなギターをフィーチャーし、Livio と Tonino の2人を対比させたヴォーカル・パートとPFMの "E' festa" を想わせるタランテラのリズムを導入した混沌としたインスト・パートが渾然一体となった佳曲です。 アコースティック色の強い演奏をバックに囁きかけるように歌われる "Cavalli con le ruote" や King Crimson の "Epitaph" の影響をもろに感じさせる叙情的なプログレ・ナンバー "Semaforo rosso" など英米のプログレ・バンドの影響を感じさせる楽曲が並びます。また、当時のサンレモ参加曲でイタリアらしいしっとりとしたラブ・ロックを聴かせる "Cuore di vento"では彼ら本来のメロディアスなポップスを披露しています。さらに、初期のビート・バンド時代を想わせる "Latte & caffe'" の収録もアルバムのアクセントになっています。アルバム・ラストは Pink Floyd からの影響を感じさせるスペーシーな音空間とブルージィーなギターが印象的な壮大なタイトル曲 "Che aereo stupendo... la speranza" で幕を閉じます。

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Francesca Romana / Lo specchio (2011) Moletto, 0206536MT2. (全11曲) CD-Text

Lecce 出身の若手カンタウトリーチェ Francesca Romana の約3年振りとなるセカンド・アルバム。全曲自身で作曲しており、作詞も共作を含め全曲手掛けていて、クレジットは本名の Francesca Romana Perrotta 名義になっています。また、楽器演奏にも長けているようで、アルバムでは各1曲ずつですがピアノとアコースティック・ギターのを演奏しています。 独特のロリータ・ヴォイスで囁くように歌いかけるオープニングの "Il tuo nome e il veleno" からノスタルジックな雰囲気を漂わせ、続く "Giovanna la pazza" では地声とファルセットを行き来するヴォーカルを駆使し、リズミカルな楽曲を軽やかに歌い上げています。 ほのかにトラッドの香りのするメロディを切々と歌い上げる "Canzone blu" や リズミカルな演奏をバックに幾分エキセントリックなヴォーカルを聴かせる "Io e biancaneve"、ロリータ系にしてはハスキーな歌声でしっとりと歌いかける "L'estranea" や叙情的なメロディをほのかな色香を感じさせるヴォーカルで聴かせる "Il poeta" など、キュートな歌声とノスタルジックな曲調がマッチした楽曲が詰まっています。作詞で Pacifico が共作している世紀末を想わせる耽美的なナンバー "Contro il mio Sguardo" やアルバム・ラストを飾る "Il demone" では Cristiano De Andre' が作詞を共作するなど話題性も豊富です。その "Il demone" では彼女自身によるピアノの弾き語りによるしっとりとしたヴォーカルを聴かせてくれ、 暫しの沈黙の後に同じ伴奏に乗せてモノローグが語られるシークレット・トラックの "Il maestro" へと続きます。

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Bandabardo' / Scaccianuvole (2011) On The Road, 3000434. (全12曲) CD-Text

2006年の "Fuori orario" が何故か2009年に国内盤としてリリースされたことがあるストリート系バンド Bandabardo' の最新アルバム。メンバーは Enrico "Erriquez" Greppi (g, vo), Alessandro Finazzo [Finaz] (g, cho), Andrea Orlandini [Orla] (g, key, cho), Marco "Don" Bachi (b, cb), Alessandro Nutini [Nuto] (ds), Carlo Cantini [Cantax] (sound) の6人編成です。オープニングの "Il mago Scaccianuvole" ではトランペットをフィーチャーし、軽やかな演奏を聴かせてくれます。サーカス音楽を想わせる軽快なリズムとアコーディオンの調べが印象的な "Rosa Luxembourg" や Angelo Branduardi とも共通する中世の大衆音楽からの影響を感じさせる "Spicchi di mele secche" や "Un paese cortigiano" など時代を超えたミクスチャー感覚溢れる曲調が特徴的です。ワルツのリズムに乗せながらそれと感じさせない "Amore bellissimo" や Angelo Branduardi を想わせるトラディショナルなリズムに乗せて軽やかに歌われる "Sant' Eustachio" など、リズム・アプローチに工夫を凝らした楽曲が多く、全体的にダンサブルで陽気な音楽性が前面に出ています。冗談音楽のような "Come i Beatles" のようにタイトルと音楽性がまるで一致しない遊び心があったり、フォーク・ロック調のバラード "Interessa la danza?" でしっとりとしたヴォーカルを聴かせたりと幅広い音楽性が印象的ですが、一方でその捉え所のなさが弱点にもなっている気がします。

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Federica Baioni 4tet / La vetrina della vanita' (2011) 103, 0206431CET. (全11曲) CD-Text

ジャズ系カンタウトリーチェ Federica Baioni 率いる Federica Baioni 4tet の デビュー・アルバム。メンバーは Federica Baioni (vo), Giuliano Valori (p), Maurizio Perrone (cb), Dario Esposito (ds) の4人編成です。ほぼ全曲彼女自身の作詞・作曲となっています。ジャズ系の作品としては Priscilla Ahn ほどはポップ寄りではないものの、Erin Bode を想わせるアコースティック・ジャズ編成による情感豊かなヴォーカル作品となっています。オープニングを飾るタイトル曲の "La Vetrina della vanita'" ではゲストのバイオリンを加えたヨーロッパ然とした気品溢れる演奏をバックに幾分投げやりな憂いを含んだヴォーカルを聴かせてくれます。続く "Sola" ではゲストによるトランペットをアクセントに、ピアノを含めたリズムを強調した楽曲を軽やかに歌い上げています。端正なピアノの調べに導かれた "Le stelle cadenti solo per me" はしっとりとしたヴォーカルが印象的なバラードで、ゲストのテナー・サックスがムードを盛り上げています。リズミカルなピアノをバックに軽やかに歌い上げ る "Quando" や、コントラバスの重低音が響き渡る中、リズミカルなヴォーカルを聴かせる "Notte"、耽美的なピアノをバックに囁きかけるように歌われる "Grido di pace" など、ジャズの要素を残しつつもポップス・ファンにもアピールできる魅力的な楽曲が続きます。是非とも Blue Note Tokyo あたりで来日公演を行った欲しい若手有望アーティストです。

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