アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Susanna Parigi / La lingua
segreta delle donne (2011) Promo Music Records, PM CD1124.
(全10曲) CD-Extra
アーティスティックな作風で知られる孤高のカンタウトリーチェ Susanna Parigi
の彼女としては非常に間隔の短い約1年半振りの新作となった5作目のオリジナル・アルバム。
今回は中国の奥地で使われた女性だけの文字「女書」にまつわる物語をテーマにしたトータル・アルバムとなっています。ほとんどの曲は自身の作曲で、詞も
Kaballa'
との共作を含め大部分彼女自身が手掛けており、演奏でもチェンバロ、アコーディオン、ピアノを自分で弾いています。ワルツのリズムに乗せて軽やかに歌い上
げるオープニングの "Liquida"
では女優の Lella Costa が冒頭とエンディングのモノローグを担当しています。続く "Cosi' e' se vi pare"
では一転して哀愁を帯びたバラードをしっとりとした歌で聴かせてくれます。また、"Crudo"
では低音域から高音域にわたる幅広い声域を駆使したシアトリカルなヴォーカルが印象的です。前作でも共演した Arke' String
Quartet が参加している "Una certa esaltazione de
vivere" では、ファルセットと地声を行き来する独特な歌唱が堪能できます。フランス語詞の "Petite Madone"
は、古き良き時代のシャンソンを想わせるノスタルジックな雰囲気を持った佳曲です。Ferrucio Spinetti が作曲とピアノで参加している
"Il suono e
l'invisibile"
では、彼の奏でる粒立ちの良い音色のピアノをバックに歌と言うよりも変幻自在なヴォーカリゼーションを聴かせてくれます。アルバム・ラストの
"Volesse
il cielo" は Mia Martini
の1975年のヒット曲のカバーで、哀愁を帯びたしっとりとした歌を堪能できます。ボーナスとして関係者のインタビューと "Liquida"
のヴィデオ・クリップを含むマルチメディア・トラックが収録されています。また、初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。
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Le Orme / La via della seta
(2011) Love Music, LM 001.
(全12曲) CD-Text
イタリアを代表するベテラン・プログレ・バンド Orme のバンドの中心人物 Aldo Tagliapietra (vo,
b) が脱退した後の新体制による初のオリジナル・アルバム。メンバーは前作のライブ盤同様、Michi Dei Rossi (ds),
Michele Bon (key, cho), Fabio Trentini (b, ac-g, cho) の正規メンバー3人に加え、元
Metamorfosi の Davide "Jimmy" Spitaleri (vo) と William Dotto (g),
Federico Gava
(p, key)
をサポート・メンバーとした6人編成となっています。本作は「シルクロード」のタイトル通り、マルコ・ポーロの東方見聞録をテーマにした、先月来日した
Latte Miele の "Marco Polo sogni e viaggi" (2009)
と共通したコンセプトを持ったアルバムとなっています。スタイリッシュなシンフォニック・ロックを聴かせるオープニングの "L'alba di
Eurasia" に始まり、テクニカルな演奏を繰り広げる "Il romanzo di Alessandro"
へと続く流れは、再編後の方向性がより洗練されたものへと向かっていることが感じられます。また、端正なピアノに乗せて朗々と歌われる "Verso
sud" で聴かれるように Jimmy の歌をより意識したメロディアスな作風も好感が持てます。また、"Una donna"
のようにかつてのように攻撃的な演奏とたおやかなメロディが渾然一体となった作品でも、Jimmy
の歌声が絶妙にマッチしていてよりスケール感が出ています。また、オリエンタルな雰囲気を持った "Serinde"
のようにテーマに沿ったエキゾティックな作風も新境地となっています。
アルバム・ラストは重厚なキーボード・オーケストレーションをバックに朗々と歌い上げるタイトル曲 "La via della seta"
で締めくくっています。新生 Orme
のお披露目の意味を持つ作品として非常に充実した内容となっていると思います。初回盤のパッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。
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Chiara Canzian / il mio
sangue (2011) Blu Notte Produzioni, B000 2011/01.
(全12曲)
Pooh の Red Canzian と歌手の Delia Gualtiero
の娘で、1989年生まれの若手カンタウトリーチェ Chiara Canzian
の約2年振りとなるセカンド・アルバム。本作でも収録曲は大部分彼女自身の作曲で、共作ではあるものの一部の作詞も手掛けています。
前作はカラフルなポップ色の強い作品でしたが、今回は Carmen Consoli
を想わせる内省的なロックへと作風をシフトさせています。また、バックにはアレンジも担当している実兄の Phil Mer (ds), Andrea
Lombardini (b), Valerio De Paola (g) に加え、Davide Dalpiaz (p),
が全面的に参加しています。重厚なチェロの響きに導かれて始まるタイトル曲の "Il mio sangue"
から、内面から絞り出すような歌唱を披露し、前作とは異なる方向へと進む決意表明であるかのように感じられます。軽やかなフォーク・ロック色が感じられる
"Senza se" ではファルセットを多用した物憂げなヴォーカルを聴かせてくれます。"Dimmi che e' vero"
ではロック色の強い
演奏をバックに力強いヴォーカルを聴くことができます。また、ブルース色の強い "Parla con me"
や囁きかけるように始まりダイナミックに変化していくヴォーカルが印象的な "Che colpa avevo
io"、アコースティック・ギターのつま弾きをバックにしっとりと歌い上げる "Scrivi d'oro"
など曲調もバリエーションが多く、アルバム1枚通して飽きさせない構成になっています。
初回盤のパッケージはスリットイン・タイプのデジブック仕様となっています。
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Matia Bazar / Conseguenza
logica
(2011) Bazar Music, 3000373. (全13曲)
かつては国内盤もリリースされていた人気ポップ・バンド Matia Bazar の3代目歌姫 Silvia
Mezzanotte が復帰しての第1作となる約3年振りの最新作。その他のメンバーはオリジナルの Giancarlo Golzi (ds),
Piero Cassano (key, vo) に Fabio Perversi (key, p, vln, b)
を加えた再編後の盤石の体制となっています。アコーディオンの音色に導かれて始まるオープニングのタイトル曲 "Conseguenza
logica" から、これまでにはないジャズ色が感じられる大人のポップスを久々の Silvia の張りのある歌声で聴かせてくれます。続く
"Gli occhi caldi di Sylvie" では、エレポップ期を想わせる音色のキーボードが印象的で、Silvia
のキュートな歌声を盛り上げています。また、しっとりとしたヴォーカルで哀愁漂うメロディを歌い上げる "A piene mani"
や囁きかけるように始まりダイナミックなヴォーカルを聴かせる "Frammenti
sparsi"、ボサノヴァ風のリズムに乗せて軽やかに歌い上げる "Pura fantasia" のように復帰した Silvia
のヴォーカルを前面に押し出す一方、"Nuotanto nuvole" のように Piero Cassano とのデュエットや、"Ma se
credi a me" で聴けるように Piero のソロ・ヴォーカルをフィーチャーしたり、メンバー4人で歌いつないでいく "Bisogna
avere piu' cuore" があったりと、この編成ならではのバリエーション豊かな構成で、聴き手を飽きさせない工夫が施されています。
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Patrizia Laquidara e Hotel
Rif / Il Canto dell'Anguana
(2011) Slang Records, SR008. (全11曲)
昨年末にはイベントでの来日経験もある若手カンタウトリーチェ Patrizia Laquidara
が6人編成のアコースティック・バンド Hotel Rif
と組んで地中海のフォルクローレをベースにした自作曲を収録した最新アルバム。Veneto 州に伝わる妖精 Anguana
をモチーフにしたアルバム・タイトルはそのままこのプロジェクト名にもなっています。オープニングの "Ah jente de la me
tera" からこれまでのソロ作品とは異なった本格的なトラッド唱法による Patrizia の歌声に驚かせられます。続く "L'aqua
fioria" は叙情的なメロディをしっとりと歌い上げる、本作中もっとも聴きやすい一般受けしやすい佳曲です。土着的なコーラスで始まる "La
fumana" はメランコリックなギターのアルペジオに乗せて歌われる浮遊感漂うヴォーカルが印象的です。初期 Teresa De Sio
を想わせる地中海色の強いメロディを持った "Reina d'ombria"
では、自由度の高い突き抜けたヴォーカルを聴くことが出来ます。また、せわしない民族楽器のアンサンブルをバックに早口で歌われる "L'anema
se desfa" や地声で朗々と歌われる "Nota d'anguana"、囁きかけるように軽やかなヴォーカルが印象的な
"Livergon" など、一口にフォルクローレといってもいろいろなバリエーションがあることが実感できるアルバムとなっています。
いわゆるポップスの作品ではないため、聴き手を選ぶタイプの作品ではありますが、
トラッド系の作品に抵抗がない人には入門編としても楽しめると思います。
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