Musicadentro

第115号 (09/01/2011)

年も明け、寒さも一段と増してきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回は昨年の秋〜初冬に発売されたアーティストの新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

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Francesco Renga / Un giorno bellissimo (2010) Mercury, 0602527559681. (全12曲)

今や元 Timoria という肩書きが必要もないほどの人気カンタウトーレとなった Francesco Renga のオリジナル・アルバムとしては約3年振りとなるニュー・アルバム。今回は大部分の曲を彼自身が作詞しており、前作同様 Luca Chiaravalli が作曲に大きく貢献しています。オープニングのしっとりとしたバラード "Un giorno bellissimo" から爽やかな歌声によるダイナミックなヴォーカルを聴かせてくれます。続く "Per farti tornare" は高音で伸びのある独特の歌い回しによるドラマチックな展開を聴かせる佳曲です。リリカルなピアノの調べに乗せて切々と歌い上げる "La strada" では Franco Battiato がコーラスで参加しています。ファルセットを多用したロック色の強い "Regina triste" や、端正なピアノに導かれて起伏の激しいメロディをダイナミックに歌い上げる "Senza amore"、ロック色の強い重低音のバッキングに乗せてスケールの大きいヴォーカルを聴かせる "Immune" や、ギターのコード・カッティングに乗せて伸びやかな歌声を聴かせる "Da lontano"、叙情的なメロディをダイナミックにシャウトする "Alzando la musica" など、収録されている全ての曲の水準が高く、 イタリアらしい濃さとロックのダイナミズムが融合した、 スケールの大きい歌声が堪能できる非常に完成度の高いアルバムとなっています。

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Paola & Chiara / milleluci Deluxe Edition (2010) Trepertre, TRE 872/CD 05. (全10曲)  CD-Extra

美人姉妹デュオ Paola & Chiara の長年在籍した Columbia からのレーベル移籍を経ての2作目で、約3年振りの作品となった7thアルバムのボーナス及びヴィデオ・トラック付きのデラックス盤。 以前はほとんどが2人の自作曲だったのですが、本作では半数以上が他のアーティストとの共作となっています。前作が大部分英語詞だったのに対して、 今回は全曲イタリア語に戻っていて、音楽性もかつての全盛期を思わせるものに変化しています。オープニングのタイトル曲 "Milleluci" は2人による息のあったヴォーカルをしっとりと聴かせるバラードで、続く "Pioggia d'estate" は得意のスパニッシュ・テイスト溢れたダンサブルなナンバーになっています。ざっくりとしたギターのコード・カッティングで始まる "Cosi' non saprai mai" は叙情的なメロディを2人の絡みつくようなセクシーなヴォーカルで歌い上げています。ギターの爪弾きに乗せて切々と歌い上げる "E non so" や、R&B色の強いリズミカルなヴォーカルを聴かせる "Sudoku"、前作を踏襲したクラブ・サウンドを聴かせる "Disco voodoo" など、これまでの音楽性の変遷を総括したような曲が並びます。また、このデラックス盤には "Pioggia d'estate" のリミックス・バージョンがボーナスとして収録されています。さらに、ジャケット・デザイン及び同封ポスターが3D仕様となっていて、 簡易3Dメガネが付属しています。

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Nomadi / Raccontiraccolti (2010) Atlantic, 5052498093526. (全12曲) CD-Text

結成からすでに45年を超えるベテラン・ロック・バンド Nomadi の最新アルバム。今回は親交のあったイタリアのアーティストの作品のカバー・アルバムとなっています。メンバーは Beppe Carletti (key), Cico Falzone (g), Daniele Campani (ds), Danilo Kakuen Sacco (vo, g), Massimo Vecchi (b, vo), Sergio Reggioli (perc, vln) の6人で、1999年以来不動のラインアップとなっています。オープニングの "Hey man" ではオリジナルの Zucchero がデュエットで参加していて、ファンキーな歌声を披露しています。レゲエ調にアレンジされた Antonello Venditti の "Piero e cinzia" ではレゲエの帝王 Bob Marley の "Redemption song" へと連なっています。"Chi mi aiutera'" は原曲は The Supremes の "You keep me hangin' on" ですが、これは Vanilla Fudge 版に Ricky Gianco がイタリア語詞を付けた I Ribelli によるイタリア語版のカバーです。その他、トロピカルなアレンジが施された Edoardo Bennato の "L'isola che non c'e'"、一聴してそれと分かる Ligabue の "Il giorno di dolore che uno ha" や、古くから親交のある Francesco Guccini の "Autogrill"、Massimo Ranieri のヒットで知られる "Vent'anni" などのようにオリジナルのアーティストの個性を感じさせる選曲を、Nomadi らしいビンテージ感溢れる演奏で盛り上げています。 アルバム・ラストはオリジナル曲の "Due re senza corona" で締めくくっています。

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Elisa Rossi / Viola Selise (2010) Alfredo Orofino Produzioni, AOP 002. (全12曲)

1979年生まれで Rimini 出身の若手カンタウトリーチェ Elisa Rossi のファースト・アルバム。オーディション番組に出演していた時の芸名 Viola Selise がアルバム・タイトルになっています。大部分の曲を共作を含め彼女自身が作詞・作曲しており、アレンジにも名を連ねています。 オーディション番組出身でありながら、オーソドックスなスタイルではなく、Kate Bush の系譜を感じさせるコケティッシュで、シアトリカルなヴォーカルは一聴の価値があります。オープニングの "Le piccole cose" からドリーミィな曲調の中、抑揚の激しい変幻自在なヴォーカルを堪能できます。語りかけるように始まる "Caramelle e popcorn" でもジャージーな演奏をバックに演劇でも観ているようなシアトリカルな歌声を聴かせてくれます。 サスペンス映画のオープニング・テーマのようなミステリアスな印象を与える "Ostinatamente" や、雨だれのようなピアノに導かれて切々と歌われる "Cosa di sabbia" など、個性的な楽曲が続きます。また、出身地ということもあってか Fabrizio De Andre' の "Rimini" をカバーして、消え入るような叙情を表現しています。Peter Gabriel 期の Genesis を彷彿とさせるシアトリカルなヴォーカルが印象的な "Al mittente innamorato" があるかと思えば、リズミカルな "L'asse" やコケティッシュな "Canzone confusa sull'altrove" など'60年代のフレンチポップを想わせる楽曲も共存するなど、曲調の振れ幅が大きいのも魅力の1つです。

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Nello Daniele / Uguali a ieri (2010) Tobacco Records, 3000363. (全10曲)

Pino Daniele の実弟であるカンタウトーレ Nello Daniele の約4年振りとなる4thアルバム。今回は全て彼自身が作詞・作曲しており、これまで同様自身でギターも演奏しています。1曲目のレゲエ調の "Se T'innamorai" からリズミカルな演奏をバックに軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。ギターの爪弾きで始まる "Il vento passera'" ではファルセットを伴い、しっとりとした叙情性を感じさせるメロディを歌い上げています。レゲエのリズムに乗せてヒップホップ調のヴォーカルを聴かせる "Bambino clandestino" や、リリカルなピアノをバックに切々と歌い上げる叙情的な "Figli 'e nisciuno"、軽快なギター・サウンドをバックにファルセットを多用した軽やかなヴォーカルを聴かせる "Signando l'amore" や、フェリーニの映画を想わせるフォークロック調の "L'emigrante e il cameriere" など、カンタウトーレ色の強い作品に仕上がっています。アルバム・ラストはギターの弾き語りによるタイトル曲 "Uguali a ieri" で締めくくっています。初回盤のパッケージはスリットイン・タイプのデジパック仕様となっています。

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