Musicadentro

第114号 (24/10/2010)

次第に秋も深まり気温の変動が大きくなってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今回は6年振りとなる Pooh の待望の新作とこの初秋に発売された大御所達の2世アーティストの作品を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

DCIS

Pooh / Dove comincia il sole (2010) Trio, 11873000-2. (全12曲)

イタリアの国民的ロック・バンド Pooh のオリジナルとしては6年振りとなるニュー・アルバム。今作は Stefano D'Orazio (ds) 脱退後、サポート・ドラマーに Steve Ferrone を迎えての新体制での初アルバムでもあります。今回はこれまで以上に Dodi の多彩なギタープレイを前面に押し出したドラマティックで重厚なロック色の強い作品となっています。冒頭の11分を超える2部構成のタイトル曲 "Dove comincia il sole" は3人で歌い継いでいき、力強いコーラスを聴かせる重厚なパート1と、テーマとなるフレーズを基にした変奏曲といった趣の Dodi のギターを大々的にフィーチャーしたパート2からなるシンフォニック大作です。力強いリズムをバックに重厚なボーカル・アンサンブルを聴かせる "L'aquila e il falco" や Dodi が清涼感のあるヴォーカルでしっとりと歌い上げる "Il cuore tra le mani"、アコースティック・ギターの響きを生かしたバラード "Reporter" やストリングス系のキーボードが切れ込む "Isabel"、弾けるようなポップ感覚を見せる軽快な "Musica" や Red のベース・ソロが印象的な "Vento nell'anima" など、曲もバラエティに富んでおり、その上どの曲も一聴して Pooh と分かる独特のカラーが貫かれています。アルバム・ラストの7分にも及ぶ壮大なバラード "Questo sono io" でのエンディングに向けたギター・ソロは Dodi のベスト・プレイの1つと言っていいほど感動的です。Standard Version の初回盤は中央の閃光部分が観音開きになったデジブックサイズで、 アルバムタイトルが印刷された透明なスリップ・ケースに収められています。さらに、新ロゴを模した厚紙による大判の3面 開きで、右端にパッケージを止める新ロゴのデザインのキーホルダーが付いている特殊仕様の Luxury Edition も発売されています。 

TNA

Cristel / il Tempo, il Nulla, L'Amore ed io... (2010) Azzurra Music, TRI1144. (全9曲)  CD-Text

1985年生まれの若手カンタウトリーチェ Cristel こと Cristel Carrisi の5年振りのセカンド・アルバム。名前からも分かるように、かつてのおしどりデュオ Al Bano & Romia Power のお嬢さんです。前作が全編英語詞の作品だったのに対し、今回は英語詞は2曲のみで大部分イタリア語詞になっています。また、全曲彼女自身の作詞作曲の作 品で占められています。ギターのストロークに乗せて始まるオープニングの "Cieli rosa" から、しっとりとしたメロディをやや鼻にかかった歌い回しで歌い上げています。英語詞による "Nothing" では、囁きかけるような歌い出しから徐々に盛り上がっていくダイナミックな歌いっぷりが印象的です。 艶やかなストリングスに導かれてたおやかなメロディを切々と歌い上げる "Custodi" は'70年代の雰囲気を持った叙情的な曲です。ファルセットと地声の間を行き来する "Io" では Kate Bush を想わせるエキセントリックな唱法を披露しています。"Ho bisogno di te" ではほのかな色気を感じさせる語りかけるような甘 い歌声を聴かせてくれます。ロック色の強い "Il buio" では一転して乗りのいい力強いヴォーカルを聴かせてくれます。アルバム・ラストはフォー ク・ロック調の英語詞による "Roses" をしっとりとしたヴォーカルで歌い上げています。基本、バラード調の曲が大半を占めていますが、曲調に工夫がされており収録時間も30分強と短いこともあ り、飽きの来ない作品に仕上がっています。

ITDC

Il Tempio delle Clessidre / Il Tempio delle Clessidre (2010) Black Widow, BWRCD 123-2. (全10曲) CD-Text

'70年代の伝説のヘビィ・シンフォニック・ロック・バンド Museo Rosenbach のヴォーカリストだった Stefano "Lupo" Galifi (vo) が凄腕の女性キーボーディスト Elisa Montaldo (key) とともに結成したシ ンフォニック・ロック・バンド Il Tempio delle Clessidre のファースト・アルバム。メンバーはその他に Fabio Gremo (b), Giulio Canepa (g), Paolo Tixi (ds) を加えた5人編成です。オルガンとギターによる中低音域を生かした重厚なインスト曲 "Verso l'alba" に始まり、強引な切り返しや畳みかけるような演奏を聴かせる "Insolita parte di me" のように力押しの部分も難なくこなすだけでなく、ドラマティックなメロディを力強く歌い上げる "Boccadasse" や端正なピアノをバックに切々と歌われる叙情的な "La stanza nascosta" のように引きの美しさも兼ね備えてい ます。Elisa の多彩なキーボード・プレイが遺憾なく発揮された複雑な展開を見せるミステリアスなインスト曲 "Danza esoterica di datura" や10分を超えるドラマティックな大曲 "Il centro sottile" のように構成力もしっかりしていて聴き所満載です。さすがに'70年代のあの時代を実体験している Stefano が中心人物だけあって、歌メロにキーボード・ソロのパートに無理矢理歌詞を乗せたような不自然さが全くなく、 説得力のあるメロディ・ラインが目白押しの良質なシンフォニック・ロックに仕上がっています。

CPIC

Mamo Belleno & Armanda De Scalzi / Canzoni per il cielo (2010) Diamante, DI-10/01. (全9曲)

オリジナル・メンバーで再編された New Trolls の Gianni Belleno (ds) の息子である Mamo Belleno (vo, ds, b, g, key) と Vittorio De Scalzi (g, key) の娘である Armanda De Scalzi (vo) による2世デュオ のデビュー・アルバム。曲作りにも Mamo に加えて Gianni と Vittorio が参加しており、演奏もマルチ・プレーヤーの Mamo をこの2人が手伝っています。オープニングの "Dio dove sei" は Mamo と Armanda の2人でパート毎に歌い分けたり、掛け合いを見せたりと立体的なデュエットを聴かせてくれる佳曲です。続く'70年代的なしっとりとしたメロディと'80 年代を想わせる機械的なリズムを併せ持つ "So che ci sei" では Mamo がリードを取る1番と Armanda がリードをとる2番の対比が印象的です。若い頃の Al Bano & Romina Power を想わせる正統派デュエットを聴かせる "Lode e gloria" では絡み合うような美しいハーモニーを堪能できます。"Canto per Maria" では Armanda がスケールの大きい叙情的なメロディをしっとりと歌い上げています。また、良質のAOR といった趣の "Sarai per sempre tu" では Mamo がファルセットを交えた落ち着きのあるヴォーカルを披露しています。'80年前後の New Trolls を想わせるポップな "Madre dell'amore" では Gianni と Vittorio も加わった厚みのあるコーラスハーモニーを聴くことができます。アルバム・ラストは New Trolls のヒット曲 "Quella carezza della sera" をアコースティックなアレンジによるカバーで締めくくっています。

SRP

AFO 4 / stupide relazioni pop (2010) Cama Records, 0205530EIT. (全8曲)

1995年に結成され、2008年にデビューした女性ヴォーカル・フロントのポップ・ロック・バンド AFO 4 のファースト・アルバム。メンバーは Irene Mezzacapo (vo), Marco Mezzacapo (g), Giovanni Germanelli (b), Federico Righi (ds) の4人に加え、クレジットにはないものの Michelangelo Biagiotti (key) も正式メンバーのようです。オープニングの "Stupido" はデビュー・シングルになったロック色の強い曲で、ダイナミックなメロディを力強く歌い上げる Irene のヴォーカルが印象的です。続くセカンド・シングル曲でもある "Mon amour" は後期 Matia Bazar を想わせるファッショナブルな感覚をもった楽曲です。Righeira の "L'estate sta finendo" のカバーでは本家 Righeria も参加して、Irene との絶妙の掛け合いを聴かせてくれます。適度なポップ感と力強いロック色が入り交じった "Dicembre" ではヨーロッパ的な翳りを感じさせるメロディが印象的です。Umberto Tozzi のヒット曲 "Notte rosa" のカバーは原曲の持つスタイリッシュさを残しつつ、よりロック色を押し出した力強いアレンジで聴かせてくれます。アルバム・ラストは Malfunk のリーダー Marco Cocci とのデュエット・バージョンによる "Dicembre" で、よりロック色を増したヴォーカルの掛け合いを楽しむことができます。

ご意見ご感想などあれば以下にご連絡ください。

ただし、メール・アドレスは画像になっていますのでご了承下さい。

音楽の部屋に戻る

ホームに戻る