Musicadentro

第110号 (02/05/2010)

ようやく天気も安定し、春らしい暖かな日々が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はこの春に発売された新作を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Mistici

Baustelle / I Mistici dell'Occidente (2010) Atlantic, 5051865798927. (全12曲)

2000年にデビューした若手バンド Baustelle のニュー・アルバム。前作 "Giulia non esce la sera" がサントラだったので、オリジナルとしては5作目となります。メンバーは4thアルバム同様、Rachele Bastreghi (vo, p, org), Francesco Bianconi (vo, g, key), Claudio Brasini (g), の3人に多数のゲストを迎えて制作されています。シンフォニック・ロックを想わせる重厚なキーボード・オーケストレーションで始まるオープニングの "L'indaco" から Francesco と Rachele のツイン・ヴォーカルが織りなすヨーロッパ然とした気品溢れるメロディによりサスペンス映画のテーマ曲のようなミステリアスな雰囲気が漂っています。続く "San Francesco" は Moody Blues からの影響を感じさせる重厚なキーボードとコーラス・ハーモニーが織りなすエレガントなメロディが印象的な曲に仕上がっています。タイトル曲の "I mistici dell'occidente" でも哀愁を帯びたメロディを気品溢れるキーボードを中心としたアレンジで聴かせてくれます。"Le rane" はスコットランドの Bell and Sebastian を想わせる弾けるようなポップな曲で、軽やかなメロディをリズミカルに歌い上げています。Francesco と Rachele のツイン・ヴォーカルが軽快に歌い上げるポップな "Gli spietati" や ヨーロッパ映画のテーマ曲のような暗さを滲ませた "Groupies"、Rachele のクールなヴォーカルが冴え渡る "La bambolina" など曲調も多様で、それでいてヨーロッパ然とした雰囲気で統一されている作品に仕上がっています。

AD2010

Premiata Forneria Marconi (PFM) / A.D.2010 - La Buona Novella. Opera Apocrifa da la buona novella di Fabrizio De Andre' (2010) Aereostella, 0204902 AER. (全10曲)

ここ数年は Fabrizio De Andre' のトリビュート・ライブを定期的に行なっている PFM こと Premiata Forneria Marconi の最新作は、彼らが前身バンド I Krel 時代にバックを務めた Fabrizio De Andre' の "La buona novella" のリメイク盤となっています。メンバーは Franz Di Cioccio (vo, ds, per), Patrick Djivas (b), Franco Mussida (g, vo) の3人に加え、ゲストで Lucio Fabbri (vln, key) が、サポートで来日公演でもお馴染みの Piero Monterisi (ds) と Gianluca Tagliavini (key) が参加しています。オープニングの合唱曲 "Laudate dominum" はインスト曲 "Universo e terra" に置き換えられ、オリジナルの各曲の後にタイトルの付いたインスト・パートが付け加えられることにより、原曲の雰囲気を残しつつロックのダイナミズムを持ち込んで、原曲の持つシンプルなフォーク色をメリハリのあるフォーク・ロックへと昇華させています。Fabrizio De Andre' との共演ライブや昨年のトリビュート・ライブでも演奏していた "Maria nella bottega di un falegname" や "Il testamento di Tito" などのライブ映えする曲も収録されているなど、地味な印象の強いオリジナルの "La buona novella" に対する再発見の多い作品となっています。初回盤は3面開きのデジパック仕様となっています。

L'occhio

Roberta Di Lorenzo / L'occhio della luna (2010) EF Sounds, EFS0901. (全13曲)

Torino 出身の新人カンタウトリーチェ Roberta Di Lorenzo のデビュー・アルバム。プロデューサーでもある Eugenio Finardi との共作1曲を除いて全て彼女自身が作詞作曲しています。オープニングの "Anima dolce liquida" ではワルツのリズムに乗せてしっとりとしたメロディを落ち着きのあるヴォーカルでドラマティックに歌い上げ、終盤のサビでは Eugenio Finardi もヴォーカルで参加しています。続く "Felicita' apparente" はひらひらと舞うようなメロディを軽やかに歌い上げるヴォーカルをストリングス・カルテットがしっとりと盛り上げています。アコースティック色の強いシンプルな演奏をバックに囁きかけるように歌われる "Corallario" やストリングス・カルテットのピチカートに始まり、しなやかなメロディをダイナミックに歌い上げる "Vento di costiera"、軽やかなジャズテイスト溢れる "Faccia" など気品溢れる作風が多いのが特徴的です。アコースティック・ギターの弾き語りを披露しているフォーク色の強い "Luna" や ピアノの弾き語りによるしっとりとしたバラード "La ballerina e il clown"、アルバム・ラストを飾る端正なピアノの調べが印象的な弾き語りの "Doloroso istinto" など演奏でも多才なところも見せてくれます。パッケージはデジパック仕様となっています。

LeStagioni

Massimo Marches / le stagioni di un tempo (2010) Four One music &events, 803363861040. (全11曲)

Rimini 出身の Officine Pan Combo のギタリスト/ヴォーカリストでもある Massimo Marches のファースト・ソロ・アルバム。とは言っても収録されている曲は2004年から2007年の間にコツコツと録りためていたもののようです。Officine Pan Combo でも一緒の Cristian Bonato (p, key) が曲作りや演奏で全面的にバックアップしています。オープニングの "Dividimi" ではループするリズムに乗せて口ずさむような軽やかなヴォーカルを聴かせてくれます。続くフォーク・ロック色の強いタイトル曲の "Le stagioni di un tempo" では交流の深い同郷のカンタウトーレ Giuseppe Righini がコーラスに加わっています。囁くかけるようなオープニングから一転、ドラマティックに歌い上げる "Sarebbe bello" や軽快なバンジョーの響きが印象的なカントリー調の "Soltanto"、リズミカルなアコースティック・ギターのカッティングが冴え渡る "Paura di ballare" など曲調もバリエーションがあり飽きさせません。レゲエ調の "Fermo" や ベースが唸りを上げるスカの "Il tuo sogno" などリズム・アプローチがワールド・ミュージックからの影響を受けているのも特徴的です。公式には10曲収録ですが、ラストのしっとりとしたバラード "La risposta" の後にゴースト・トラックとして "Come me" が収録されています。パッケージは見開き紙ジャケット仕様となっています。

ROC

Loredana Errore / Ragazza occhi cielo (2010) Columbia, 88697671002. (全7曲)

新人オーディション番組 AMICI 出身の女性ヴォーカリスト Loredana Errore のデビュー・ミニ・アルバム。全7曲の内、Biagio Antonacci が3曲、Federica Camba - Daniele Coro のコンビが3曲提供しています。Biagio Antonacci が提供したオープニングのタイトル曲 "Ragazza occhi cielo" から Loredana Berte' を想わせるドスの利いた中低音を生かしたヴォーカルで堂々と歌い上げ、終盤では Biagio Antonacci もほんの少しだけヴォーカルで参加しています。続く "L'ho visto prima io" ではロック色のあるリズミカルな曲をダイナミックなヴォーカルで聴かせてくれます。"La voce delle stelle" では作者である Federica Camba と声質が似ていることもあり、狂おしいほどの情感を湛えた中低音中心のヴォーカルが曲とぴったり合っています。また、"La vedova nera" も彼女の歌声を生かしたロック色の強い曲で、中盤でのまくし立てるようなヴォーカルが印象的です。リリカルなピアノの調べに乗せてしっとりと歌い上げる "L'inventario" やラストの "Ti amo" での絞り出すようなヴォーカルなど、ミニ・アルバムながら聴き所の多い作品に仕上がっています。

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