Musicadentro

第108号 (24/01/2010)

まだまだ寒い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回は昨年の秋から冬にかけての新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Carovane

Sergio Cammariere / carovane (2009) Millesuoni, 50999 688670 2 7. (全13曲) CD-Text

ジャズ・テイストを持った作風で知られる1960生まれの中堅カンタウトーレ Sergio Cammariere の約3年振りの5作目となる最新アルバム。曲は全て作詞は Roberto Kunstler 作曲は彼自身が手掛け、全編に渡って自らピアノとキーボードを弾いています。軽快なピアノの調べに乗せて軽やかに歌い上げるオープニングのタイトル曲 "Carovane" から艶やかなストリングスとジャズの香りの漂うブラス・セクションを盛り込んだゴージャスなサウンドを聴かせてくれます。続く "Insensata ora" ではジャージーなリズムに乗せて物憂げなヴォーカルを披露しています。リズミカルなピアノのフレーズで始まる "Senza fermarsi mai" は弾むようなメロディを持った曲で、彼の弾くピアノが大活躍します。シタールの響きが幻想的な雰囲気を漂わせる "La mia promessa" や消え入るような哀愁のメロディをジャージーに奏でる "Non c'e' piu' limite"、端正なピアノがクラシカルなメロディを紡ぎ出すインスト曲 "Varanasi" や南フランスを想起させるフォーク・タッチの "Tre angeli" などジャズからの強い影響を感じさせながらも曲のバリエーションも豊富で、全体を通して聴いても飽きの来ない構成になっています。

MioMomento

Simonetta Spiri / Il mio momento (2009) Poci One Records/Afre Music Records, 0202542AE2. (全9曲)

Sardegna 島にある Sassari で1984年に生まれた若手女性ヴォーカリスト Simonetta Spiri のファースト・アルバム。曲作りも半数以上に関わっているのでカンタウトリーチェと言ってもいいかも知れません。オープニングのタイトル曲 "Il mio momento" から伸びやかで透明感のある歌声で起伏に富んだメロディをダイナミックに歌い上げ、新世代の歌姫としての可能性を感じさせてくれます。続く "Kiry vola" は哀愁を感じさせるしっとりとしたバラードで、繊細な歌い回しもきっちりこなし表現力の広さも魅力的です。"Ti sento ancora qui" ではロック色を感じさせる力強いメロディをファルセットを含んだ多様なヴォーカルでダイナミックに聴かせてくれます。ケルト色のある哀愁のメロディをしっとりと歌い上げる "Scusa se" や力強いリズムに乗せてキュートな歌声を聴かせる "Di musica, di voi"、重厚なストリングスを従えて訴えかけるように歌い上げる "Maledettamente sola" など正統派イタリアン・ポップスの王道を行くサウンドが凝縮されています。ラストは "Kiry vola" のアコースティック・バージョンでしっとりと締め括っています。

Assurdo

Biglietto per L'Inferno.folk / tra l'ASSURDO e la RAGIONE (2009) AMS Records, AMS175CD. (全9曲)

1974年に唯一の公式アルバムをリリースしたヘヴィ・シンフォニック・ロック・バンド Biglietto per L'Inferno が装いを新たにアコースティック楽器を多用した Biglietto per L'Inferno.folk として活動を始めた復活作。メンバーはオリジナルの Giuseppe "Pilly" Cossa (key, vo), Mauro Gnecchi (ds) の2人に加え、Enrico Fagnoni (b), Ranieri "Ragno" Fumagalli (bagpipe, fl, ocarina), Franco Giaffreda (g), Carlo Redi (vln, mandolin), Mariolina Sala (vo), Renata Tomasella (fl, piffero, ocarina) の8人で、プロデュースをオリジナル・メンバーの Giuseppe "Baffo" Banfi が担当しています。収録曲はファースト・アルバムと当時は未発表で後に発掘されCDでリリースされた幻のセカンド・アルバムの曲にトラッド色を加味した絶妙のアレンジを施したものが中心になっています。オープニングはセカンドのタイトル曲 "Il tempo della semina" で、バグパイプを多用したトラディショナルなアレンジによりオリジナルよりもかなりエキゾティックな感じに仕上がっています。アルバム・タイトル曲 "Tra l'assurdo e la ragione" はトラッド色の強いアレンジとヘヴィなギターサウンドにシアトリカルなヴォーカルが加わり、かなりアグレッシブな印象があります。また、"L'amico suicida" と "Confessione" ではオリジナル・メンバーの Claudio Canali(現在は修道士名 Frate Isaia)がゲストでフルートを吹いています。ラストは南イタリア伝統の舞曲のリズムを大胆に導入した "Tarantella integrale" で締め括っています。パッケージは見開きの紙ジャケット仕様となっています。

Manifesto

Samuele Bersani / Manifesto abusivo (2009) Fuori Classica, 88697518002.(全11曲)

1970年に Rimini で生まれた中堅カンタウトーレ Samuele Bersani の約3年振りの7作目となる最新アルバム。ほとんどの曲の作詞と共作を含め作曲も彼自身が手掛け、演奏でもキーボード類を自ら弾いています。オープニングの "Un periodo pieno di sorprese" からなだらかなメロディをほのぼのとしたヴォーカルで歌いかける彼らしさが全開した曲となっています。続く "Pesce d'aprile" はコミカルなメロディと北アフリカを想わせるトロピカルなアレンジが魅力で、Lucio Dalla がコーラスで参加しています。軽快なピアノの調べに乗せて街中を駈け抜けるようなメロディが印象的な "A Bologna" や口笛で始まり軽やかな歌メロを囁くように歌われる "Anche Robinson Crusoe"、Sergio Cammariere が曲を提供したムーディーなメロディを語りかけるように歌い上げる "Ferragosto" や壮大なストリングスを従えて軽やかなヴォーカルを聴かせる "Walzer nello spazio" など聴き所が満載です。アルバム・ラストは端正なピアノに導かれて始まり、包み込むようなストリングスをバックにバイオリンが終盤に疾走する "16:9" で幕を閉じます。初回盤のパッケージはデジパック仕様となっています。

diTerra

Antonella Maisto / ...di TERRA (2009) Laboratori di Provincia. (全11曲) CD-Text

ポルトガルのファドを演奏するグループ Alma Lusa のヴォーカリスト Antonella Maisto のファースト・ソロ・アルバム。曲作りも半数以上に関わっているのでカンタウトリーチェと言ってもいいかも知れません。オープニングの小品 "Foglia (intro)" からファドの影響を感じさせる南ヨーロッパの哀愁漂うメロディが全開で、続く "Giuda" では北アフリカに連なる汎地中海的な民族音楽色溢れるエキゾティックなヴォーカルを聴かせてくれます。"Je canto" ではアラビア色のあるリズムに乗せて遊牧民を想起させるゆったりとしたメロディを堂々と歌い上げています。囁きかけるように哀愁のメロディを歌い上げる "Tarari'" やファルセットを多用してエキゾティックな雰囲気を盛り上げる "Luna"、アコーディオンをバックにシャンソンのように歌いかける "Manco Stasera" やギターをメインとしたシンプルなアレンジをバックにトラディショナルなメロディを切々と歌い上げる "Ce sta' sul 'o mare" など曲調にも工夫が見られ、トラッド色が強いながらも土着的というよりもコンテンポラリーな作品に仕上がっています。初回盤のパッケージはデジパック仕様となっています。

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