梅雨空が続き蒸し暑い日が多くなっていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回は女性アーティストの新作や
Ligabue の最新ライブ盤を中心にお送りします。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Jenny Sorrenti /
Burattina (2009) Odd Times Record, OTR 009.
(全9曲)
元 Saint Just のヴォーカリストだった Jenny Sorrenti
の約5年振りとなるソロ最新作。バックには Piero Viti (g),
Vincenzo Zenobio (accordion), Vittorio Pepe (b), Marcello
Vento (ds) の4人からなる Orchestrina Malombra
を迎え、彼女自身もピアノやキーボードを担当してトラッド色豊かな演奏を繰り広げています。収録されている楽曲は全て詞は彼女自身が手掛け、曲は
Marcello Vento
との共作となっています。呪術的なヴォーカリゼーションで幕を開けるオープニングの
""A stessa terra"
からトラッド色の強いメロディを独特の線の細い浮遊間のあるヴォーカルで歌い上げています。続く
"Ali in prestito"
では軽快なリズムに乗せてしなやかに舞い踊るようなヴォーカルを聴かせてくれます。タイトル曲の
"Burattina"
では早いパッセージでリズムを刻むアコーディオンをバックに浮遊間を醸し出す不安定なメロディを紡ぎ出すヴォーカルが印象的です。Enzo
Gragnaniello をゲストに迎えた "Nessuno e' piu' forte di chi
non ha nulla piu' da perdere"
はケルト色の強いダンスチューンとなっています。今回も全体的に彼女のルーツであるナポリとケルトの要素が渾然一体となった独特の音世界が繰り広げられた作品に仕上がっています。CD盤表面はLPを模したデザインになっていて、初回盤のパッケージはデジパック仕様となっています。
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Ligabue con
L'Orchestra dell'Arena di Verona / Sette notti in
Arena (2009) Zoo Aperto, 5051865467922.
(DVD全23曲+CD全13曲)
DVD+CD-Text
イタリアを代表するロックン・ローラー Ligabue こと Luciano
Ligabue の最新ライブ・アルバム。今回はタイトル通り Verona
の古代円形劇場 Arena
で昨年9月25日から10月4日まで7日間にわたって行われた
L'Orchestra dell'Arena di Verona
との共演ライブの模様を収録しています。CDとDVDでは収録曲および曲順が異なっており、DVDの方は当日の進行に従った曲順で収録され、CDは曲順を大幅に入れ替えてベスト選曲のダイジェスト版といった趣になっています。CDのオープニングにはライブ中盤に演奏された会場中が大合唱するしっとりとしたバラード
"Non e' tempo per noi"
が選ばれ、ラストにはストリングスをバックに Ligabue
がギターの弾き語りをするオープニング・ナンバーの "Sono qui
per l'amore"
で静かに締め括るという意表を突く編集になっています。骨太のバンド・サウンドとスリリングな演奏を繰り広げるオーケストラをバックに彼の男性的なヴォーカルが冴えまくる
"Viva!"
やスケールの大きなストリングスをバックにしっとりと歌い上げる
"Piccola stella senza cielo"
など聴き所満載です。全体的に壮大なストリングスとの共演を生かしたスケールの大きな曲が多く選曲され、彼らの特徴の一つであるアグレッシブさはやや控え目な感じになっていますが、会場と一体となった盛り上がりがひしひしと感じられるライブ盤に仕上がっています。パッケージは3面開きのデジパック仕様となっています。
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Marina Rei /
musa (2009) Perenne - On The Road, 300190.
(全11曲)
すでに10年以上の活動歴を誇るパーカッション奏者でもあるカンタウトリーチェ
Marina Rei
のオリジナルとしては約4年振りとなる最新アルバム。前作同様、共作を含めてほぼ全曲彼女自身のペンによる曲で埋め尽くされています。リズミカルなパーカッションをバックに囁きかけるように歌われるオープニングのタイトル曲
"Musa"
から一筋縄ではいかないアヴァンギャルド色のある独特のポップスを展開しています。シンプルなアコースティック編成と弦楽四重奏をバックに切々と歌い上げる
"Sorride" では声質や歌い回しが同時期にデビューした Carmen
Consoli
を想起させます。アヴァンギャルド色のあるサウンドスケープをバックに早口でまくし立てるように歌われる
"Donna che parla in fretta"
や、ピアノを中心とした中低音域を生かした演奏をバックに囁きかけるように歌われる
"Il mare verticale"
など曲のバリエーションも多彩です。前述した Carmen Consoli
との共演が実現した"Un volo senza fine" ではCarmen
がつま弾くアコースティック・ギターをバックに Marina
がしっとりと歌い上げています。アルバム・ラストは彼女の奏でるパーカッションをバックに小さな子供たちとリズミカルなヴォーカルを聴かせる
"Regina reginella" で締め括っています。
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Niccolo' Fabi / Solo
un uomo (2009) Universal Music Italia, 0602527069487.
(全10曲)
PFM などのプロデューサーとして知られる Claudio Fabi
の息子である若手カンタウトーレ Niccolo' Fabi
のオリジナルとしては3年振りとなる最新アルバム。ほぼ全曲彼自身の作詞作曲で、演奏面でもベース、ギター、キーボードなど数多くの楽器を本人が担当しています。オープニングのタイトル曲
"Solo un uomo"
では沈み込むようなリズムをバックになだらかなメロディを淡々と歌い上げるヴォーカルが印象的です。ギターの爪弾きをバックに囁きかけるように歌われる
"Atessa e inaspettata"
ではうっすらと霧がかかったようなストリングスとスティール・ギターによって消え入るような浮遊感が醸し出されています。軽快なリズムに乗せて爽やかなヴォーカルを聴かせるアップテンポな
"Aliante"
ではストリングスとホーン・セクションにより華やかな彩りが添えられています。5人編成の音響系バンド
Mokadelic との共演となった "Parti di me"
では浮遊感のあるサイケデリック色豊かな演奏をバックに淡々と歌うヴォーカルが印象的です。全体的に起伏の少ないメロディを囁きかけるように淡々と歌う曲が多いのですが、アレンジに様々な工夫が見られアルバムを通して飽きの来ない仕上がりになっていると思います。
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Valentina Giovagnini
/ L'amore non ha Fine (2009) Verba Mament,
0197152ERE. (全14曲)
CD-Text
今年の1月に28歳の若さで亡くなってしまった若手女性ヴォーカリスト
Valentina Giovagnini
の追悼盤となってしまった約7年振りとなるセカンド・アルバム。Aldo
Caputo のテノールが冴え渡るオープニングのタイトル曲 "L'amore
non ha fine"
からトラッドからの影響を感じさせるメロディとエレクトロニクス色のあるアレンジが渾然一体となった不思議な雰囲気を持った曲が展開されています。続く
"L'altra meta' della luna"
ではファルセットと地声を行き交う特徴のある歌い回しで、月明かりを想わせる幻想的な音世界を紡ぎだしています。"Voglio
quello che sento"
ではトラッド色の強いパーカッシブな演奏をバックに力強くリズミカルなヴォーカルを聴かせてくれます。有名なタンゴのフレーズに導かれた
"Non piango piu'"
では切々と訴えかけるようなヴォーカルがミステリアスな雰囲気を醸し出しています。本編のラストとなる
"Ogni viaggio che ho aspettato"
はバグパイプとティン・ホイッスルが大活躍するトラッド色の強いアレンジによるアップテンポ・ナンバーです。ボーナストラックにはスタンダード・ナンバーで彼女自身によるピアノの弾き語りの
"Hallelujah" と ギターの爪弾きをバックにしっとりと歌い上げる
"Somewhere over the raimbow" が収録されています。
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