気温の上下動が激しく不安定な天候が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回は
Pooh
のアンソロジー的ベスト・アルバムをはじめこの春の新作を中心にお送りします。
アルバム・カバー
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アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年)
レーベル名, レコード番号. (収録曲数)
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Pooh / Ancora una
notte insieme (2009) Atlantic, 5051865427827.
(全30曲) CD-Text
Stefano D'Orazio (ds)
の脱退表明を受けてリリースされたイタリアの国民的ロック・バンド
Pooh
のアンソロジー的選曲による2枚組ベストアルバム。軽快なリズムに乗せて4人で歌い継いでいく新曲の
"Ancora una notte insieme"
を冒頭に配し、同じようにメンバー4人で歌い継ぐタイプの曲と
Stefano がリードを執る曲で構成されています。1976年の
"Poohlover" から最新作 "Beat ReGeneration"
までのアルバムから29曲が選曲され、これまでベスト盤には収録されなかった
"Per noi che partiamo" や "Fare, sfare, dire,
indovinare"、"Il giorno prima"
といった曲が収録されています。また、"E non serve che sia
Natale" や "C'e' bisogno di un piccolo aiuto"
などアルバムのラストを飾った曲が6曲も収録されており、ある意味バンドの歴史の区切りを感じさせる選曲になっています。さらに
"Santa Lucia"
はアコースティック・セットでのライブ・バージョンが収められ、ラストは暗示的なタイトルとなってしまった
"Goodbye"
のライブ・バージョンでしっとりと締め括っています。ベスト盤としては選曲がある意味特殊なので初心者向けの一枚にはなりにくいと思いますが、Pooh
ファンには思い入れを含めて必携の作品でしょう。
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Ginevra Di Marco /
Donna Ginevra (2009) Materiali Sonori, MASO CD 90149.
(全11曲)
現在は活動を停止しているオルタナ系ロック・バンド CSI
(Consorzio Suonatori Indipendenti) の紅一点 Ginevra Di Marco
のソロ5作目となる最新アルバム。前作に引き続き CSI の
Francesco Magnelli
がプロデュースやアレンジなどで活躍しています。収録されている曲の半数は17〜19世紀のトラッドをベースにした曲で近作でのトラッド路線が継承されています。オープニングの
"Terra mia" は Pino Daniele
のペンによる曲で、ゆったりとしたリズムに乗せて呪術的な響きを湛えた中低音を生かしたヴォーカルでトラッド風味のあるメロディを歌い上げています。続く
"Usti usti baba"
はマケドニア語で歌われるエキゾティックな曲で民族楽器の響きが印象的です。Silvio
Rodriguez のカバー曲 "La maza"
はスペイン語で歌われ、トラッド色の強いアレンジにより染み入るような哀愁を漂わせています。"Io
si" は Luigi Tenco
のカバー曲で、囁きかけるように始まりドラマティックに展開していくシアトリカルなヴォーカルを聴かせてくれます。
スピード感のある演奏とトラッド色の強い歌い回しが印象的な "Le
figliole" はNCCP
なども取り上げていた古いトラッドです。ラストはジャズ色の感じられる
"In Maremma"
を中低音部を生かしたヴォーカルでしっとりと歌い上げています。
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Umberto Tozzi / Non
solo live (2009) Momy Records, 3000149. (全7+20曲)
CD-Text
ベテラン・カンタウトーレ Umberto Tozzi
の新曲によるミニアルバムとベスト選曲のライブ・アルバムを組み合わせた2枚組の最新作。スタジオ盤のミニアルバムの方は軽快なリズムに乗せてポップなメロディを歌い上げる
"Anche se tu non vuoi"
に始まり、リリカルなピアノの調べをバックに切々と歌い上げる
"Cerco ancora te" や Billy Joel に提供された "Lullabye
goodnight my angel"、Francis Cabrel との共作の "Petite Marie
(stella d'amore)"
など彼の交流の広さを感じさせる楽曲が収められています。ラストはタイトル通り東洋的なフレーズが印象的なインスト曲
"Oriental song"
で締め括っていますが、しばしの無音部分の後にライブ盤のアウト・テイクと思われるシークレット・トラックが2曲収録されています。ライブ盤の方は
Raffaele Chiatto (g), Gianni D'Addese (key, vo), Annastella
Camporeale (vo), Gianni Vancini (sax, perc), Ricky Roma
(ds), Marco Dirani (b) の6人のメンバーを従え、オープニングの
"Alleluia se" に始まり、会場中が大合唱する "Ti amo" や
"Donna amante mia"
など'70〜'80年代のヒット曲を中心に代表曲の数々を披露しています。ライブの最後は7分以上に拡大された
"Gloria" で大団円を迎えます。
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Triacorda / Passione
intelletto e volonta' (2009) Edel, 0196972ERE.
(全11曲)
2002年に結成されたレディース・バンド Triacorda
のファースト・アルバム。メンバーは Daniela Chiara
[Danysol] (vo), Antonella Zichella [Anto
Zichy] (g), Linda Pinelli (b), Linda Diddi (ds)
の4人編成です。曲の大半は共作を含めヴォーカルの Danysol
が手掛けています。サウンドの方は若い頃の Gianna Nannini
直系のハスキーなボーカルを生かしたストレートなロックで、オープニングの
"Caffe nero bollente"
から推進力のあるリズム・セクションをバックに叩き付けるようなヴォーカルを堪能できます。続く
"Lidea"
は重たいリズムに乗せて重厚に歌い上げるロック・バラードでセクシーさを感じさせるヴォーカルの歌い回しが印象的です。"Mi
mancherai" は ロック界の姉御 Gianna Nannini
との共作で、ブルース色のある演奏に乗せて哀愁のあるメロディを切々と訴えかけるように歌い上げています。Roberto
Vecchioni のカバー曲 "Stranamore (Pure questo e' amore)"
はロック色の強いアレンジにより原曲とはかなりイメージの異なる仕上がりになっています。この手のロック・バンドとしては曲のバリエーションも比較的多い方なので単調にならず聴きやすいです。
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Simone Tomassini /
Ladra (2009) Disc Over, TRP1001. (全10曲)
CD-Text
2004年にアルバム・デビューした Como
近郊出身の若手カンタウトーレ Simone Tomassini
の最新アルバム。これまでは Simone
名義で活躍していましたが、今回からフルネームでクレジットされています。共作を含めて全曲の作詞作曲を自身が手掛けています。きらびやかな音色のギターのリフに導かれて始まるオープニングの
"Quante volte ti sei perso"
でのややしゃがれた歌声で絞り出すように歌うスタイルは最近の若手の中では珍しいイタリア的な熱情を感じさせるものです。ギターの爪弾きに乗せてしっとりと歌われる
"Comunque sia"
でも中盤からの爆発的な盛り上がりを見せ、非常にイタリア的な熱い歌を聴かせてくれます。明るい音色のピアノに導かれたタイトル曲にもなっている
"Ladra"
では軽快なリズムをバックにポップなメロディを力強く歌い上げています。ハードなギターのリフで始まる
"C'hanno provato"
はスピード感のあるロック色の強い曲で、絞り出すようにメロディを紡ぎ出すヴォーカルが印象的です。権利関係の問題から
Black Horse
で録音した(ライブ?)バージョンが収録できなかった "W la
musica sempre!" は新たに再録されて収録されています。
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