Musicadentro

第97号 (24/11/2008)

寒さもだんだん深まっていよいよ冬支度といった季節となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?今回はこの秋にリリースされた新譜を中心にお送りします。

アルバム・カバー

アーティスト名 / アルバム・タイトル (リリース年) レーベル名, レコード番号. (収録曲数)

Moderna

Ivano Fossati / Musica moderna (2008) Il Volatore, 5099923781825. (全11曲)

元 Delirium のベテラン・カンタウトーレ Ivano Fossati の約2年半振りのニュー・アルバム。今回は全曲彼自身の作詞・作曲の作品で占められ、演奏面でもほとんどの曲でギターやピアノなどを弾いています。本作も前作に引き続き熱い歌を中心としたカンタウトーレ作品となっています。軽快なギター・サウンドに乗せて渋めのヴォーカルを聴かせるオープニングの "Il rimedio" で始まり、レゲエのリズムをバックに軽やかに歌い上げる "Miss America" や 早口でリズミカルに歌われる "Il paese dei testimoni" など曲調もバリエーションに富んでいます。また、"D'am ore non parliamo piu'" では彼自身が奏でるピアノと Riccardo Tesi によるダイアトニック・アコーディオンのコラボレーションが印象的です。包み込むようなオーケストラを従えたタイトル曲の "Musica moderna" ではしっとりとしたヴォーカルを聴かせてくれます。幻想的なギターのフレーズが印象的な "Illusione" ではラテンの哀愁を感じさせる男の色香を漂わせたヴォーカルを聴くことができます。アルバム・ラストは映画 "Caos Calmo" のために書き下ろされたフォーク・ロック色の強い "L'amore trasparente" で締め括っています。全体的に派手さはないものの、職人技を感じさせる燻し銀のような完成度の高い作品となっています。

Tasting

Latte Miele / Live tasting (2008) Aereostella, 0193582AER. (全18曲)

'70年代前半に活躍したプログレッシブ・ロック・バンド Latte e Miele が Latte Miele とバンド名をマイナー・チェンジして行なった復活ライブの模様を収録したライブ・アルバム。メンバーは Marcello Giancarlo Dellacasa (g, vo), Oliviero Lacagnina (p, key) と New Trolls でも活躍する Alfio Vitanza (ds, vo) のオリジナルの3人にサード・アルバム時の Massimo Gori (b, vo) を加えた4人で、サポート・メンバーの Pino Nastasi (key) を含むツイン・キーボード編成で Canada の Toronto で行なわれたライブの模様を余すことなく収録しています。オープニングの組曲 "Passio secundum mattheum" からあの独特のくすんだ音色のギターが響き渡り、新パート "Tiberiade" を加えて20分強にリアレンジされた宗教色の強い音世界を混声合唱団を従えて見事に再現しています。続く "Papillon" からはELPを彷彿とさせるテクニカルな演奏としっとりとした歌を聴かせる3つのパートを演奏しています。アコースティックな響きを湛えた小品 "Fantasia per Chandra" を挟んで演奏される大曲 "Pavana" では新パート "Counter dance" を加えて壮大なシンフォニック・ワールドを展開しています。ラストは畳み掛けるような演奏と歌心溢れるヴォーカルをバランス良く配した新曲 "Vision of sunlight" で締め括っています。

Bacio

Cesare Cremonini / Il primo bacio sulla luna (2008) Pibedeoro, 5051865051329. (全12曲)

元 Lunapop の人気カンタウトーレ Cesare Cremonini の約3年振りとなるオリジナル・アルバム。今回も一部の詞に共作があるもののほぼ全曲彼自身の作詞・作曲になっていて、全ての曲で彼自身がピアノやギターを演奏しています。また、今回も Lunapop 時代からの盟友 Nicola "Ballo" Balestri (b) がサウンド面を支えています。オープニングの軽快なロックン・ロール "Louise" から、リズミカルなピアノに導かれてコーラスを多用した "Dicono di me" へ続き、しっとりとした歌を聴かせる "Le sei e ventisei" へと連なる曲構成だけでもセンスの良さを感じさせます。大道芸のような猥雑さを感じさせる "La ricetta "...per curare un uomo solo)" や ピアノとオーケストラを中心とした王道のバラード "L'altra meta'"、雨だれのようなピアノに導かれ哀愁を感じさせる切ない歌を聴かせる "Il pagliaccio" など、曲調がバリエーションに富んでいて聴き手を飽きさせないところも好印象です。アルバム・ラストは彼自身が弾くピアノとオーケストラによるライト・クラシックを思わせるインスト曲 "Cercando Camilla" で幕を閉じます。初回盤はエンボス加工が施されたデジパック仕様となっています。

Antiche

Il Castello di Atlante / Tra le antiche mura (2008) Electromantic Music, ARTP 504. (全7曲)

この11月に待望の来日公演を行なった'70年代半ばから活動を続ける叙情派シンフォニック・ロック・バンド Il Castello di Atlante のアコースティック・ライブ盤を挟んで約4年半振りとなる最新オリジナル・アルバム。メンバーは Aldo Bergamini (g, vo), Massimo Di Lauro (vln), Paolo Ferrarotti (ds, vo), Roberto Giordano (Key, p, vo) に Dino Fiore (b) を加えたオリジナル・ラインアップに戻っています。朗読のバックに過去の曲のフレーズをコラージュしたオープニングの "Prefazione" の後、リズミカルなピアノのリフで始まるタイトル曲の "Tra le antiche mura" へと連なっていきます。その "Tra le antiche mura" では分厚いキーボード群の間をロング・トーンのギターが駈け抜け、ヴォーカル・パートでは Aldo によるリードと3人による息の合ったコーラスが絶妙に配され、ベテランならではの余裕を感じさせます。洞窟の中を歩いているような効果音で始まる "Malebolge" は20分近い大作で、力強いリズム・セクションをバックに多彩な音色のキーボード・ラビリンスが展開され、各所に配された叙情的なヴォーカル・パートやバイオリンによる印象的なリフが曲を盛り上げています。このバンドは同傾向の他のバンドに較べメロディ指向が強く、ヴォーカルをとれるメンバーが3人もいるため歌心溢れる曲が多いのが特徴となっています。

Protino

Domenico Protino / Domenico Protino (2008) Progetto Musica, 5051442985924. (全10曲)

Brindisi 近郊の Torre Santa Susanna 出身の若手カンタウトーレ Domenico Protino のファースト・アルバム。プロデュースはマネージメントも手掛ける Maurizio Dinelli と Nomadi の Beppe Carletti です。全曲彼自身の作詞・作曲で、全ての曲で彼自身がアコースティック・ギターを弾いています。囁きかけるように始まるオープニングの "La guerra dei trent'anni" ではサビでファルセットになる独特の歌い回しを聴くことができます。続く "Tutto in un momento" では軽快な演奏に乗せてスピード感溢れる男性的なヴォーカルを聴かせてくれます。哀愁を感じさせる寂しげなメロディが印象的な "W la vita" ではしっとりと歌い上げるスケール感のあるヴォーカルを聴くことができます。ギターのコード・カッティングに乗せて軽やかに歌われる "L'amore non muore" はフォーク・ロック色の強い曲です。"Lo specchio che nessuno vuol guardare" はしっとりとしたバラードで、語りかけるように歌われる穏やかなヴォーカルが印象的です。全体的にメロディアスな曲が多く声質も万人受けするタイプだと思うので、今後の活躍が楽しみなカンタウトーレです。

ご意見ご感想などあれば以下にご連絡ください。

ただし、メール・アドレスは画像になっていますのでご了承下さい。

音楽の部屋に戻る

ホームに戻る