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Pandora / Dramma di un
poeta ubriaco (2008) Ams, AMS143CD. (全7曲)
2006年に結成された若手シンフォニック・ロック・バンド
Pandora のデビュー・アルバム。メンバーは Corrado Grappegia
(vo, key, p), Christian Dimasi (el-g, vo), Claudio Colombo
(ds, perc, b, ac-g, key), Beppe Colombo (key, org, vo)
の変則4人編成です。人の話し声のサウンド・コラージュで始まるオープニングの
"Il giudizio universale"
から畳み掛けるリズムをバックに多彩な音色のキーボードと歪んだギターが幾重にも折り重なる怒濤のヘヴィ・シンフォが展開されます。また、分厚いサウンドに負けない力量を誇るヴォーカリストを擁していることでインスト・パートとヴォーカル・パートの落差がないのも特筆すべきでしょう。アコースティック・ギターの爪弾きに導かれた
"Cosi' come sei"
ではしっとりとしたヴォーカル・パートから一気にキーボード・ラビリンスに突入し、畳み掛けるような展開を見せるなど静と動の対比が印象的です。フルート音色のキーボードで始まる
"Breve storia di San George"
はアコースティック・ギターをバックに Corrado
がしっとりと歌い上げる叙情的なバラードになっています。アルバム・ラストは4部構成で14分弱に及ぶクラシカルなシンフォニック・ロックを聴かせる
"Salto nel Buio"
で締め括っています。キーボードのフレーズの組み立て方や情熱的なヴォーカルなどどこを取ってもイタリアからしか出てこないであろう魅力を持った作品だと思います。
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Barbara Eramo / in
trasparenza (2008) Emergency Music, EM 008001.
(全11曲) CD-Text
Claudio Passavanti (key) とのデュオ Eramo &
Passavanti として1998年にデビューした女性ヴォーカリスト
Barbara Eramo
のソロ名義でのファースト・アルバム。共作ながら大部分の作詞・作曲に参加しているのでカンタウトリーチェと言っていいのかも知れません。また、エレピやパーカッションも演奏し、プロデュースにも名を連ねるなど多才なところを見せています。静謐なピアノの調べに導かれて始まるオープニングの
"D'acqua"
からややジャージーで繊細なヴォーカルを聴かせてくれます。包み込むようなストリングスを従えた
"L'eclissi"
では宙を漂うような浮遊感のあるヴォーカルにより幻想的な雰囲気を醸し出しています。ギターの爪弾きに乗せて囁きかけるように歌われる
"Disco incantato"
では哀しみを湛えた情感溢れる歌声を聴かせてくれます。エレピの弾き語りによる
"Starfish sky"
は英語で歌われ、アンビエントな響きを持ったメロディをしっとりと歌い上げています。Nick
Drake のカバー曲である "River man"
ではオリジナルの持つ荒涼とした世界観が彼女の儚げなヴォーカルと寂しげな音色のオーケストラによってうまく表現できています。端正なピアノの調べに導かれたしっとりとしたバラード
"Quadro mosso" によりアルバムは静かに幕を閉じます。
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Matmata / in attesa
del cielo (2008) Sober Communication, 017672ERE.
(全14曲)
2003年にアルバム・デビューを飾ったオルタナ系ロック・バンド
Matmata
の5年振りとなるセカンド・アルバム。メンバーはGianmario
Ragazzi (vo, g, p, key), Marco Ravelli (b), Nicola Saini
(ds), Ulrico Bragaglio (key)
の4人編成です。詞・曲ともに全曲ヴォーカルの Gianmario
Ragazzi
が書いています。沈み込むようなリズムをバックにファルセットのコーラスで始まるオープニングの
"Fragile"
ではファルセットと地声で交互に歌われるヴォーカルの対比が印象的です。"La
vita altrove"
では絡みつくようなメロディを地声とファルセットを行き来する独特の唱法で歌い上げています。ハードな音色のギター・リフに乗せてスピーディに歌われる
"Un male infedele"
は勢いを感じさせるロック・ナンバーになっています。"Fiore di
luna" ではイギリスの Buffseed
を思わせる叙情的なハイトーン・ヴォーカルを聴かせてくれます。リリカルなピアノの調べに導かれてファルセット・ヴォーカルで始まる叙情的なバラード
"In silenzio"
ではあたかも2人のヴォーカルによるデュエットのような地声とファルセットによる掛合いを聴くことができます。ハードな音色のギター・リフに乗せて切々と歌われる
"Fino a perdermi"
は彼らの曲の中では歌メロの起伏の大きいドラマチックな・ナンバーです。2000年代初期のイギリスのバンド・サウンドからの影響が見え隠れするところもありますが、魅力のあるメロディと独特のスタイルを持ったバンドだと思います。
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RAF /
Metamorfosi (2008) Columbia, 88697365732. 全9曲
ロック系カンタウトーレ RAF こと Raffaelle Riefoli
の最新アルバム。今回も共作を含め全曲自身で作詞・作曲しており、また全ての曲でギターやパーカッションを演奏しています。リリカルなピアノに乗せてしっとりと歌われるオープニングの
"Ossigeno"
からサビでファルセットになるヴォーカルで叙情的なメロディを持つしなやかなポップスを聴かせてくれます。続く
"Ballo"
は軽快なラップで、バックで時折顔を見せるストリングス音色のキーボードとの対比が印象的です。タイトル曲の
"Metamorfosi"
では端正なピアノをバックに切々と訴えかけるようなヴォーカルを聴かせてくれます。"Nel
tuo ritorno"
は軽快なロック・ナンバーで、力強さと軽やかさを感じさせる清涼感のあるヴォーカルが印象的です。力強いリズムをバックに爽やかなヴォーカルを聴かせる
"L'era del gigante"
では短いながらもギター・ソロも聴くことができます。収録されている曲もバリエーションに富み、どの曲も一定水準をクリアし非常に安定感はあるものの、それがかえってどの曲も同じような印象を与えるという皮肉な結果になってしまっているのが少し残念です。
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Murple / Quadri di
un'esposizione (2008) Ams, AMS145Cd (全10曲)
イタリアン・プログレ全盛期の1974年に唯一の作品 "Io sono
Murple" をリリースした Murple
が34年振りに再結成してリリースしたセカンド・アルバム。メンバーは当時のメンバー4人の内、Pier
Carlo Zanco (vo, p, key), Mario Garbarino (b), Duilio
Sorrenti (ds, perc) の3人が結集しています。今回も "Io sono
Murple"
同様、トータル・コンセプト・アルバムになっていて、タイトルの「展覧会の絵」の通り各曲に対応する絵画がブックレットに記載されています。1曲1曲は短いものの随所に
"Promenade"
と名付けられたテーマが散りばめられ、アルバム全体で一つのストーリーになるように構成されています。畳み掛けるようなキーボードとマリンバを効果的に使った
"Promenade & Gnomus" に始まり、ゲストの Sabrina
Gagliardi のヴォーカルをフィーチャーした "Promenade & Il
vecchio castello"
へと続くクラシカルな曲調はイタリアン・プログレ全盛期を経験したバンドならではのものです。ゲストの
Edoardo Massimi
のアコースティック・ギターの爪弾きをバックにトラディショナルな手拍子を効果的に配した
"Tuilleries"
では中世的な雰囲気を醸し出しています。ややスケールが小さい感じはあるものの、きらびやかな音色のキーボードを中心としたクラシカルなシンフォニック・ロックを聴かせてくる好盤だと思います。
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